2018年7月28日、世界最大級のガレージキットイベント「ワンダーフェスティバル2018[夏]」が千葉県・幕張メッセで開催された。
「ワンダーフェスティバル」(通称:ワンフェス)は、フィギュアなどを含む造形物である「ガレージキット」を製作したものを展示・販売するイベント。このワンフェスでは毎年最先端のデジタル原型シーンがわかる講演が開催されている。今回はここで行われたステージ「『ウルトラモデラーズ』ここに推参!!」の模様をレポートする。
発起人・ワクイアキラ氏が語るZBrushとの出会い
ステージにはウルトラモデラーズの発起人、ワクイアキラ氏が登壇し、関西のデジタルモデラーを中心に結成された「ウルトラモデラーズ」について紹介した。
ワクイ氏が原型製作向けの3Dモデリングツール「ZBrush」(ズィーブラシ)と出会ったのが7、8年ほど前。ロダンの「考える人」を(デジタルデータで)リアルに再現してほしいという依頼があり、何かいいソフトがないかと探していたことがきっかけだという。ZBrushに触れるのは初めてだったが、実際にブロンズ像の緑青(銅や真鍮に発生する青い錆)の写真を撮ってテクスチャを貼り付けることで再現度が増し、次第にソフトの面白さと奥深さに衝撃を受けたと笑顔で紹介。
クリエイター業界のつながりを支援
その後、土偶作家やデジタル原型師、衣装デザイナーなどの仕事をする中、次第にデジタル造形業界の問題点も見え始め、未来への漠然とした不安や危機感を感じていたなか、同じ業界のクリエイターが集まり何かを始めれば、いろいろな出会いや化学反応があるんじゃないかと、「ウルトラモデラーズ」を結成した経緯を説明した。
ウルトラモデラーズの目的は、クリエイター同士や企業、学生を結び、情報交換の場、仕事のシェア、展示会などでの共演、企業とのコラボレーションを行うこと。なお、2018年11月23日~25日の3日間、大阪の日本橋 ボークス8Fにて、フルカラー3Dプリント作品が集結する展覧会(入場無料)が開催予定だ。
複雑な色をどう塗り分ける? 「シンギュラリティ」製作工程
イベントでは、フルカラー3Dプリンタで出力したワクイ氏の作品「シンギュラリティ」の製作工程も紹介された。
作品をZBrushで製作する手順として、まずワクイ氏は販売されている車や機会のデータを購入してプラモデルの感覚で分解し、各パーツをブラシとして登録。その後、登録したパーツを放射状に配列できる「ラディアルシンメトリ」を使用し、作品を作り上げていくという。そして製作した作品に色を付けるが、色指定は非常に難解。そこで、ZBrushの各パーツを区別するために自動で色分けする「ポリグループ」と、実際にパーツに色づけしてくれる「ポリペイント」の機能を利用することで、手軽に色付けが可能になるという。
50cm大の巨大なフィギュアもフルカラー出力
次に、ホタルコーポレーションの福永進氏が登壇し、ミマキエンジニアリングのフルカラー出力ができる3Dプリンタ「3DUJ-553」のプレゼンテーションが行われた。
この3Dプリンタの最大の特徴は、1,000万色超の色表現を実現し、細かいディティールも造形可能なこと。50cm×50cm×30cmという巨大な作品に対応する。また、ステージではワコムブースに出展された「不動明王像」の製造工程も紹介された。「3DUJ-553」で使用するサポート材は水溶性で、粗どり後、除去液につけることで、複雑な造形も傷つけることなく出力できることをアピールした。
最後に登壇したのは、ポストデジタルアーティストの小林武人氏。これまでアニメーションスタジオ「GONZO」でモデリングの仕事をしていたが、3.11の震災後、現在の社会システムに疑問を持ち、自分の持っているモデリングスキルで何かほかのことができないかと考えた結果、ポストデジタルアーティストとして活動を始めたという。
小林氏は、自身の作品を紹介したほか、3Dプリンタには、SLS方式というナイロン素材に対応するものなども存在し、プリンタの特色を理解して作品を作りあげることで、様々なバリエーションが生み出せると解説した。
近日中には、「ウルトラモデラーズ」のサポートメンバーになれるというクラウドファンディングページが「CAMPFIRE」に登場予定なので、興味のある方はぜひチェックして頂きたい。