『半沢直樹』『下町ロケット』『民王』『陸王』など、次々とドラマ化されヒットを飛ばす小説家・池井戸潤の作品が、初めて映画化される。長瀬智也を主演に迎えた『空飛ぶタイヤ』(6月15日公開)は、大企業のリコール隠しと闘う運送会社の赤松社長(長瀬)を軸に、大手自動車メーカー、銀行など様々な立場で働く人たちの姿を描いた群像劇だ。
隠蔽やパワハラなど、社会に巣食う病理が連日報道されている中、まるでリンクするようなこの作品に、主演の長瀬は熱い思いで挑んだという。自身も「闘っている人でいたい」と語る長瀬に、同作についてインタビューした。
仕事だけになってしまうのはいけない
――今回作中では、赤松社長がかなり厳しい状況に置かれますが、長瀬さん個人が八方塞がりの状況になった時は、どんなふうに考えて乗り越えますか?
もう「死んでも良い」と思ってるくらい極限の状況ですもんね。でも僕は「死ぬんだったら、やるか」となるだけの話なので、意外とシンプルです。赤松も高速道路でハンドルを切ろうとするシーンがありますが、きっと疲れたり、壊れそうになったりして、誰しも思い描いた事はあると思うんですよ。その気持ちもすごく分かるけど、だったら最後にやれることはやった方がいいじゃない、と思うしかないんじゃないかな。
――諦めないためには、どんな風にモチベーションを保って行ったらいいと思いますか。
モチベーションを保てたら、みんな諦めずにすむし、苦労することもないですよね。でもそこでやっぱり助けてくれるのは、家族や仲間なのだと思います。実は仕事に関係ないバイク仲間とかが、逆に救いだったりするのかもしれない。だから、仕事だけになってしまって友達とかけ離れてしまうのは、実は自殺行為で、いざ何かなったとき周りに誰もいなくなってしまうんじゃないか、と思います。赤松にとっては、支えになるのは家族との時間でした。
――赤松はとにかく踏ん張って闘い続けますが、見切りをつけて諦めた人達もいっぱい出てきますよね。
きっとこうやって、反撃できることなんて奇跡だと思うんです。でもやっぱり、一人の人間が思い描いた綺麗な気持ちを社会がかき消すのは、すごく残酷だなと思います。世間を見ても、ビジネスのために自粛することがあったり、しょうがないことだと思うんですけど、見えない力が子供みたいな純粋な気持ちを壊してしまうのは、すごく残念だなと思うこともあります。
僕も一応、社会で仕事をしている人間として分かる部分もあります。でも、いつかこの世界が、社会が、気付くと思っていて。「そんな時代があったんだね」と言われるようになると思うんですよ。いつかみんな絶対に気付く、という確固たる思いもあるので、今はそっと見ている感覚です。
――会社が立ち行かなくなりそうな場面にも直面していましたが、長瀬さんが思う、組織のリーダーとして魅力的なのはどういう人ですか?
すごい人って、すごくない人ともちゃんと目線合わせてしゃべれるんですよね。例えば、僕みたいなアホな奴と目線を合わせてしゃべってくれる先輩には、ついていこうと思います。この人がこれから成功しようが失敗しようが、一生一緒にいたいと思います。ジャニー(喜多川)さんも素晴らしいですよ。かっこいい男です。