「セキュリティニーズで生まれた画像解析という技術を、管理の課題解決に活用するサービスです。利用状況というのは経験と勘である程度わかっているものではありますが、それを見える化するのがポイントです」と語る船津氏は、品川シーズンテラスにおける実証実験については「概ね予想通りという結果でしたが、多少予想と違う部分もありました。たとえば喫煙室が普通の煙草用と電子煙草用の2つ設置されているのですが、普通の煙草用が予想通りの使われ方だったのに対して電子煙草用は混雑時間が予想とずれていました。なぜそうなるのかを利用者にヒアリングし、レポートに反映させました」とも語る。
サービスで解析可能なのは、人や物の移動状態の把握だ。顔認証等は行っておらず、個人の識別は基本的にはしない。廊下を撮影する監視カメラから、多くの人が利用する廊下がどごなのか、廊下や交差点の中でどのあたりを通行する人が多いのか、手前から奥と奥から手前のどちら向きに移動する人が多いのかといったような情報を数値とヒートマップで示すことができる。
「立ち止まり、立ち寄りといった滞留も検知できます。たとえば受付前のベンチがどれくらい使われているのかを、10秒程度など基準値を指定し、一定時間以上止まっている人の数から把握します。多少動いた、立って座り直したというような小さな動きは移動なしとみなし、あまり長時間動かない場合は立ち寄りではないとして除外されるようになっています」と船津氏。数歩離れてから戻った場合などにはダブルカウントも発生するが、小さな数字を厳密に見るのではなく傾向を把握するためには十分役立つやり方だ。
「エリアを指定したり、ある場所をこの向きで動くものというように矢印を書き込んで指定したりするのは人の手ですし、調査内容によっては人の目が多く使われることもあります。例えば荷さばき用駐車場については、車室ごとに矢印を書き込んで入庫の動きを検知しました。エレベーターがなかなか来ないという訴えには、10分ごとに最初に現れた人をターゲットにボタンを押した動きを人間が指定し、実際に乗り込むまで何分だったのかを検証しました」と山﨑氏。見えている画像をどう活用すれば欲しいデータが出てくるのかを工夫するのは人間の役割というわけだ。
清掃や警備を効率化して人手不足に対応
結果として出てきた数字は、効率化等に向けたアドバイスに活かされる。商業ビルならば店舗の売り上げ向上や混雑状況の把握にも活用可能だ。
「元々あったニーズは、管理業務の効率化です。現在はどの業界でも人手不足ですが、建物管理においても無駄を減らしてこれまで10人でやっていた業務を8人で済ませることはできないのかというニーズがあります。混雑にあわせた警備人数の変化や、利用頻度の高い廊下は多く、少ない廊下は少なく清掃するというような効率化が求められているのです」と船津氏。
管理手法を変化させる根拠となる数字を出してくれるサービスだ。実証実験では廊下通行頻度を反映しての清掃方法や回数の効率化が計画された。また荷さばき用駐車場については混雑時間をずらしての利用を推奨する、指定時間よりも長時間駐車の傾向がある業者に注意を促すといった提案も行われたという。
「我々は提案をするだけで、実際にやるかどうかはオーナーが決めることです。感覚的なものを数値化し、数字の意味を経験と照らし合わせて提案します。現在は過去からの経験に照らしていますが、今後は画像解析によって見えてきたデータを蓄積することで新たなビル建設やリニューアルといった分野にもフィードバックは可能になるだろうと考えています」と船津氏は語る。
実証実験では、廊下の通行状況などは予想通りであった一方、エレベーターの待ち時間は事前に聞いていたよりも短かったという。使い方を変化させたり、リニューアルしたりする前段階として、利用者や管理者の感覚が正しいのかどうかを検証するにも役立つサービスだ。
「今回は現状を見るためのサービスで、通常ビル管理の他、イベント開催後の検証などに向いていると考えています。将来的には天候情報など他の情報を組み合わせた解析も必要に応じてやることもあると思います」と除補氏。画像解析だけでなく各種センサーやライター等を組み合わせた利用も検討されているという。