2008年にテレビ朝日系で放送されたスーパー戦隊シリーズ第32作『炎神戦隊ゴーオンジャー』の10年後を描いたVシネマ『炎神戦隊ゴーオンジャー 10YEARS GRANDPRIX』(脚本:會川昇、監督:渡辺勝也)の完成披露上映会が15日、東京・ニッショーホールで開催された。舞台挨拶にはテレビシリーズのレギュラーキャスト陣が勢ぞろいし、10年ぶりの映像作品が作られたことへの喜びや、熱心なファンの応援に対する感謝の思いを語った。
『炎神戦隊ゴーオンジャー』とは、われわれ人間たちが暮らす「ヒューマンワールド」を侵攻しようとする蛮機族ガイアークと戦うため「マシンワールド」の機械生命「炎神」に選ばれた若者たちの、熱き青春と冒険の物語である。
レースカーとレーシングスーツをモチーフにしたヒーローデザインと、乗り物+動物という斬新なコンセプトで生み出された「炎神」のバラエティあふれる個性。そしてパワフルかつ底抜けに明るい作風、ガイアーク三大臣(ヨゴシュタイン、キタネイダス、ケガレシア)の敵ながら愛すべきキャラクター性、凶悪かつユニークな蛮機獣のデザイン・造形など、多くの魅力を備えた本作は子どもたちを中心にして高い人気を誇った。
放映から10年という節目の年・2018年、ファン待望となるVシネマ化がついに実現。かつて『ゴーオンジャー』に出演した敵味方のオリジナルキャストが奇跡の再結集を果たし、『忍風戦隊ハリケンジャー10YEARS AFTER』『特捜戦隊デカレンジャー10YEARS AFTER』に続く「10YEARS」シリーズ第3弾として実現した。
『炎神戦隊ゴーオンジャー 1010YEARS GRANDPRIX』のストーリーは、ゴーオンジャーがガイアークを倒してから10年の歳月が過ぎ去ったところから始まる。ヒューマンワールドでは、防衛大臣・野泉進一郎の発案による「鎖国バリア」で別のワールドからの侵入者をシャットアウトし、さらに財布・携帯端末・身分証明書を兼ねた「Nチップ」を国民に無料配布することによって、エコで便利な社会を築き上げていた。このような世の中にあって、マシンワールドの炎神たちと離れ離れになったゴーオンジャーは正義の味方ではなく、国家に反逆する「悪」として追われる立場となっていた――。
テレビシリーズでは常に明るく、前向きに悪と戦ってきた若きヒーローたちも、10年という歳月を経て今後のことや自分自身のことを考えるようになり、単純なヒーローではいられなくなった。本Vシネマではこのように「大人になったヒーロー」のさまざまな葛藤や苦悩を描くことにより、「ヒーローは何年たってもヒーローをやり続けることができるのか?」といった深いテーマを見事に描きあげている。
大人になったヒーローであるゴーオンジャーが最終的にどういった道を選択するのか、爽やかそのもののエンディングにも感動させられた。スーパー戦隊シリーズの、しかも「10YEARS」というメモリアルな作品でなければ描けない非常に優れたドラマが作りこまれ、見ごたえ十分の力作といえるだろう。
上映終了後の舞台挨拶では『ゴーオンジャー』レギュラーキャスト陣が劇中の衣装でステージに現れ、かけつけた大勢のファンから大歓声を集めた。
10年後も以前とまったく変わらぬ正義感の強さと悪に挑む勇気を持ち続けているゴーオンレッド/江角走輔を演じた古原靖久は「みんなただいま! マッハ全開、ゴーオンレッド!」と、10年前とまったく変わらぬキレで名乗りを披露した。「10YEARS」企画の経緯を尋ねられた古原は「出演者のみんなの"やりたい"という意思が確実にありました。みんな、2016年、2017年ごろからソワソワし始めていてね(笑)」と、放送10周年の記念に新しいドラマを作りたいという気持ちが全員共通していたことを明かした。さらに「今回の作品が出来たのは、みなさんの応援の声のおかげです。ありがとうございます!」と、作品製作実現の後押しをしてくれたのは大勢のファンだと、改めて感謝の気持ちを語った。
