気付けば今年もあっという間に半年が過ぎ、下半期がスタート。各飲食店では、夏シーズン向けの限定メニューが続々と登場している。都内に数店舗を構える居酒屋、「和食・酒えん」でも、7月1日から1カ月限定メニューが提供されるということで、新宿店(東京都新宿区)で行われた試食会に行ってみた。そこに待っていたのは、とろける肉の甘い脂と、料理教室だった!
「和食・酒えん」は、割烹や料亭の味と品質を、リーズナブルに味わえる創作和食居酒屋として、東京都内だけでなく、名古屋、大阪でも店舗を展開。素材選びに妥協することなく、毎日出汁を取るところから調理を始め、精魂込めた心づくしの料理と酒を提供しているお店だ。新宿三丁目駅A5番出口を出てすぐ目の前にあるビルの7階にある新宿店に入ってみると、広々とした温かみのある空間が広がっており、新宿の街の喧騒を忘れさせてくれる、くつろげる雰囲気があった。
脂の甘みが際立つ「厚切りチャーシュー」
今回、各14店舗にて7月1日から提供される1か月限定おすすめメニューのコンセプトは、ズバリ「〇」(えん)。店名にちなんで、すべての料理が円型になっているものだという。これは相当、料理人の腕とアイデアが試されるのでは?どんな料理が出てくるんだろう?と期待に胸を膨らませていると、最初にやってきたのは「イベリコ豚の厚切りチャーシュー」(税込み1,000円)。
イベリコ豚のバラ肉を、じっくり下茹でしてにんにく醤油で焼き上げたメニューで、コンセプト通り「〇」な見た目をしている。お味の方はというと……なにこれっ! めちゃめちゃ美味しい! 口の中に入れた瞬間、噛まなくてもほどけるように溶けていく脂の甘み。そしてじんわり沁みだしてきてくる肉汁。にんにく醤油の香ばしさも食欲をそそる。
イベリコ豚って、こんなに甘いんだ?そして、じっくり下茹でしたというだけあって、とてつもなく柔らかい。これは心からおすすめしたい。次なる料理を食べないといけないにも関わらず、試食用にカットされた肉をおかわりして、再びパクッ。なにこれっ! めちゃめちゃ美味しい! (以下、3回ほど繰り返し)。
人気居酒屋の料理教室って?
絶品肉料理を堪能した後に食べたのが「丸ごとトマトの蜜煮」(税込630円)。トマト丸ごとって、〇にもほどがあるでしょうが~! と言いたいところだけど、白いクリーム状の添え物もあるし、見た感じかなりスタイリッシュでおしゃれなビジュアル。こやつ、単なるトマトじゃない。
食べてみると、蜜煮といっても甘すぎず、ほどよい酸味のあとから甘みが追ってくる絶妙な匙加減だ。そして、白いクリームの正体が判明。ポン酢をゼラチンと合わせて作られた「泡ポン酢」で、トマトにかけるとさらに爽やかなコクが加わって食欲を増進させる。さっぱりしていて、食欲が衰えてしまいがちな夏場にはかなりありがたいメニューだ。
ここで、「丸ごとトマトの蜜煮」のレシピを料理長自らが教えてくれることに。もしかして、筆者があまりにも美味しそうに食べている姿を見て、家でも毎日食べてほしくなったのだろうか。なんという心づかい。ありがとう、イケメン料理長。と、思ったらどうやら違ったらしい。じつは「えん」では、定期的に「えん料理教室」を開催しているのだ。
えん池袋西口店・新宿店にて月変りで行われおり、好評を得ているのだという。トマトを手に、「丸ごとトマトの蜜煮」のレシピを実演しながら、テンポよくレクチャーしていく料理長。慣れた手つきはもちろんだが、スムーズな説明がじつにわかりやすく、興味を引く。もしかして、もともと料理教室の先生とかだったんですか?
「いえ、特にそういう経験はなかったんですけど、5年ほど前からこの料理教室をやらせていただいています。人前に出るのが苦手だったので、最初は緊張して手が震えたりしました(笑)。今は5年間で培った経験が生きてると思います」(料理長)
なるほど、そんなにも前から料理教室が行われていたなんて。「えん」のお店自体は街中でよく見かける気がするからご存知な方は多いと思うが、こうした取り組みをしていること知らなかった人もいるのでは? しかも、教室の本「ごはんにも晩酌にも美味しいレシピ 和食・酒えんの料理教室」(マガジンランド刊)まで発売されている。
あれ、もしかしたら知らなかったのは自分だけだったのかも。料理教室が実施される日は、11時から14時くらいまで、主婦を中心に毎回20名ほどが参加しておこなわれており、毎回テーマを設けて様々な料理のレシピをレクチャーしている。「こんな料理の作り方を知りたい」「ちょっとむずかしい魚のさばき方を知りたい」といったリクエストの声もあるそうで、日常の料理にかなり役立てられているようだ。
居酒屋さんで料理教室って意外な気がしたけど、豊富なメニューをいかに手際よくお客さんに提供するか、という命題を常に抱えている居酒屋だからこそ教えられる料理法や食材の保存方法等があるのではないかと、かなり興味を覚えた。主婦だけでなくお酒のおつまみを自作してみたい男性サラリーマンにも、すごくいいんじゃないかなあ。