「小学生がプログラミングって、映画かよ(笑)」と思ったあなた。あと数年もすれば、オシャレなカフェでパソコンを開く小学生に鼻で笑われるかも……。実際、今年の3月に文部科学省は2020年度から小学校でプログラミング教育を導入すると発表した。その影響もあって注目を集めているのが、小学生向けのプログラミングスクールだ。
6月24日、スターバックス横浜アイマークプレイス店にて、小学生向けプログラミングスクール「Tech Kids School(テックキッズスクール)」によるプログラミング体験イベントが開催された。参加したのは小学3~6年生の11名。開始時間になると、テーブルの上にずらっと並んだMacBookの前に、緊張した面持ちの子どもたちが着席。授業がスタートした。
だんだん夢中になっていく子どもたち
「こんにちは! 今日みなさんにプログラミングを教えるウエンツ校長です」
「え? ウエンツ瑛士?」
CA Tech Kidsの代表でもあるウエンツ校長、こと上野さんが挨拶すると、子どもたちからツッコミが入る。
今回のイベントでは、子ども向けプログラミングソフト「Scratch(スクラッチ)」を使って、簡単なゲーム作りを体験する。Scratchとは、アメリカのMITメディアラボが開発したビジュアルプログラミング言語の1つ。用途を問わず無料で利用することができ、世界150カ国以上で使用されている。
上野さんの説明を聞き、子どもたちはさっそくプログラミングに取りかかる。と言っても、プログラミング言語を打ち込んでいくのではなく、画面に表示されたブロックをパズルのように組み合わせながら、キャラクターの動きを作っていく。一見簡単そうだが、単純にブロックを移動させるだけでなく、「マウスオーバーしたら2秒間この動き、その間こっちのキャラはこの動き」と、頭で考えながら進めなければいけない。
はじめは固い表情で指示に従っていた子どもたちも、プログラミングを進めるうちに、自分から質問したり、隣の子に教えてあげたりと、夢中になっていく。イベント終了時には、小学5年生の男の子が自分から手を上げてみんなに自分の作ったゲームを見せ、工夫した点などを発表した。
でも本当に小学生にプログラミングは必要?
このように、自分の頭の中にあるものを、どのように指示すれば実現できるかを考えながら行うプログラミング。小学校でのプログラミング教育導入などもあり、注目を集めているが、本当に小学生からプログラミングを学ぶ必要があるのだろうか。
「プログラミングの知識や技術は言うまでもないですが、発想力やITリテラシーが身に付くということが、とても大切だと思っています。私も実はプログラマー出身ではないのですが、考え方として、プログラミングでこういうことができる、こういうものが作れるという発想ができることが重要なんです」と上野さんは話す。
「当スクールも、必ずしも将来プログラマーになりたいと思っている子ばかりではありません。たとえば、スポーツトレーナーになる夢を持っている女の子が実際に話していたのですが、『スポーツトレーニングも科学的に分析して考えたほうが多分いいから、プログラミングが役に立つと思う』と。ITに関わる仕事でなくても、そういった発想を持っているのとないのとでは、これからの時代大きく違ってくるのではないかと思います」
また、小学生からプログラミングを始めることについては、「小学生でもひらがなが読めれば十分にできます。もちろん好きになる子もいれば、そうでない子もいますが、それはほかの習い事やスポーツと同じ。もし好きになってくれるのであれば、早くから始めていたほうがその後の選択肢も広がりますよね」とのこと。小学生には早すぎる、ということもなさそうだ。
ちなみに、Tech Kids Schoolでは小学1~6年生を対象としており、最も多いボリュームゾーンとなるのが3、4年生だという。
しかし、小学校にパソコンがあったかどうか……という親世代からすると、プログラミングなんてあくまで一部の専門職の話だと思って、敬遠してしまうのも無理はない。
「スクールを始めた頃は、親が経営者やプログラマーという子が多かったです。でも最近では、まったくプログラミングやITと関係ない職業の親御さんにも興味を持っていただいています。親ができないから子どももできない、ということはありません」と上野さん。サッカーやピアノと同じように、普通の習い事の1つとしてプログラミングをとらえてほしいと言う。
日本のIT業界の現状
サイバーエージェント(CA Tech Kidsは同社の連結子会社)の広報・真下さんも、「プログラミングは、理論を組み立てていく数学的な発想と、アイデアを考えてそれを表現するクリエイティブな発想の両方が求められます。とくに子どもたちの自由で豊かな創造力には驚かされます」と話す。
「とくに日本は、先進国の中でも優秀なプログラマーが少ないと言われています。当社もIT企業として、日本のITの未来のためにも、子どもたちにITテクノロジーの面白さを知ってほしいという思いがあります」(真下さん)
最後に、イベントに参加した男の子に将来の夢を聞くと、「アイアンマンのトニースタークみたいな天才になりたい」と教えてくれた。日本製パワードスーツが現実になる日も、遠くないかもしれない。