JALは6月22日、快適な空旅とサイクルツーリズムの拡大を実現すべく、自転車輸送用の受託手荷物専用ボックス「SBCON(エスビーコン)」をせとうち観光推進機構とS-WORKSと共に開発した。利用者は輪行袋持参・複雑収納の手間なく、気軽に自転車と旅ができるようになるというもので、まずは8月24~26日に第1弾のモニターツアーを実施し、今後のサービスに向けての検証を行う。
自転車旅で地方に新たな観光需要を
JALは2015年より、地域と一緒に「地域の元気」を創る「JAL 新・JAPAN PROJECT」を展開しており、今回の取り組みもその一環となる。新・JAPAN PROJECTのテーマのひとつである交流人口の拡大を目指し、今後更なる拡大が見込まれているサイクルツーリズムの多様なニーズに応える取り組みとして、今回、共同で「SBCON(エスビーコン)」を開発した。
瀬戸内のしまなみ海道を始め、全国には様々なサイクルロードやサイクルイベントがあり、今日ではサイクルツーリズムを目的とした訪日外国人も増えている。各地では、レンタサイクルのサービスを展開しているところもあるものの、自分が乗り慣れた自転車でロングライドを楽しみたいというニーズもある。その場合、特に遠方にもなれば、飛行機輸送は避けられない。
飛行機で自転車を輸送するには、利用者自身が輪行袋と呼ばれる自転車を収納するためのケースを用意する必要がある。しかし、輪行袋はかさばる上に、慣れない人になると収納に30分程度時間がかかることもあるなど、ハードルは決して低くない。こうした現状に対し、「逆転の発想で、自転車そのものを預けてもらうということはできないのか」というところから今回の取り組みが始まったという。
前輪を外すだけ! 1~2分で収納完了
「SBCON(エスビーコン)」自体は、せとうち観光推進機構とS-WORKSがトラック等で運ぶ際の地上輸送用の専用ボックスを改良したものとなる。自転車はカーボンフレーム等、高価で繊細な自転車を運ぶことを想定し、ロードバイクやトライアスロンバイク、クロスバイク等を対象としている。収納は前輪を外すだけのため、1~2分程度の短時間で空港にて自転車を収納でき、フレームへの接触が気になりがちなディスクブレーキやペダルも、そのまま安心して収納可能。
全体の大きさ(幅52cm×長さ170cm×高さ94cm)はカーゴの大きさを踏まえながら、世界の平均身長(173m)よりもやや大きい175cmの人の標準体型+αに合った自転車を収納できる空間を確保して定めた。全体の形がおわん型なのはカーゴの形状に合わせたためであり、通常の運航便においても、1便につき5台程度まで対応できることを想定している。
また、素材にプラスチック段ボールを用いることで、強度と軽量化を実現した。ただし、ひとりで抱えて持ち運べるほどの軽さではないため、運ぶには台車が必要となる。
国際線での展開も視野に
気になるのは、実際にどのように利用でき、どのようなサービスとして展開されるかである。JAL経営企画本部長の西尾忠男氏によると、まずはパックツアーから始め、検証を重ねた後に、事前予約制で個人利用者にもサービスを拡大することを検討している。利用できる空港も、羽田空港や福岡空港等、幹線となる空港から拡大することを想定。「SBCON(エスビーコン)」は貸し出しになる関係で、有料でのサービスを想定している。
現状、自転車を預ける場合には、輸送中の責任を問わない旨を記した誓約書にサインが必要になる。この「SBCON(エスビーコン)」で自転車を預ける場合にも、自転車という高額品を扱うため、同様に誓約書が必要になる見通しだ。また、同様の理由で、収納自体は基本的に利用者自身の手で行う必要がある。
まずは8月24~26日に行う第1弾のモニターツアーを通じて、現場でのハンドリングや現実的なサービス内容・価格の検証を行う。第1弾は、「JALで行くサイクリストのための『しまなみ海道』モニターツアー3Days」と題したもので、1日目は飛行機で羽田空港から広島空港に飛び、広島・尾道のサイクルホテル「ONOMICHI U2」に宿泊、2日目はしまなみ海道のフリーライドで愛媛・今治の「今治国際ホテル」に宿泊、3日目は今治から自転車で松山空港に行き、そこから飛行機で羽田空港に向かうというプランとなる。このモニターツアーは定員10人(最小催行人員1人)で、7月2日に販売予定。価格は未定となっている。
しまなみ海道には現在、台湾からの訪日外国人も多い。今後の展開としては、国内利用者のみならず、訪日外国人も含めた国際線での利用にも拡大できればと構想している。まずはモニターツアーを重ねることでサービスレベルを高めつつ、各地のニーズの把握を目指す。