Microsoftが先日リリースしたWindows 10 Insider Preview ビルド17713では、Skip Aheadのリセットが行われた。Redstone 5の正式リリースが近づいたことから、これまでのrs_prereleaseからrs5_releaseブランチを分離し、今後はRS5リリースするまで2つのブランチが存在する形となる。

また、同社は「RS5の安定化に焦点を当てるため」とその理由を説明するが、2018年秋リリース予定のアップデートでは、ビルド17704で同社が明言したとおり、Setsの実装は見送られることが確実となった。

  • 各ビルド番号が示しているように、「rs_prerelese」から「rs5_release」に置き換わった。今後Skip Aheadを選択するには、Microsoftのアナウンスを待つしかない

RS5の注目機能が何になるのか筆者も見えてこないが、Microsoftがレガシーなアプリケーションの改良に取り組んでいることは、1つの方向性を示している。

ビルド17666(正確には17661)ではコマンドプロンプトの改行コードを「CRのみ」「LFのみ」に拡大し、ビルド17661ではSnipping Toolの廃止を明示して、Screen Sketchという新たなUWP(ユニバーサルWindowsプラットフォーム)アプリを用意した。

さらにビルド17713では、メモ帳の検索・置換オプションを記憶すると同時に、選択した文字列の自動挿入をサポート。また、文字のズームレベルを変更するショートカットキーの追加や、行・列番号をステータスバーに表示するなど、多くの改良を加えている。

  • 検索・置換ダイアログで選択したオプションや、入力した文字列を保持する

  • [Ctrl]+[+]キーや[Ctrl]+[-]キーで表示サイズの拡大・縮小が可能

ただ、正直なところ「それメモ帳でやらなくても……」と感じてしまう。メモ帳に物足りなさを感じているユーザーはNotepad++などを、本格的な文章作成であれば、秀丸などのサードパーティー製ツールを、コーディングならVisual Studio Codeなどをインストールするはずだ。

もちろんインストールの手間を省き、巨大なファイルを開く際のパフォーマンス改善など歓迎すべき点は多い。しかし、これまで多くのユーザーが不満に感じ、問題を補うために生まれたツール群を使ってきた利用者が、これを機にメモ帳に戻るかといえば、それはないだろう。

ではなぜ、Microsoftは重箱の隅を突くように、標準ツールを改良しているのだろうか。例えばコマンドプロンプトはWSLの端末として利用するため、改善する必要性があった。Snipping ToolもWindows 7時代のレガシーツールであると同時に、画面キャプチャーの方法が煩雑になっていることから再整理する意味で、Screen Sketchを用意したと筆者は考えている。

  • WSL(上のLinuxディストリビューション)を起動すると、コマンドプロンプトを端末として利用する

そしてメモ帳も、OSの標準ツールであるテキストエディターのレベルが10年前(XP時代程度)では、あまりにも情けない。今後は開発者がYAMLなど小規模な設定ファイルを編集することも考えられる。先の改行コードサポートも開発者向けカンファレンスであるBuild 2018で発表した背景を鑑みると、より開発者に優しいWindows 10を目指すための一環なのだろう。

阿久津良和(Cactus)