日野自動車は大型トラック「プロフィア」にハイブリッド(HV)システムを搭載し、2019年夏に発売する。主に高速道路で仕事をする大型トラックは従来、HVに不向きなクルマと見られていたが、日野は日本の高速道路に特有のある特徴を活用し、人工知能(AI)も用いて燃費向上を図った。
「HVには不向き」の常識を覆す日野
HVは減速時のブレーキエネルギーを電気としてバッテリーに回収し、それでモーターを回して発進・加速をアシストすることでエンジンの仕事量を減らし、燃費の向上を図る仕組みを持つクルマだ。日野の調べによると、走行の57%が高速道路上だという大型トラックは、一定の速度で長い距離を走るので、減速による電力回収というHVの機能を存分に使えない。HVのシステムを積めばエンジン車より車重が重くなるので、かえって燃費が悪くなる可能性すらあった。
そこで日野が着目したのは、日本の高速道路に“勾配”が多いというポイントだ。クルマに乗っていて下り坂に差しかかった時には、アクセルから足を離してエンジンブレーキをかけるが、その減速エネルギーを回収して使えば、大型トラックでも燃費の向上が可能なことに日野は気づいた。下り坂で生み出した電力を使って、プロフィアのHVは平坦な道でモーター走行を行ったり、上り坂のような負荷の高い場面ではモーターのアシストを受けたりする。
AI×電気で進化する大型トラック
もうひとつ、燃費向上に役立つのがAIを用いた電力マネージメント技術だ。まずAIは、ドライバーの運転の仕方や渋滞など道路状況を判定し、モーターアシスト量の最適化を図る。さらには100キロ先までの道路の勾配を読んで、バッテリー使用の「シナリオ」をあらかじめ作成することで、電気のやりくりを行う。この先読み技術は世界初だという。
勾配を先読みして電気をやりくりするシステムを具体的に説明すると、まずクルマは「ロケーターECU」という装置を使って、GPS、ジャイロセンサー、車速センサーなどから自車位置を特定し、内蔵地図情報から「標高」「勾配」「位置」を出力する。これにより得られた100キロ先までの標高情報を使い、バッテリー使用に関する概略シナリオを作成したあとは、10キロごとに概略シナリオを補正して細かいトルク配分シナリオを作り出し、それに沿って走行する。
日野は工場のある東京都羽村市から静岡県焼津市までのルートで燃費計測を実施。往復で一般道が90キロ、高速道路が360キロという行程で、燃料14リットルを削減できたそうだ。ディーゼル車に比べ、燃費は15%向上したことになるという。大型トラックは年間12万キロを走るというから、この結果を当てはめると年間4,700リッターの燃料を削減できる。軽油がリッター120円だとすると、燃料費は同56万円の節約になる。
プロフィアHVの価格は現時点で非公開とのことだが、これであれば大型トラックも、最新のエアコンや冷蔵庫の説明でよく耳にするように、「買い替えた方が結局は得」ということになるのかもしれない。