9月16日、歌手の安室奈美恵さんが25年の活動に終止符を打つ。デビュー以来、常に第一線を走り続けてきた彼女。その軌跡を辿る展覧会が、東京・大阪・福岡・沖縄の4会場で開催される。
安室奈美恵の軌跡を辿る“最後の空間”
「namie amuro Final Space」と名付けられた同展覧会は、最終日が9月16日=安室ちゃんの引退日であり、タイトル通り正真正銘“最後の空間”となってしまう。今回は、現在渋谷ヒカリエにて開催中の東京会場の様子をお届けする。
東京会場では、2009年にリリースされた安室ちゃんの楽曲『Dr.』をモチーフに、アトラクション型の空間が展開される。会場内に足を踏み入れ、最初に目に入るスクリーンには謎の女性が。同曲の歌詞に登場する博士(Dr.クロノス)から「安室奈美恵の記憶を集めよ」との指令を受け、西暦3000年から現代の世界に送り込まれたようだ。その女性とともに、安室ちゃんのこれまでの活動を振り返っていく。
約2分のプロローグの後、エントランスロードを進んだ先には巨大なシアタールームが出現する。そこでは、今回のために撮り下ろしたというスペシャルな映像に始まり、過去に出演したテレビ番組やミュージックビデオなどの映像が走馬灯のように一気に映し出されていく。
1992年、安室ちゃんのテレビ初出演時の映像も公開。まだスーパーモンキーズとしてその存在を全国に認知される前のことである。『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』に琉球空手少女として登場し、道着姿でインタビューを受ける中学3年生の彼女は、筆者の中に道着萌えという新しい感情を生み出すほどの圧倒的なスター性を放っていた。
その才能を見出した沖縄アクターズスクールのマキノ正幸校長に感謝しつつ、会場の奥へ歩を進める。以降は、ファイナルツアー「namie amuro Final Tour 2018 ~Finally~」で話題となったビル群の実物セットなどのツアーアイテムをはじめ、テレビ番組出演時やライブ、ミュージックビデオで着用していた衣装がズラリと並ぶ。楽曲の世界観を構築する上での衣装の重要性を改めて実感しつつ、どの時代もウエストの細さが変わらないことに衝撃を覚えてしまう。
衣装の合間に設置されたモニターには、音楽番組やライブのワンシーンなど、それぞれの衣装をまとった安室ちゃんの映像が映し出される。それらの展示からは、ファッションだけでなく、ヘアスタイルやメイクなど、安室ちゃんが生み出してきたブームが年代順に見えてくるという点もまた味わい深い。
メイン展示のラストを飾るのは、安室ちゃんがこれまでリリースしてきたCDやDVDのジャケットたち。小室哲哉さんのプロデュースによりユーロビートからグラデーション的にブラックミュージック度を増していった時代を経て、TLCの作品でも知られるプロデューサー、ダラス・オースティンの起用によるR&B路線へのシフト、セルフプロデュースに移行しつつトレンドセッターとして常に最先端の音楽を採り入れてきたスタンスなど、作品ごとの影響力は計り知れないものがある。名実ともに“平成の歌姫”である彼女の功績を思い返し、配信ではなくCDで音源を入手する喜びを再確認しながら、その後に続く物販コーナーへ。
“最後の空間”もいよいよ終盤
グッズストアには、安室ちゃんの25年分の歴史を1冊にまとめた378ページのアーカイブパンフレットや、石垣島のラー油とコラボした「アムラー油」、Tシャツにタオル、57種の缶マグネットが当たるガチャガチャなど、安室ちゃん尽くしのアイテムがラインナップ。会場限定アイテム以外はオンラインストアでも購入可能とのことだが、ぜひとも現場に足を運び、展示を見たあとの熱量そのままに物販を楽しんでほしい。
各会場の詳細は以下の通り。
東京
会場:渋谷ヒカリエ 9階ヒカリエホール
期間:7月26~9月16日
開館時間:10時~21時
大阪
会場:ナレッジキャピタル(グランフロント大阪内)イベントラボ
期間:第1期 7月14~29日、第2期 8月11日~9月16日
開館時間:10時~20時
福岡
会場:福岡三越・三越ギャラリー
期間:8月12~9月16日
開館時間:10時~20時(8月12日のみ12時開館)
沖縄
会場:沖縄市・プラザハウスショッピングセンター3階
期間:8月2~9月16日
開館時間:11時~19時
各会場で衣装や映像展示の内容は変わるとのこと。4会場ともに、開催期間は安室ちゃんの引退日である9月16日までとなっている。思えば、今回の引退に限らず過去の結婚報道も突然のことであったように、自分の進む道を自分で決断し続けていく姿も彼女の大きな魅力だったのかもしれない。いちファンとして安室ちゃんの引退は非常にショックであるが、その潔さも彼女らしさと受け止めるべきなのだろう。
時代の節目とさえ感じさせる安室ちゃんの引退。最初から最後まで安室奈美恵は安室奈美恵であり続け、このタイミングで引退するからこそ、今後も我々の中にはその安室奈美恵像が残り続けるはずだ。今回の展示は、我々ファンがその安室奈美恵像をより鮮明に残せるよう、安室ちゃんが最後に用意してくれたギフトなのかもしれない。