今年で生誕60周年を迎える"バカ映画の巨匠"こと河崎実監督がこれまでの映画人生で創造してきたさまざまなキャラクターやアイテムをズラリと並べた豪華な展示イベント「河崎実展」が、現在東京・渋谷の「東急ハンズ渋谷店B2Cフロア」にて、2018年7月17日までの期間で開催されている。

  • 左から、大怪獣モノ、河崎実監督、電エース

河崎実監督といえば、『地球防衛少女イコちゃん』(1987年)でメジャーデビューして以来、『いかレスラー』(2004年)、『日本以外全部沈没』(2006年)、『ヅラ刑事』(2006年)、『ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発』(2007年)、『大怪獣モノ』(2016年)など、一貫して娯楽色の強すぎる"どうかしている"作品を手がけてきたB級映画・バカ映画の巨匠として名高い人物。『ギララの逆襲』はイタリアやスペインの映画祭、『大怪獣モノ』もカナダ、オーストリア、スウェーデン、スペインの映画祭で上映されて大ウケを取るなど、今や河崎作品のファンは日本だけに留まらない。まさに日本が世界に誇る"バカ映画の巨匠"なのである。

「河崎実展」では、少年時代から「怪獣」「特撮」「フィギュア」「お笑い」をこよなく愛する河崎監督が、大学時代に作った特撮8mmフィルム映画作品に登場した小道具から、劇場公開作品のポスター、台本(すべてに河崎監督のサイン入り)、そして作品の中で縦横無尽に活躍したキャラクターの着ぐるみなど、膨大な数の展示物が東急ハンズの買い物客を出迎え、非常にいい意味で異様な空気を漂わせている。

左が『大怪獣モノ』(2016年)のモノ、その右が『アウターマン』(2015年)に登場する善意の宇宙人シルビー星人、ショーケースの上に寝ているのが『いかレスラー』(2004年)のいかレスラーを真赤に塗装して改造を施したテレビシリーズ『侵略!ガルパンダZ』(2016年)のレッドイカモン(2号)。通常、展示物には手を触れてはいけないのが常であるが、なんとこれら3体の怪獣・宇宙人キャラクターに限り「おさわりOK」となっている。ナマの怪獣に触れることのできるまたのないチャンスなので、怪獣ファンの方はぜひそれぞれのキャラクターの質感を確かめてほしい。

天井から吊られているのは、河崎監督のメジャーデビュー作となったビデオオリジナル作品『地球防衛少女イコちゃん』(1987年)の続編『地球防衛少女イコちゃん2 ルンナの秘密』(1988年)で主演の増田未亜が実際に着ていたというLTDTの衣装である。

壁には『地球防衛ガールズP9』(2011年)や壇蜜主演の『地球防衛未亡人』(2014年)、『大怪獣モノ』などのポスターが飾られている。

ショーケースの中には、映画で使われた小道具のほか、関連フィギュア商品(非売品もあり)、各作品の台本、ビデオソフト、DVDのパッケージ、そして『タイガーマスクに土下座しろ!』『ウルトラマン・ダンディー』『ウルトラTHE BACK』といった監督の著書も陳列してある。特撮ファンなら誰しもがうなる空間だ。

上段に飾ってあるのは、『地球防衛少女イコちゃん』(1987年)に登場した怪獣ペンタザウルスの頭部。31年もの歳月を経て表皮のラテックス(合成ゴム)が変質し、なんともいえない味わいに満ちた存在感をかもしだしている。このペンタザウルスは『ウルトラマン』や『ウルトラセブン』の怪獣・宇宙人をデザインしたことでも知られる成田亨氏が、この作品のために描いたオリジナル怪獣。雄々しいツノにも成田怪獣らしい気品が満ち溢れている。

『アウターマン』(2015年)より。国民的ヒーロー番組の主人公の姿を借りながら、ひそかに地球侵略を企んでいたアウターマン星人の頭部。映画の中では昭和アウターマン、平成アウターマンなどと、長年にわたってシリーズ化されている設定。

『ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発』(2008年)で、復活した宇宙大怪獣ギララを倒すために眠りから覚めた「タケ魔人」の頭部。声を演じたビートたけしの顔を模してマスクが作られている。劇中では超大物ゲストとして申し分のない活躍を見せてくれた。

『大怪獣モノ』(2016年)より、大怪獣モノ。地殻変動の影響で明神岳から出現した地底怪獣で、東京に持ち運ばれた自分の卵を奪いかえすため、渋谷のど真ん中に出現する。モノと戦うため万能細胞の力で巨大化した青年・新田を現役プロレスラー・飯伏幸太が演じたことでも話題を集めた。飯伏の繰り出す超人的プロレス技を受けつつ、互角以上の格闘をするという使命を担うモノのスーツには、いっそうの耐久性と柔軟性が求められた。

飯伏幸太演じる新田(B)と激しい格闘戦を披露した上に、最近でも各種プロレス興行でレスラー相手に激闘を繰り広げたモノ。ふたたび戦いの日を迎えるそのときまで静かに休みながらも、その目には闘志がみなぎっている。

『大怪獣モノ』でもスーツアクターを務めていた谷口洋行がふたたびモノに生命を吹き込んだ。会場内を動き回るモノに来店の子どもたちは、驚いて逃げだしたり、泣きだしたり、恐る恐る握手してみたり、中には一緒にダンスを楽しんだりと、さまざまな対応を示していた。モノの横に立つのは、河崎監督(芸名:南郷勇一)演じる「電一」が、気持ち良くなることによって変身するヒーロー・電エース。ふだんは身長2000メートルなのだが、等身大でも活躍することが可能。

「河崎実展」の激レア物件のひとつ。河崎監督がアマチュア時代に作ったSF特撮映画『エスパレイザー』(1983年)の悪役・エスパレイザー(上郷)のマスク。エスパレイザー(南郷)と共に、製作したのは特撮作品の造形や監督で知られる原口智生氏。ちなみにエスパレイザー(南郷)のマスクはリペイントされて「電エース」となり、以来35年以上も現役で使用され続けている。

8mm映画時代の特撮小道具の下には、河崎監督の交友の広さを示す数々の著名人・有名人とのツーショット写真が展示されている。

物販コーナーでは、河崎監督の還暦記念トートバッグや、『大怪獣モノ』Tシャツなどが置かれている。手前にあるのは、7月18日にDVD発売される監督の最新作『乳首ドリルの逆襲』の宣伝チラシ。

アマチュア8mm特撮映画としては破格の200万円を投じて製作された『エスパレイザー』の「完全版DVD」を作成するべく、7月よりクラウドファンディングが実施された。ただいま支援者を募集中。

初めての還暦(by長嶋茂雄)を迎え、ますますパワフルにどうかしている作品を作り続ける意欲を燃やす河崎監督と、監督を囲む愛すべきキャラクターたち。

「河崎実展」は2018年7月17日まで東急ハンズ渋谷店 B2Cフロアにて開催。7月14日の14時、および16時には、河崎監督と電エースが来店する予定となっている。物販コーナーで関連商品を3000円以上購入すると、河崎監督と電エースとの3ショット写真撮影が可能となる。その上、希望者にはモノの着ぐるみの中にも入ることができるそうだ。怪獣・特撮ファンはぜひこの機会を逃さないようにしてほしい。