外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏が2018年6月の為替相場レビューと、今後注目の経済指標やイベントをもとにした今後の相場展望をお届けする。
【ユーロ/円 6月の推移】
6月のユーロ/円相場は126.646~130.339円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約1.6%の上昇(ユーロ高・円安)となった。イタリア政局不安などで大幅に下落した前月の反動からユーロ買いが先行。欧州中銀(ECB)の金融政策正常化への期待が高まると7日には130円台を回復した。しかし、14日のECB理事会が(資産買入れの縮小と年内終了を決めたものの)、利上げに慎重姿勢を示したとの見方が強まると、ユーロは上げ幅をほぼ失った。その後は手掛りを欠き、もみ合う展開となったが、29日に欧州連合(EU)首脳会議で移民・難民問題に合意が成立すると、ユーロ買いが強まり、129円台を回復して6月の取引を終えた。
【ユーロ/円 7月の見通し】
6月はイタリアのコンテ新政権にユーロ離脱の考えがない事がひとまず確認できたほか、欧州連合(EU)首脳会議が移民・難民問題に合意した事によって独連立政権の崩壊リスクが後退した。ユーロ圏6月消費者物価指数が前年比+2.0%となり、欧州中銀(ECB)のターゲットを超えてきただけに、欧州の政治リスク後退は金融政策の早期正常化期待に繋がりやすく、ユーロ高を後押しする要因であろう。とはいえ、米国発の貿易戦争の砲火はユーロ圏にも及んでおり、トランプ米大統領はEUからの輸入車に対する関税引き上げを示唆している点などはユーロの重しとなり得るだろう。世界的に貿易戦争が激化すればリスク回避の円買い圧力が高まると考えられるため、この点もユーロ/円の重しとなりやすい。つまり、世界的な貿易戦争への懸念がさらに高まるか否かがユーロ/円相場の浮沈のカギを握っているという事になるだろう。
【6月のユーロ圏注目イベント】
執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)
株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya