スマートフォンは、携帯電話とコンピュータ両方の顔を持ちます。ですから、スペック表を見れば専門用語のオンパレード……これではおいそれと比較できません。このコーナーでは、そんなスマートフォン関連の用語をやさしく解説します。今回は「モデム」についてです。
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モデムはアナログ信号とデジタル信号を相互変換するデバイスであり、セルラー回線を利用したデータ通信の送受信を担う終端装置として欠かせない存在です。スマートフォンにおいては、独立したICとしても提供されるほか、中枢といえるSoCに内蔵される形でも存在します。
モデムという言葉は、データを送り出す変調装置(MODdulator)と受信用の復調装置(DEModulator)を組み合わせた造語です。ADSLなど固定電話回線を利用したデータ通信用として(ADSLモデム)、携帯電話/スマートフォン登場以前からインターネットの利用に重要な役割を果たしてきました。
携帯電話/スマートフォンにおいては、各種通信方式に対応するかどうかが重要な意味を持つようになりました。ここ日本でいえば、W-CDMAやCDMA2000といった第3世代/3G規格、LTEなどの第4世代/4G規格に対応できるかどうかは、主にモデムチップの仕様によります。カバーする通信帯域(バンド)も、モデムチップにより決まります。
スマートフォンにおける最新通信技術への対応も、多くの場合モデムチップにより行われます。たとえば、複数の周波数帯を束ねて広帯域化/高速化する「キャリアアグリゲーション」、次世代の通信技術「5G」は、モデムチップの機能として実現されます。
一方、モデムの機能を内包したSoCも登場しています。多くのモデムチップを世に送り出しているQualcommは、SoCシリーズ「SnapDragon」の一部にモデム機能を備えたものを用意しています。おおまかにいうと、モデム機能とプロセッサ(通信+アプリケーション)を別々に用意するより、モデム一体型SoCのほうが小型化/コスト両面で有利だからです。HuaweiのKirinシリーズなど、他の通信機器メーカーにおいてもモデム一体型SoCのラインナップは増え続けています。