中国Tencentのスマートフォン決済サービスWeChat Payが富士急ハイランドで全面的に利用可能になり、世界で初めての「スマートWeChat Pay旗艦遊園地」となった。
富士急ハイランドでは昨年からWeChat Payに対応していたが、入場券の購入やレストランでの支払いなど、全面的にWeChat Payをサポートした。富士急行は、富士山周辺エリアでのWeChat Pay対応を今後さらに拡大する考えだ。
Tencentは、WeChat Payを採用して旗艦店とした店舗に販促物やマーケティングツールなどを提供する取り組みをしている。日本では、旗艦空港として新千歳空港ターミナルビルディング、旗艦店としてドン・キホーテを設定しているが、今回新たに富士急ハイランドが旗艦遊園地となった。遊園地を旗艦店として登録したのは初めてだという。
今回の対応によって、富士急ハイランドの入園口のチケット売り場でフリーパスなどのチケットを購入できるようになった。7月14日から同園は入園料が無料(入園チケットは必要)となったため、売り場ではフリーパスやアフタヌーンパスの購入でWeChat Payが使える。ただし、園内のアトラクション脇に設置された券売機ではWeChat Payを使えない。今後、こうした券売機のWeChat Pay対応も進めていきたいという。
園内では2つのレストランや3つの売店でもWeChat Payを利用可能。小さな屋台など、一部非対応もあるが、幅広くWeChat Payを利用できるようにした。
富士急行では、富士山エリアでの観光客対応を推進している。外国人観光客が多く、特に中国人の訪問が拡大しており、昨年11月からWeChat Pay対応を進めてきた。WeChat上に公式アカウントを作成して、富士急ハイランドのチケットをオンラインで購入できる仕組みも構築するなど、「Tencentとの協業をこの1年、深めてきた」(富士急行・堀内光一郎社長)という。
TencentのWeChat Pay事業副総裁である李培庫氏は、「WeChatの月間アクティブユーザーは10億、WeChat Payは8億に達して、この分野でトップの地位を誇っている」とアピール。WeChatと組み合わせることで、富士急ハイランドに来たことがないような中国人観光客にもアピールできるプラットフォームだと強調する。
李氏は、WeChat Pay事業部のメンバーが日本のレストランに入ったときに、キャッシュレスが進展した中国内と同じ感覚でいたために現金を持っておらず、急遽引き出しにいったという自身のエピソードを紹介。富士山エリアで中国人観光客がキャッシュレスで観光できるようにしたいという目標を語った。
また、富士急ハイランドのアトラクションにQRコードを設置し、WeChatで読み込むとそのアトラクションの紹介などが表示される仕組みを導入したことで、中国人観光客の口コミが広がり、ブランド認知を高められるとアピール。富士急ハイランドだけでなく、さまざまな場所でWeChat Payが利用できるようになるよう、さらなる機能を提供していく考えを示した。
WeChat Payオペレーション・ディレクターのGrace Yin氏は、WeChatユーザーの50%以上が1日91分以上WeChatを利用しており、公式アカウントが2000万を突破。中国内では100万店のWeChat Pay導入店舗になったことを紹介し、特にこの1年で「大きな飛躍を遂げた」と話す。
日本でも、18年6月の時点でWeChat Pay取引本数が前年同期比6.2倍、取引金額は5倍、新規加盟店は6倍、毎日WeChat Payの取引が発生しているアクティブ店舗は5倍に拡大したことを紹介し、順調な拡大をアピールする。
「WeChat Payは単なる決済手段ではない」とYin氏。WeChatがソーシャルネットワークをベースとしたプラットフォームであり、膨大なユーザーベースを元に、公式アカウントやモーメンツ広告で多くのユーザーにリーチできることを強調する。また、WeChat内で利用できるミニプログラムによって、店舗の会員機能やショッピング機能、ゲームなどを提供でき、ユーザーに対して容易にサービスを提供できる点を強調する。
決済、公式アカウント、ミニプログラム、クーポン、キャンペーンなど、「フルソリューション」(Yin氏)を利用して中国人観光客に対する訴求を図っているのが旗艦遊園地となった富士急ハイランドだ。
富士急行の執行役員・企画部部長の斎藤隆憲氏によれば、富士山エリアの観光客は年間3600万人に達しており、富士急行電鉄の河口湖駅では、2014年度に外国人観光客比率が35%だったのに対し、17年度に53%まで拡大して、日本人を逆転した。河口湖ロープウェイにいたっては30%だったのが64%まで増加したという。
こうしたインバウンドの拡大に対しての課題として、通信環境、決済、交通関連の問題が発生しているという。WeChatとWeChat Payを使うことで中国人観光客の課題解決に繋がるとして、富士急行は導入を決めたという。同社の富士山エリア主要施設でWeChat Payを導入したほか、グループ内でWeChat Payの代理店になって、さらに対応店舗拡大を図っていくという。
同じく旗艦店となったドン・キホーテや新千歳空港ターミナルビルディングでも、WeChat Pay対応によって売上の拡大が実現しており、中国人観光客の購買に繋がっているという。
Tencentでは、遊園地、小売、空港と旗艦店戦略を拡大してきており、今後はさらに別業界でも取り組みを進め、日本国内におけるWeChat Pay利用可能点の拡大に繋げていきたい考えを示している。