東京=新大阪ののぞみ指定席が片道1万4,450円の中、東京=大阪間の夜行バスが片道1万4,000円~と聞くと「高い」と感じる人は少なくないだろう。筆者もそのひとりだったが、実際に体験するとその人気ぶりがよく分かった。「ドリームルリエ(DREAM Relier)」がもたらしてくれる圧倒的な快適さは、今までにない夜行バス体験となった。
予約がとれにくかったプレシャスクラスを増席
ドリームルリエは、西日本ジェイアールバスとジェイアールバス関東が運行する高速バス「ドリーム号」における最上位モデルとして、2017年3月より導入された夜行高速バスであり、"最上のくつろぎ"を追求したモデルとなっている。車内には2列シートエリアの「プレシャスクラス」と3列シートエリアの「アドバンスクラス」の2クラスがあり、運行開始時に導入された「ドリームルリエ1号/2号」は、プレシャスクラス4席/アドバンスクラス14席という設定になっている。バス1台に18席しかないということからも、それぞれの席のゆとり具合を想像できるのではないだろうか。
そして2018年4月27日からは、ニーズの高いプレシャスクラスは2席増やして6席に、その一方でアドバンスクラスは4席減らして10席にした、全16席仕様の新車両「ドリームルリエ101号/102号」が導入された。さらに新車両には、各席に荷物置き場が設けられている。現在、この4台のドリームルリエで、東京発・大阪発をそれぞれ1日2便運行している。
また、1号/2号は東京(東京駅/新宿駅)=大阪(大阪駅)間を走る一方、101号/102号では以前から要望のあった京都駅への停車も入れた、東京(東京駅)=京都(京都駅)=大阪(大阪駅)間を走るダイヤもある。ただし、4月27日~5月31日までの金・土・日曜運行のダイヤでは京都停車を設けていたが、6月1日~7月5日までのダイヤでは京都停車がないのでご注意を。
アドバンスクラスも快適性アップ
今回、利用したのは東京発/大阪着の新車両101号。取材時のダイヤは22:20東京駅八重洲南口発/翌5:47京都駅烏丸口発/翌6:59大阪駅JR高速バスターミナル着だったが、6月1日~7月5日の期間は23:10東京駅八重洲南口発/23:50バスタ新宿(新宿駅)発/7:50大阪駅JR高速バスターミナル着となる。なお、同期間の復路102号のダイヤは、23:00大阪駅JR高速バスターミナル発/翌6:59バスタ新宿(新宿駅)着/翌7:24東京駅日本橋口着となる。
前述の通り、ドリームルリエは2クラス制で、プレシャスクラスは普通運賃で片道1万4,000円~1万8,000円、アドバンスクラスは普通運賃で片道1万400円~1万2,500円となる。体験するなら、やはりプレシャスクラスに乗ってみたい。
ちなみに新車両のアドバンスクラスでは従来の車両と比べ、足元がさらにゆったりした空間に改良されるとともに、A席とB席もプライベートカーテンで個室感が向上。さらに、パーテーションの材質と形状の見直しできしみ音が軽減され、フットレストの横幅が広がったことで靴の収納も可能になる等の変更も施されている。次回はこちらのアドバンスクラスも体験してみたいと思う。
大阪まで雑誌・動画三昧もあり
改札を済ませて車内に入ると、左右にずらりと"個室"が並んでいた。全席にパーテーションが設置されており、プレシャスクラスでは高級感漂うゴールドのプレートで、それぞれの席が表示されている。シートにはフカフカのブランケットと上に袋があり、中にはスリッパとイヤホンが入っていた。このイヤホンはサイドに設置されているタブレット端末「iPad mini 4」用のようだ。
このiPad mini 4はアドバンスクラスも含め全席に設置されている。インターネットはもちろんのこと、人気雑誌が最新号を含め1,000冊以上読み放題の「dマガジン for Biz」 、インターネットテレビ局「Abema TV」といった雑誌・動画等のコンテンツを無料で楽しめる。iPad mini 4の側には収納型のミニデスクと、角度を自由に調整できる読書灯、降車ボタンがあり、反対側のサイドにはコンセントが設けられていた。
前方にはドリンクホルダーと収納ネットがあり、足元には独立式のフットレストが用意されている。このフットレストは物置の機能もあるので、スリッパに履き替えたら、この中に靴を入れよう。そして後方には、新車両から搭載されたネット付きの荷物置き場がある。ネットに端にはフックが付いているので、大きな荷物を置いても安心だ。
寝返りもしながら朝までぐっすり
シートはどうだろう。幅を測ってみると約60cmあり、成人男性も寝返りも可能だろう。シートの角度調整は手動になっている。最大限にリクライニングさせてもフルフラットまではいかないが、実際に横になってみると、ベッドの上に横になっているような気になってくる。シート背後にもパーテーションがあるため、通常の座席では必要な後部座席への配慮もここでは不要だ。緩やかに反り上がった頭部と広めにとられた枕のおかげで、寝返りもスムーズに打てる。
道中2度ほど、トイレ休憩が設けられた。通常であれば、通路をいく人の気配が気になるところだが、上部が開いた個室風ということもあり、横になっていても周囲が全く気にならない。パーテーションの効果もあるのだが、高く設けられた天井がもたらす開放感も理由のひとつだろう。ちなみに、車内にはトイレも設けられているので、トイレ休憩を待たなくても大丈夫だ。
もし寒さを感じるようなら空調を止めるほか、レッグレストヒーターを活用しよう。ヒーターのスイッチはサイドに設けられている。iPad mini 4を目にした時、寝るのがもったいない気がしていたが、他のバスではなかなか味わえない"最上のくつろぎ"を有効利用してぐっすり眠ってしまうのも悪くないように思えた。
実際、道中は寝て過ごし、バスは定刻よりも20分程度早く大阪に到着した。夜行バスとして考えると、東京=大阪間で1万4,000円~は高いように感じるのは事実だろう。しかし、深夜に発って朝一から活動できるという意味で時間を有効活用するということ、前泊代が浮くこと、"最上のくつろぎ"体験ができるということを考えると、実効的な選択肢として十分検討に値するのではないだろうか。
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