面倒見がよく、仲間の"オカン(母親)"的ポジションのゴーオンブルー/香坂連を演じた片岡信和は「10年間生きてきました。得意料理はオムレツです!」と挨拶した。10年前と変わらぬ爽やかさはそのままに、より包容力のある大人の雰囲気を醸し出した片岡は、暴走しがちな古原や、スキを見て前へ前へ出ようとする海老澤を抑えて、劇中と同様の面倒見のよさを発揮していた。
本作ではゴーオンジャーの仲間と行動を別にして、政府広報官を務めているゴーオンイエロー/楼山早輝を演じた逢沢りなは「スマイル、スマイル!」と早輝のチャームポイントでもある満面のスマイルで挨拶し、女性ファンからの「可愛い!」という声援を独占。しかし、本作での早輝はスマイルを封印していたため、周囲から「怖かった~」と感想の声が聞こえてきて、逢沢が苦笑する場面も見られた。
たくましい青年に成長した10年後も、当時と変わらずアルバイトに明け暮れているゴーオングリーン/城範人を演じた碓井将大は「高い声、出るかな~」と当時の声のトーンを思い出しながら元気よく名乗りを行い「バランス感覚と高い声を失っちゃいました。まあ10年経ちましたからね」とにこやかに挨拶。当時16歳だった碓井は10年ぶりにゴーオンジャーとして仲間と共演を果たした感想を問われて「みんな老け……いや、大人になったなって思いました」とコメントしたため、古原たちから「心の声、出ちゃってたぞ!」と一斉に責められていた。
古巣の警察官へ戻り、狙撃部隊で活動していたゴーオンブラック/石原軍平を演じた海老澤健次は「スマイル、スマイル!」と、早輝の得意フレーズを独特な野太い声で放ちながら"濃い"笑顔で観客を圧倒しつつ挨拶を行った。海老澤と碓井は現在、映像配信サイト『東映特撮ファンクラブ(TTFC)』のオリジナル番組『TTFC映画部』に出演中。ただいまシーズン1が最終回を迎えたが、今後また新しい展開があるかもしれないというので、ファンの方はぜひともチェックしてほしいところだ。
ゴーオンウイングスのゴーオンゴールド/須塔大翔を演じる徳山秀典は、いきなりのマイクトラブルにも動揺することなくクールに「ブレイク限界! ゴーオンゴールド」と名乗りを決めながら挨拶。ゴーオンジャー放送から10年という歳月が過ぎたことを実感する出来事として「範人と早輝が、当時の僕と同じ齢になった」としみじみ語った。逢沢から「あのときのアニ(大翔)はすごく大人に感じました」と言われた徳山は、「(同じ齢になってみると)全然だろ?」と、世代間の印象の違いについて笑顔で話していた。碓井も「あのころ自分と同じく高校生だった人が、今ではもう立派な社会人」と、10年という月日を実感するコメントを残した。
大翔と同じくゴーオンウイングスとして、ゴーオンジャーと共に戦ったゴーオンシルバー/須塔美羽を演じる杉本有美は「キラキラ世界! ゴーオンシルバー」と兄役の徳山に続いて名乗りを披露し、まぶしい笑顔で挨拶した。本作が作られたことで親しい人たちからの反響はあったか? という問いに杉本は「きのう大阪で行われた舞台挨拶に、甥っ子、姪っ子が観に来てくれました。みんなゴーオンジャーにハマっていたので、とても喜んでいました」と、杉本の地元・大阪で開催された舞台挨拶に親戚がかけつけたことを明かした。
元ガイアークの害水大臣ケガレシアを演じる及川奈央は、劇中でのセクシーかつ重量感と愛嬌のあるコスチュームを着ての登場となり「私も名乗りポーズがあるんですよ。惚れなきゃ後悔! ケガレシア!」と、第31話(GP-31)でのレアな名乗りポーズを決め、ひときわ大きな拍手を浴びた後「ひさしぶりでおじゃる~!」とケガレシアの口癖を交えて挨拶した。
徳山が「当時26歳だった」と語ったのを受け、及川も「私も同じ齢だったんですよ。オバサンって言われたけど(笑)」と、GP-4にて早輝にオバサンと呼ばれたショックを改めて打ち明け、周囲から「意外と気にしてたんだね」と同情(?)される場面も見られた。
