説説明書を読まなくても使い方がわかるのが、iPhoneの魅力であり強みです。しかし、知っているつもりでも正しく理解していないことがあるはず。このコーナーでは、そんな「いまさら聞けないiPhoneのなぜ」をわかりやすく解説します。今回は、『AirDropはデータをワイヤレスでやり取りするから危なくないの?』という質問に答えます。
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iOS 7のとき登場した「AirDrop(エアドロップ)」は、Bluetooth LEとWi-Fiという2種類のワイヤレス通信により実現されるデータ転送規格です。ワイヤレスですから、通信内容を傍受される危険性はゼロとはいえないものの、暗号処理など高度なセキュリティ技術により安全を確保しています。
AirDropではBluetooth LEで通信相手を確認すると、通信速度で有利なWi-Fiによるピア・ツー・ピア(1対1)の経路を設け、そちらに通信を切り替えることで高速性を実現しています。Bluetooth LEはWi-Fiと比べ圧倒的に消費電力が少ないものの通信速度は遅く、スピード感が求められるファイル転送には不向きですが、通信経路をWi-Fiに切り替えればその問題は解消できるというわけです。
AirDropが有効なデバイスでは、2048ビットという長さのRSA識別情報(RSAという高度な暗号技術で生成されたID)にくわえ、ユーザのApple IDに関連付けられたメールアドレスと電話番号をもとにAirDrop識別情報が用意されます。これらの情報が一致しないと「連絡先」の相手とは認識されないため、見ず知らずの人物が自分の知人に成りすますことは困難なしくみです。
ピア・ツー・ピア通信を開始するときには、通信経路はTLS(Transport Layer Security)により暗号化され、デバイス間でAirDrop識別情報が交換されます。識別情報は各ユーザの連絡先アプリのものと照合され、承諾された後にデータの転送が開始されます。
このように、AirDropではユーザの身元確認や通信経路の暗号化処理により、安全性が確保されています。2018年6月現在、AirDropのセキュリティが破られたという報告はありませんから、過剰に不安になる必要はなさそうです。