説明書を読まなくても使い方がわかるのが、iPhoneの魅力であり強みです。しかし、知っているつもりでも正しく理解していないことがあるはず。このコーナーでは、そんな「いまさら聞けないiPhoneのなぜ」をわかりやすく解説します。今回は、『AirPlay対応ヘッドホンって存在する?』という質問に答えます。
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iPhoneなどスマートフォンとの接続にワイヤレス通信を使う音響機器は多数存在しますが、ヘッドホン/イヤホンに限定するとBluetoothが主流です。ヘッドホン端子の廃止に伴いワイヤレスオーディオが注目を集めていますが、音質的にはBluetoothより大容量データを扱いやすいWi-Fiのほうが有利であり、iPhoneならばAirPlayという手があると考えるのも当然でしょう。
結論からいうと、音楽データをAirPlayで受信できる市販のヘッドホン/イヤホンは見当たりません。利用できる帯域幅が事実上1メガbps以下のBluetoothオーディオと比較すると、Wi-Fiを利用しロスレスコーデック(ALAC)で再生できるAirPlayのほうが有利と考えられますが、さまざまな理由により製品化は進んでいません。
理由のひとつには、部品コストが挙げられます。ヘッドホン/イヤホンをAirPlayに対応させるためには、ライセンスを受けて製造されたICを利用しなければならず、しかも特定企業による寡占状態がしばらく続いたため、BluetoothのICに比べてかなり高額となってしまいました。
消費電力の問題も考えられます。Wi-FiはBluetoothと比較して消費電力が大きく、電源およびバッテリー容量に影響します。筐体サイズの制約が少ないコンポーネントオーディオやアクティブスピーカーはまだしも、小ささ・軽さが重要で大容量バッテリーを搭載しにくいヘッドホン/イヤホンの場合、Bluetoothのほうが有利です。
通信にWi-Fiと同じ帯域を利用するワイヤレスヘッドホン/イヤホンは以前から存在しますし、AirPlayを採用した製品も皆無というわけではありませんが(クラウドファンディングで製品化されたことはあります)、音質はさておき価格競争力と消費電力で有利なBluetoothが当面はワイヤレスオーディオの主役の座を維持しそうです。