本作の必見シーンのひとつに、ケガレシアが早輝に代わってゴーフォンを構え、ゴーオンイエローならぬ「ケガイエロー」に変身するくだりがあるが、これについて及川は「変身ポーズは現場で男子のみなさんに教えていただきました。でも、台本を読んで悩みましたよ。私が変身していいのかどうか」と、イエローへの変身にとまどいがあったことを打ち明けたが、客席からの非常に好意的な反響を得て、改めて安堵の表情を浮かべた。さらに碓井からは「及川さんの変身は上品だった」との感想があり、片岡も「メンバー以外の人が変身するのって、かなりの緊張があると思うのですが、及川さんは終始落ち着いていた」と、カッコいいというよりも優雅な雰囲気での変身を行った及川を称える様子を見せた。
ガイアーク三大臣の仲間、ヨゴシュタインとキタネイダスと3人で登場したとき、客席から大きな拍手が起こったことを知らされた及川は「ほんとですか~!」と歓喜し、「あの3人で乾杯したところでは『ルネッサ~~ンス!』と言っていました。10年前から3人は変わっていないんですよ」と、名トリオ復活を喜んでいた。
途中、徳山から「今回のVシネマではオープニングがないんですよ。みなさん、観たくないですか? オープニング!」と、テレビシリーズ『ゴーオンジャー』のオープニング再現を海老澤にリクエスト。実は、海老澤は過去のトークイベントにおいて、テレビシリーズのオープニングでのメンバーの動きをすべて1人で再現するという過激なパフォーマンスを得意としており、タイミングのいいところでオープニング主題歌「炎神戦隊ゴーオンジャー(TVサイズ)歌:高橋秀幸(Project.R)」が流れ始めると、何かにとりつかれたかのようにものすごい勢いと機敏な動きでオープニングアクトを開始した。
スピーディなオープニング映像での各キャラクターの動きを再現するだけでなく、「後ろを確認しながら車をバックさせる」細かい芝居や、ゴーオンレッドからゴーオンシルバーまで7人のヘルメットを脱いでポーズを決めるまでの一連を次々に決めていくインパクトは絶大。長年イベントで培ってきた海老澤の芸の磨き上がり具合に圧倒されながらも、観客は惜しみない拍手と歓声を浴びせた。
なお、本Vシネマではオリジナル楽曲として「KEEP "GO-ON!"」と「炎神ファーステストラップ~Type10YG Maximum Performance~」が作られているのも、重要なトピックスである。「KEEP "GO-ON!"」では歌唱の高橋秀幸が作詞・作曲を手がけており、テレビシリーズの名場面が散りばめられたエンディング映像にマッチし、爽やかな感動を呼びこす役割を果たしている。
最後を締めくくるべく、古原がマイクを持ち「みなさんが応援してくれなかったら、俺たちは今ここにはいません。俺たちがゴーオンジャーとしてまた帰って来たい、という思いを持てたのも、みなさんのおかげなんです。本当にありがとう。これからもどうか俺たちゴーオンジャーを見守っていてください!」と、ファンたちに熱いメッセージを送った。
Vシネマ『炎神戦隊ゴーオンジャー 10YEARS GRANDPRIX』は9月26日に東映ビデオからBlu-ray&DVDが発売される。これに先がけ、渋谷TOEIや109シネマズ名古屋、Tジョイ京都、梅田ブルク7にて7月21日より期間限定上映も行われる。Blu-ray&DVDの商品情報、および劇場公開の詳細は公式サイトを確認していただきたい。
また、テレビシリーズ『炎神戦隊ゴーオンジャー』のBlu-ray BOX化も決定し、8月8日にBOX1、10月3日にBOX2、12月5日にBOX3(完結)が発売される予定。BOX1には、キャラクターデザインを手がけた酉澤安施氏が描き下ろした全巻収納BOXが付く。
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