住宅ローンを支払っている人なら、まとまったお金が入るときに繰り上げ返済したほうがいいのではないかと考えることがあるでしょう。繰り上げ返済は元金部分を前倒しで返済することになるため利息の節約につながりますが、繰り上げ返済の良し悪しは、実は人それぞれです。
ボーナスで繰り上げ返済をしてしまう前に、あなたの家庭ではどちらに該当するのかしっかり検討することが大切です。
繰り上げ返済とは?
繰り上げ返済とは、毎月の返済額とは別にローン残高の全部または一部を返済することです。そのうち一部繰り上げ返済は、繰り上げ分として支払うお金をどのように充当するかで2種のタイプに分けられます。
1つは毎月の返済額はそのままで、残りの返済期間が短くなる「期間短縮型」。2つ目は残りの返済期間はそのままで、毎月の返済額が減る「返済額軽減型」。ローンを少しでも早く返してしまいたいなら「期間短縮型」、毎月の負担を少しでも軽くしたいなら「返済額軽減型」というのが繰り上げ返済のセオリーです。
最近では繰り上げ返済の利便性を向上させる金融機関が増えており、たとえば「少額から」「何度でも」「手数料無料」とするなど繰り上げ返済がしやすくなりました。ボーナスが入るたびに繰り上げ返済をしていくことで返済期間を短く、月々の返済額を少なくできれば、精神的にもずっしり重い住宅ローンの負担を軽減することができそうです。
50万円繰り上げ返済したら
ところでボーナスで一部繰り上げ返済をすることでどの程度の負担軽減になるのか確認してみましょう。ここでは、50万円を繰り上げ返済すると仮定してシミュレーションしてみます。借入れ条件は次のとおりです。
<借り入れ条件>
当初借入金額2,000万円、借入期間35年、借入金利1.35%(全期間固定)元利均等返済
毎月の返済額は5万9,777円、ボーナス払いなし
返済開始から2年経過していると仮定
「期間短縮型」で50万円を繰り上げ返済したところ、返済期間が1年1カ月短縮されました。つまり総返済額は777,101円の軽減です。同様に「返済額軽減型」で50万円繰り上げ返済したところでは、月々の返済額が5万8,212円となり、月々1,565円のマイナスです。総返済額では61万9,740円の軽減です(※住宅金融支援機構の住宅ローンシミュレーションによる試算)。
どちらの場合も軽減額は繰り上げ返済した50万円以上となる結果をみると、ボーナスが入るたびに繰り上げ返済したくなるかもしれません。
しかしながら、ボーナスの全額を繰り上げ返済に回してしまえば手元にはお金が残らず貯金ができません。もしも、病気や災害などで想定外のお金が必要になり、突然の失業で収入がなくなると、キャッシュフローが崩れてしまいます。少なくとも生活費の6カ月分程度の預貯金がなければ繰り上げ返済はおすすめできません。
生活費の6カ月分程度は預貯金があるという場合でも、子どもの進学、固定資産税、車検代等々、1年以内に大きな出費が控えていないか確認しておかなければいけません。1年以内に大きな出費の予定が控えているなら、今夏と冬のボーナスは繰り上げ返済よりも預貯金に回してキャッシュフローを十分に備えておくほうが大切です。
また、住宅ローンの返済を開始して長い年月が経っている人やこれまでにも何度か繰り上げ返済を経験している人は、ローンの返済残期間を確認することも大切です。ローンの残期間が10年をきってしまうと住宅ローン控除が受けられなくなってしまいます。繰り上げ返済することで削減される総返済額と、繰り上げ返済する年の住宅ローン控除額を比較し、どちらがお得かどうかを確認したうえで決定するようにしましょう。
「いつ」「どれだけ」返済するか
そもそも金利などの借入れ条件が異なれば繰り上げ返済効果は変わりますし、「いつ」「どれだけ」返済するかによってもおトク度は変わります。同様に、家族のライフサイクルやマネーイベント、キャッシュフローの状況などは常時変化していきますので、その時々でしっかりシミュレーションすることが大切です。
いまは多くの金融機関がネットで簡単にできる繰り上げ返済のシミュレーションツールを提供していますので、自宅で思い立った時に手軽にできます。それまでのあなたのライフサイクルのなかで、どうすればより安心かという視点で考えるようにしてください。