7月10日にiOSのアプリストアである「App Store」が10周年を迎える。App Storeの登場でポストPC時代への移行が加速し、モバイルによって私たちの生活や社会が大きく変わった。その10年を振り返る「The App Store turns 10」を、米Appleが公開した。
The App Store turns 10は、10個のポイントからApp Storeの10年をまとめている。
まず「ソフトウェア流通のデモクラタイズ」(1)。App Store以前のソフトウェア市場では、パッケージソフトの流通手段を持つ大手ソフトウェア・ベンダーが支配的な存在だった。App Storeの登場は、小規模または個人の開発者を含む、全てのデベロッパにアプリをエンドユーザーに直接届ける方法をもたらした。一方ユーザーは、App Storeによって安全が確認されたアプリを安心して端末にインストールでき、簡単にアップデートを適用できる。それまでにない便利なアプリ利用の体験を気に入ったユーザーと、そうしたユーザーのニーズを満たすアプリを直接提供するアプリ開発者によって、App Storeは急速な成長を遂げた。2008年7月10日にApp Storeがスタートした時の配信アプリ数はわずか500アプリだったが、同年9月9日にはダウンロード数が1億本を突破した。
カメラ、加速度センサーやGPSなど様々なセンサーを搭載するスマートフォンと、アプリ開発者のアイディアの組み合わせによって、「Instagram」や「Uber」など「モバイルファースト」(2) の新サービスやビジネスが続々と誕生。スマートフォン市場がPC市場を上回る原動力になった。
中でも、iOSアプリの一大勢力となったのがゲームだ。タッチ操作で誰でも簡単に遊べる「Angry Birds」、冒険するように出歩いてポケモンをゲットする「ポケモンGO」など、iPhone向けやiPad向けがのゲームが「新たなゲーム市場とファンを開拓」(3) した。
App Storeのエコシステムは、「アプリ内購入、サブスクリプションといったソフトウエアやサービスに消費者がアクセスする新しい方法」(4) を成長させた。また、端末の内蔵ストレージの制限を受けずに、ブロードバンドに常に接続しているモバイルデバイスで、いつでも豊富な音楽やビデオコンテンツを楽しめる「ストリーミングサービスの普及」(5) を促した。
ポストPCデバイスとしてのiPadやiPad Pro、そしてアプリの組み合わせは「オフィスや教室に縛られないクリエイティビティやプロダクティビティ、学び」(6) のチャンスを広げた。また、HealthKit、Apple Watchの登場で、ここ数年で「ヘルス、フィットネス、ウェルネス関連のアプリが急成長」(7) している。
テクノロジーは全ての人にとって使いやすいものであるべきというのがアップルの哲学だ。小さな文字を読むのが難しい人、音が聞き取りにくい人、通常のタッチ操作が困難な人など、障がいを持つ人たちをサポートする「アクセシビリティ機能」(8) がiOSには組み込まれており、補助を必要とする人たちにもiOSアプリを使いこなして、学び、遊び、クリエイトできる機会が広がっている。
App Storeのエコシステムは、プログラミング学習の促進にもつながっている。iOSアプリは、モダンなプログラミング言語「Swift」で開発可能。Swift Playgroundsなどプログラミングを学ぶツールも充実しており、iPhoneやiPad、iOSアプリを使いこなすモバイル世代の子ども達にとって、アプリが「コーディングを学ぶ強いモチベーション」(9) になっている。
以前は、App Storeで配信される数多くのアプリの中に良質なアプリが埋もれてしまうという問題があった。昨年導入された「Today」タブなど、「App Storeの新機能が、必要なアプリや新しいアプリを探すユーザーの"発見"を促している」(10)。
これら10個のポイントに加えて、最後にこれからの可能性として「The AR Revolution Awaits (AR革命が待っている)」としている。