もしいま、そこそこ使えるお金があったら何を買いますか? 「あれがほしい」「これを買おう」……。普段から多くのデジタル製品に触れ、ブツ欲があふれてそうなライター諸氏はどんな製品に興味をそそられるのでしょうか。「振って出たサイコロの目×10万円」の予算内で、夢と妄想を広げてもらいます。今回は、本誌デジカメレビューなどでおなじみの永山昌克カメラマンです!
子どもを撮るための機材、10万円で何を選ぶ!?
ここ数年、私が力を注いでいるのは子どもの撮影です。今しか撮れない貴重なシャターチャンスを逃さぬよう、カメラはコンパクトから一眼レフまで、レンズは超広角から超望遠まで、仕事用の撮影機材をフル動員して2人の息子を追っかけています。
そんな私にとって「もしもボーナスがあったら買いたいもの」は、子どもを撮影するための機材にほかなりません。早速サイコロを振ってみたところ、出てきた数字はなんと最小の「1」!
10万円の予算はカメラやレンズなどの機材としてはミニマムといえますが、バカ親カメラマンにとっては魅力的なお金。そんな私が10万円で選びたい機材は、シグマから新しく登場した中望遠マクロレンズ「70mm F2.8 DG MACRO」です。希望小売価格は税別69,000円ですが、実売価格は税込59,400円と6万円を切っており、今回の予算である10万円に十分収まります。
見えない部分を想像させる「パーツ撮り」に最適
このレンズに期待するのは、子どもの「パーツ撮り」。つまり、手や腕、足、口元など、部分をクローズアップで切り取るような撮り方です。
といっても、単に近寄るだけでは、効果的なパーツ写真にはなりません。背景や周辺に何を写し込むといいか、どの部分を切り取るといいか、きっちりとフレーミングを考えて撮る必要があります。
理想は、写真に写っていないフレームの外の様子を見る人に想像させるようなパーツ写真です。笑顔や泣き顔といったベタな写真はもういりません。そんな写真は、嫁のスマホにうんざりするほど入っています。私が目指すのは、家族以外が見ても楽しめるパーツ写真。それを撮るためには、どうしてもこの70mmマクロが必要なのです。
上のパーツ写真は、私が所有している100mmのマクロレンズで撮ったもの。100mmマクロの場合、手そのものを大きく写すには好都合ですが、周辺状況まで写し込むには後ろに下がる必要があり、私が目指すパーツ撮りには焦点距離が長すぎます。
いっぽう下の写真は、50mmのマクロレンズで撮影したもの。50mmの場合、周辺まで写すのは楽ですが、さらに接写したい場合には被写体までの距離が近くなりすぎてしまいます。近すぎると、撮影者の影がじゃまになったり、被写体がゆがんで写ったりしがちです。
そんなわけで、100mmと50mmのほぼ中間である70mmという焦点距離が、私のパーツ撮りの用途にはちょうどいいのです。
なかには「これぐらいの焦点距離の違いは大した差ではない」「撮り方の工夫でカバーできる程度の違いしかない」と感じる人もいるかもしれません。でも、最初にお伝えしたように、「あらゆる機材を活用して最高の子ども写真を残したい!」と使命感に燃えている子煩悩カメラマンにとっては、これくらいの焦点距離の違いでも決して妥協はできません。このレンズがどうしても必要なのです。
活躍の場はマクロ撮影だけに限らない
そのほかの使い道として、料理写真やテーブルフォト、植物のクローズアップ撮影などにも役立ちます。今のところ、この70mm F2.8 DG MACROは実際に試用していませんが、ふだんから24-70mmの標準ズームの画角には慣れているので、テレ端の焦点距離と同じと考えればおおよその使い勝手は想像できます。下の写真は、24-70mmの標準ズームを使って、70mm側で接写したものです。
マクロレンズといっても、用途はマクロ撮影だけに限りません。背景をぼかしたポートレートや、部分を切り取る感覚の風景写真、被写体とほどよい距離を置いたスナップ写真などにも活躍してくれそうです。
購入にあたって悩ましいのは、レンズマウントの選択です。70mm F2.8 DG MACROには、キヤノン用、シグマ用、ソニーEマウント用という3種類のマウントが用意されています。メーカーの異なる複数のカメラを所有している人なら分かると思いますが、本レンズに限らず、シグマやタムロンなどのサードパーティ製レンズを買う際は、どのマウントのものを選ぶべきか、難しい選択を迫られます。
機材に糸目を付けない自称バカ親レンズ沼カメラマンといえども、同じレンズをマウント違いで2本も3本も買うことはさすがにしません。それくらいの理性は残っています。それだけに、いざ買うとなったら、どのマウントにするか思い切り頭を悩ませて眠れない日が続きそうな気がします……。