昨年5作の舞台を経て、今年は『駆けはやぶさ ひと大和』に続いて、歴史上の人物や出来事をエンターテイメント舞台として表現する「もっと歴史を深く知りたくなるシリーズ」の最新作『ジョン万次郎』(6月14日~24日・EXシアター六本木)に出演する女優・山下聖菜(19)。同作は、14歳の時に海で遭難した土佐の漁師・万次郎(溝口琢矢)が、アメリカの捕鯨船に助けられてからそのままアメリカに移住し、異文化の中で生き抜く姿を描く。山下が演じるのは、万次郎を支える2人の女性。役柄や作品と、どのように向き合ったのか。そして、彼女自身が万次郎のように影響を受けた人物とは。

溝口琢矢はジョン万次郎そのもの

山下聖菜

女優の山下聖菜

――今回は1人2役、しかも人種が違うという難役ですね。

日本が鎖国している時代なので、立場によっての違いがより大きく見えるように。外見的にもアメリカ人のキャサリンはオーバーなリアクション、日本人の鉄は“わび・さび”を意識しています。みんなで洋画のワンシーンを見て、「オーマイガー!」とか真似してみたり(笑)。そこに注目して洋画を観ると、動きだけでも日本人と全然違うことがよく分かりました。

キャサリンも鉄も万次郎に影響を与える言葉を掛けていて、鉄の「架け橋」という言葉は、万次郎にとっても大きな言葉になっています。それをいかにちゃんと伝えられるかが大事で、やっぱり「嘘」になってしまうと万次郎の言葉の伝わり方にも影響してくるので。キャサリンも鉄も万次郎を支える役ですが、立てすぎてしまってもよくないと思って、そのあたりも気をつけました。

  • 山下聖菜

――そういった立場の役なので、ジョン万次郎役の溝口琢矢さんとも一緒のシーンが多かったですね。どのような方ですか?

本当にまっすぐで好奇心旺盛で、ジョン万次郎そのもののような方です。稽古場でも積極的に意見を出してくださって、本当にありがたかったです。鉄、キャサリンそれぞれ違う人物ではありますが、共通する部分が伝わるように、手を握る動作を同じにしてみたり。近くで支えていたことだけじゃなく、そこには愛があって、鉄やキャサリンの存在が光ることによってさらに万次郎役も輝くようになればと思います。

  • 山下聖菜

女優・田中良子の言葉を胸に

――万次郎は異文化交流の中で刺激を受けながら、周囲の人々にも影響を与えていきます。山下さんはこれまで最も影響を受けたのは、どのような方ですか?

デビュー作からその後も関わらせていただいて、「舞台」というものを教えてくださった演出家の西田大輔さんです。『NEW WORLD』で共演させていただいた田中良子さんが、「お芝居は苦しいものだけど、舞台上では楽しくいられる」とおっしゃっていて、今もその通りだと感じます。いろんな役をいただいてそこで得ることもたくさんあって、「次の役もがんばろう」という前向きな気持ちにもつながっています。

  • 山下聖菜

――作品ごとにこうしてお話をうかがって感じるのは、作品を重ねてたくましく、強くなられている印象があります。

自分ではそういう意識はありませんが、作品や役への思いが徐々に明確になっていて、「自分がどんな存在になりたいのか」も考えるようになりました。

  • 山下聖菜
  • 山下聖菜

――そういえば以前、お母さんも観にいらっしゃってましたね。

いつも観に来てくれるんですけど、私をきっかけに舞台が好きになっているのがうれしくて(笑)。舞台そのものを楽しんでくれるので、私も感想を聞くのがいつも楽しみです。

  • 山下聖菜

■プロフィール
山下聖菜(やました・せな)
1998年12月16日生まれ。福岡県出身。身長162センチ。A型。地元・福岡でスカウトされ、約2年のレッスン期間を経て2015年、演出家・西田大輔氏が手掛ける舞台「From Chester Copperpot」の『NEW WORLD』主演で本格デビュー。2017年は『SAFARING THE NIGHT/サファリング・ザ・ナイト』(ヒロイン)、『幻想奇譚 白蛇伝』(主演)、『遠い夏のゴッホ』(ヒロイン)、『煉獄に笑う』、『ポセイドンの牙』(ヒロイン)、2018年は『駆けはやぶさ ひと大和』などの舞台に出演。