ソニーの完全子会社であるQrioは7月5日、スマートロックの新製品「Qrio Lock」を発表しました。前モデル「Qrio Smart Lock」と比較して何がどのように改善されたのでしょうか。発表会で実際の製品に触れた感想をレポートします。

  • Qrio

    家を出るとき、帰るとき、鍵をいちいちカバンや財布から取り出して……って、めんどくさくないですか!? Qrio Lockは玄関の鍵部分にすぽっと覆いかぶせるようにして取り付けられるので、工事が不要。とても便利な製品なんです

スマホが鍵になるスマートロック

スマートロックとは、実際の鍵がなくても、電子的な鍵を使ってスマートフォンなどから自宅の鍵を開閉できる製品のこと。物理的な鍵が必要ないので、鍵を紛失することもなくなりますし、電子的な鍵なので一時的に合鍵を作り、ネットを経由して誰かに貸すといったことも可能です。こうした特徴を生かし、最近ではホテルや民泊などでスマートロックが採用されるケースが増えています。

日本のスマートロック製品としては、2015年に発売されたQrio Smart Lockが高いシェアを占めます。今回発表されたQrio Lockは、このQrio Smart Lockの後継機となる製品です。

  • Qrio

    新製品の「Qrio Lock」。前モデルはシルバーでしたが、今回はマットブラックで落ち着いたカラーとなっています。直販価格は2万3000円(税別)です

スマートロック製品には、工事によってキーシリンダーごと交換するタイプや、工事不要で既存の鍵にかぶせて使うタイプなどがあり、Qrio Lockは既存の鍵にかぶせて使うタイプになります。既存の鍵のサムターン(内側から鍵をかけるときにひねる部分のこと)に取り付け、スマートフォンアプリから解錠/施錠操作を行うと、Qrio Lockがサムターンを捻って鍵を開閉する仕組み。Qrio Lock本体は内側の鍵を操作するだけなので、物理的な鍵で外から扉を開けることもできます。また、上下に2つ鍵の付いたドアに2台のQrio Lockを設置し、一度の操作で上下の鍵を同時に開閉することも可能です。

また前モデルと比べて取り付けられる鍵の種類も増えています。どの鍵に対応しているかは、Qrioのウェブサイトから確認できます。サムターンだけでなく、プッシュプル式(上下にサムターンが付いているタイプ)のドアにも対応していますが、ドアノブにサムターンが付いているタイプの鍵には取り付けられません。

  • Qrio

    サムターンへの距離は鍵によってまちまちなので、スペーサーを介して調節します

軽く、小さくなった

前モデルのQrio Smart Lockと比べると、重さが40%ほど、本体の体積が10%ほど削減され、軽量・コンパクトになりました。また、スマートロックを操作してから鍵を開閉するまでの時間が、約8分の1へと大幅に短縮されています。これはロック操作のときにやり取りするデータ量を減らすことで実現しているとのこと。

実際に操作してみると、アプリのボタンをタップしてから約1秒と、かなり素早く開閉できました。前モデルは操作してから鍵の開閉を行うまでちょっと時間がかかっていたので、操作におけるストレスは大幅に改善されています。

  • Qrio

    専用アプリで操作します。アプリもインタフェースが改善され、ロック操作の画面はボタン1つのみとシンプルになりました。解錠も施錠もここから行います

ドアへの取り付けは付属の両面テープを使いますが、前モデルでは両面テープが数ヶ月で剥がれて落ちてしまう問題がしばしば報告されていました。Qrio Lockでは軽量化したことに加え、両面テープに切れ目を入れてドアの固定する面にしっかり密着できるようになり、高い耐久性を持たせたということです。両面テープは1年おきに交換するのを目安にしておくといいでしょう。

  • Qrio

    新モデル「Qrio Lock」で使われる両面テープ

  • Qrio

    前モデルで使われていた両面テープ

近づくだけで鍵が開く!

スマートフォンアプリからの開閉操作に加え、オートロック機能も付いています。オートロックを設定しておけば、家から出ると自動で鍵を閉めててくれるので、閉め忘れがなくなりますね。また、GPSによる位置情報+ビーコン機能を使ったハンズフリー開錠機能も用意。スマホを持って自宅のドアに近づくと、いちいちアプリを操作しなくても鍵が自動で開きます。ただしハンズフリー開錠機能は、家から約100m以上離れないとリセットされません。オートロックで鍵がかかってから忘れ物に気づいてすぐ戻っても、家から100m以上離れてリセットしなければ、自動でロックは解除されないということです。

電源はリチウムイオン電池×2で、約180日使用可能です。電池が突然切れても大丈夫なように、予備電源としてさらにリチウムイオン電池×2を取り付けておけます。リチウムイオン電池×4で、合わせて360日使用できるイメージですね。

また、別売りの「Qrio Hub」を使うと、インターネット経由でQrio Lockの開閉、鍵が閉まっているのか開いているのかの確認や、開閉履歴を管理できます(Qrio Hubは無線LANで自宅の回線と接続しておく必要あり)。家の鍵をちゃんと閉めたか自信がないときや、子供が帰ってきたかどうかを確認できるので便利な機能です。

  • Qrio

    別売りのQrio Hub。無線LAN(IEEE802.11b/g/n・2.4GHz帯)で無線LANルーターと接続して利用します。直販価格で8800円(税別)。Qrio LockとQrio Hubを組み合わせると、理想的なスマートロックが完成するという印象です

また、スマートフォンを持っていない子供やお年寄りなどのために、「Qrioキー」も8月に発売されます。これは開閉ボタンだけを搭載したリモコンキーで、登録したQrio Lockはこれで開閉できます。

  • Qrio

    8月16日発売予定のQrioキー。今回は会場で実機に触れられませんでしたが、シンプルで操作しやすそうな点は高く評価できます。直販価格で4500円

スマートロック製品は価格、取り付け方法などが多種多様で、いろいろなものが登場していますが、家庭用という観点からするとQrioの製品は完成度が高く、市場での人気の高さもうなずけます。特に処理速度が大幅に高速化したQrio Lockは、Qrio Smart Lockに続いて高い人気を博すのではないでしょうか。

防犯ブザーなどのセキュリティ機能や、火災時のロック解除機能などもあったほうがいいのでは、と感じましたが、これは将来的にQrio Hubを使った機器の連動などでカバーされることを期待します。いずれにしてもこれからスマートロックを使ってみたいと思っている人にとって、Qrio Lockは有力な選択肢としておすすめできる1台です。