住宅を購入したい人にとってまず気になるのが住宅ローンのことでしょう。きちんと返済していけるかということはもちろんですが、「いくらまで借りられるのか」というのも大切なポイントです。
それによって選べる物件が変わってきますので、一番に確認しておくべきことかもしれません。このとき注意しておきたいのが、借りられる金額と返済できる金額はイコールではないということ。住宅ローンの返済が家計を圧迫しないためにも、家計のバランスをみてローン計画を立てることが大切です。
年収600万円なら3,000万円まで借りていいのか
一般的に住宅ローンの適正額は年収の5倍以内とか、年間返済額は年収の25%以内と言われます。仮に年収が600万円だとしたら3,000万円まで借りられることになり、年間返済額が150万円、月額にして12.5万円に収まるようにローンを組むのがいいということになります。
ところが金融機関が提供している住宅ローンの借入可能額シミュレーションで600万円という年収をもとに計算してみると、借入可能額は5,836万円という結果が表示されました。ちなみに借り入れ条件は、返済期間35年、金利1.37%、全期間固定金利、元利均等返済、他の借り入れなしという条件です。
今度は金利だけを2%に上げ、ほかの条件はそのままで計算してみると借入可能額は5,282万円と少し下がるも、一般的な基準よりはるかに多い金額です。
では同じ返済条件のもと、5,000万円を借りるとして返済シミュレーションをしてみます。金利が1.37%の場合の毎月の返済額は約15万円、金利が2%だと約16.6万円となり、一般的な基準の安全ラインを超えてしまいます(※住宅金融支援機構の住宅ローンシミュレーションによる試算)。
実際の金利、返済期間や返済方法などによっても計算が違ってくることは確かですが、この結果からわかるのは、一般的な基準や金融機関のシミュレーションに惑わされてはいけないということ。金融機関は年収に対する貸してもよいと判断する上限金額を独自に設定していますが、個々の家計やライフスタイルに適応させた金額ではないのです。
借りられる金額は家計の状況によって違う
では本当のところいくらまで借りていいの? ということが気になりますね。「いくら借りていいか」は家計の状況に応じて「いくら返せるか」を基準にするのがベストです。いま家賃を払っている人なら、現在の住居費(家賃・共益費・駐車場代など)を基準にしてみるといいでしょう。いま住宅購入資金として毎月積み立てている金額があれば、その一部をプラスした金額を毎月の返済額と考えるのはいいかもしれません。
それでも、よく考えて住宅ローンを組んだはずなのに、住宅ローンの返済が始まった途端に家計が苦しくなってしまったという声をよく聞きます。なぜなら住宅取得後に発生する固定資産税や都市計画税、修繕費の積立金などを忘れている人が多いのです。返済開始後の家計にダメージを与えないようにするためには、現在の家賃・共益費・駐車場代をもとに返せる金額を算出するだけでなく、固定資産税などの費用を加味してマイホーム購入後の家計収支がどのように変化するかを確認しておくと安心です。
なお、小さなお子さんのいる家庭やもっと家族を増やしたいと考えている家庭では、いまの家計を基準にしても後々のマネープランが変わってしまいます。これまで大きな負担のなかった教育費が膨らみますし、食費や被服費なども増えていくため家計全体の見直しが必要になります。そのときになってローンが払えなくなってしまうということになっては困ります。いまの住居費を基準に住宅ローンを借りることが将来的に家計にダメージを与えてしまう可能性もやっぱり拭いきれません。
年収が同じでも、個々の家庭のライフスタイルや将来の展望によって毎月返済できる金額は異なることをイメージしていただけたでしょうか。年収の5倍以内、年間返済額は年収の25%以内というのはあくまで住宅ローンを検討するときスタート地点の目安にすぎません。今の家計を見つめ、将来の家計をイメージしながら、毎月どの程度ならダメージなく返済していけるのかを検討し、あなたの家庭の適正値をみつけるようにしてください。