あおぞら銀行とGMOインターネットによるインターネット専業の「GMOあおぞらネット銀行」が17日、事業をスタートさせた。インターネット技術に強いGMOグループとあおぞら銀行の銀行事業のノウハウを融合させ、銀行決済分野でシェア1位を目指すとしている。

100万口座・収益100億円が当面の目標で、5年で黒字化を果たしたい考えだ。GMOグループの熊谷正寿代表は、「ネット銀行で最後発だが、テクノロジー×金融で『GMOは違うことをやった』といわれるようなことをしたい」と意気込む。

  • GMOあおぞらネット銀行のサービス開始を発表した(写真左から)あおぞら銀行代表取締役社長兼CEOの馬場信輔氏、GMOあおぞらネット銀行代表取締役社長の山形昌樹氏、GMOあおぞらネット銀行代表取締役会長の金子岳人氏、GMOインターネット代表取締役会長兼社長・グループ代表の熊谷正寿氏、GMOフィナンシャルホールディングス取締役兼代表執行役社長の鬼頭弘泰氏。一番左はGMOあおぞらネット銀行キャラクターのテックま君

GMOあおぞらネット銀行は、GMOグループが培ったさまざまな技術を駆使して、既存の銀行と差別化したサービスの提供を目指して設立された。安心、速さ、安さ、便利さ、新体験という5つの価値を提供することをビジョンとして掲げて事業を展開する。

バーチャル口座機能を提供し、個人や法人顧客が持つ1つの口座に対して、複数の子口座を設定することができる。バーチャル口座は、個人口座では1口座につき20口座まで、法人では2000口座まで設定可能で、公共料金引き落とし、デビットカード引き落とし、遊興費、積立口座など自由に設定が可能で、使途に応じて口座を分けて管理するなどの使い方が想定されている。法人向けは、オープンAPIも利用可能だ。

  • バーチャル口座の特徴

GMOグループのGMOクリック証券との連携機能も提供し、自動で買付余力に自動反映するなど、資金の振り替え手続きが不要になる。外貨預金も可能で、低価格な手数料や他社より高めの金利を実現した。

手数料の業界最安値を目指すのも特徴で、個人向けではATM手数料、振込手数料を最安水準で、外貨預金金利、デビットカード還元率は最高水準だという。法人向けでは、口座維持手数料や月額基本料金は無料で、振込手数料は最安水準、デビットカード還元率は最高水準を実現している、という。金子会長は、こうした手数料などのサービスは、最初だけでなく継続して提供していくことを「お約束したい」と強調する。

オープンAPIも注力し、まずは残高、明細などの参照系APIの提供からスタートし、その後、更新系APIを提供。ほかのフィンテック企業などと協業のためにAPI機能を順次拡充して全ての機能をAPIで提供し、最終的には他社に決済機能を提供するなど、APIを活用した新規ビジネスへと繋げたい考え。GMOあおぞらネット銀行の金子岳人会長は、「銀行APIで一番強い銀行」を目指すとしている。

ネット銀行としてはスマートフォンアプリを提供するほか、当初はセブン銀行と連携してATMを利用可能。今年度末頃までにはイオン銀行とも提携してATMを拡大する。デビット一体型のキャッシュカードを提供し、さらに来春には「世界初」(金子会長)というセキュリティを強化した「ハイセキュリティデビット一体型キャッシュカード」を提供する。

  • スマートフォンアプリ

  • ハイセキュリティカード。暗証番号(最大8ケタ)を入力しないと使えない。セキュリティコードも暗証番号を入力してデビットボタンを押さないと表示されない

これは米Dynamicsの技術を使ったもので、バッテリーを内蔵したカードに暗証番号を入力しないと使えないため、物理的にセキュリティを確保できる。デビットカードの有効期間5年間はバッテリーが持続する設計とのことで、よりセキュリティを高めたいユーザーに向けたカードとなっている。なお、通常のデビット一体型キャッシュカードは無料だが、ハイセキュリティカードを無料にするかどうかは検討中だという。

今後は、クレジットカードやオープンAPI決済、FX、ローン、認証高度化など、テクノロジーと金融を融合させたサービスを中心に提供していく考え。さらに、法人顧客に対して決済機能や提携デビットカードなどの銀行機能の金融インフラを提供する「プラットフォーム銀行」も提供する予定。

ブロックチェーン技術を使った新しい決済ソリューションの提供も想定しており、海外送金、EC決済、地域通貨といったさまざまなシーンでの利用を目指していく。GMOグループ各社と共同で実証実験をする計画だ。また、GMOグループが力を入れる仮想通貨での協業も検討していくという。

GMOあおぞらネット銀行の山形昌樹社長は、IoT、AI、ブロックチェーンといった技術革新が競争を促し、「我々のような新しい、規模の大きくない新参者もやりようによっては戦いに勝てる」と強調。ゼロからのスタートで身軽であり、テクノロジーを生かしたコスト削減などによって、手数料削減などの顧客還元ができるとする。「最後発という立場だが、最新テクノロジーを使った商品・サービスを真摯にやって、No.1の銀行になれるように頑張る」と意気込む山形社長。

  • GMOあおぞらネット銀行の特徴

  • 今後のロードマップ

あおぞら銀行の馬場信輔社長兼CEOは、「3年前に熊谷(正寿)代表らと革新的なネット銀行を一緒に作ろうと話をして、ようやく夢が叶った」と話し、「あおぞら銀行はGMOと一緒になって力を合わせて新銀行をバックアップ、フルサポートしていく」考えを示している。

GMOグループの熊谷代表は、同社のサービスの継続的な利用者が1000万件を越えていると指摘し、こうしたユーザーに対して銀行の金融サービスが提供できる点を強調。金融とITの親和性が高く、その中心となる銀行業の参入で新たなサービスが提供できる点をアピールする。

なお、あおぞら銀行はインターネット支店も用意しているが、もともとあおぞら銀行は資産運用を含めて比較的高齢者の顧客をターゲットとしており、技術に明るい30~40代をターゲットの中心としたGMOあおぞらネット銀行とは顧客層が被らない、としている。