きょう11日(21:00~22:09)に最終回を迎えるフジテレビ系月9ドラマ『コンフィデンスマンJP』。ダー子(長澤まさみ)、ボクちゃん(東出昌大)、リチャード(小日向文世)に次ぐ4人目のコンフィデンスマン(信用詐欺師)として登場し、その存在感で人気を集めている謎の男「五十嵐」を演じているのが、俳優の小手伸也だ。
ダンディーで落ち着いた言動を見せ、名バイプレイヤーの風格を醸し出しているが、意外にも今作が連ドラ初レギュラー。そこで出演のみならず、次回予告やPR映像のナレーションに副音声のMCと、俳優業にとどまらない活躍ぶりを見せている。
そんな小手に、作品に臨む心境や撮影現場の裏話、メインキャストの長澤・東出・小日向の印象などなど、たっぷりと話を聞いた――。
内側に入り込みすぎたキャスト
――初めての連ドラレギュラー出演となった『コンフィデンスマンJP』ですが、オファーを聞いたときの心境はいかがでしたか?
本当に青天の霹靂というか、まさかという気持ちが強かったんですが、慣れというのは怖いものでして、撮影終了後も副音声やナレーションの収録で毎週のようにスタジオに通わせていただいて、もうすっかり業界人気分です(笑)。おかげで、ただのキャストじゃなく、内側(制作側)に入り込みすぎちゃったので、副音声でドラマの感想を語るにも視点がちょっと違っちゃって…。初めての連ドラレギュラーなんで、もうちょっとフレッシュな感覚で作品に向き合ってしかるべきなんでしょうけど、今、変なロートル感があります。
――副音声では、毎回のように視聴率の話をされていますよね(笑)
はい、恒例のように(笑)。それで一度プロデューサーから、毎分視聴率の表が僕にも届いたりしてましたね(笑)
――えっ!? そんな俳優さん聞いたことないですよ(笑)
それを見て、「なるほど、ここで数字が上がったのか」とか分析しだしたら役者はダメですし、「F2(35~49歳の女性層)」なんて専門用語知らなくていいんですよ(笑)。でも、初めてレギュラーでやらせていただくドラマがこの作品で本当に良かったなと思います。こうして表側から内側から、僕という人間を皆さんで面白がって、いろいろコキ使っていただいて、これはもう何の含みもなく本当にありがたい限りです。
誰も得しない長澤まさみのドッキリ
――メインキャストの皆さんの印象を伺いたいと思うのですが、長澤まさみさんは小手さんに対して「あたりが強い」らしいですね(笑)
そうなんです。最初の頃は「つれない態度」レベルだったのが終盤になってからはより高度になったっていうか、なんか、僕に対して必要のないウソをついてくるんですよ。第10話でまたアフロが出てくるんですけど、僕がスイートルームに行くと、ダー子がアフロの手入れをしてるんです。実は当時の僕は、古代遺跡編(第6話)でアフロをかぶっていたのを見ておらず、台本にも書いてなかったので、「このアフロ、何かで使ったんですか?」って聞いたんですけど、長澤さんは「いや、別に」ってなぜか濁してくるんです。
――素直に教えてくれればいいのに(笑)
あと、僕のオールアップが、そのダー子とのシーンで、全体のクランクアップより数時間前だったんで、スタンバイの時に独りスタジオの前室で「ここで終わりかぁ」ってちょっと感慨深くなってたんですけど、急に長澤さんが、僕に「なんか追加になって、もうワンシーン後で撮るみたいだから、これで最後じゃないんですって」と言ってきたんです。でも、「僕、聞いてないんですけど…」って言ったら「私もあんまりよく聞いてない」、「セリフとか何も分かんないんですけど…」って聞いたら「セリフが無いシーンだから大丈夫らしいよ」って。
それで、「そうなんだ。そしたらみんなで同時にクランクアップしてイエーイ!みたいに盛り上がれるのかな…」って納得してスイートルームのシーンを終えたら、助監督さんが「以上で五十嵐役、小手伸也さんオールアップでーす!」って大きな拍手が起こっちゃって。「あれ?もうワンシーンあるんじゃないんですか?」って聞いたら、みんなポカーンとしちゃって、長澤さんに「えっ?ウソだったの?」って聞いたら、自分で蒔いた種のくせに「何言ってるんだろ、この人」みたいな顔して花束持ってきて。
――ひどい(笑)。みんなを仕掛け人にして、周りに人に聞こえるように「あとワンシーンあるよ」って騙すんじゃなくて、個人的に言われたんですね。
そうなんです。騙しとしては、本当に最悪なパターンだったんですよ!
――何を目的としてるんだ(笑)
なんのベネフィットもないドッキリでした(笑)
――長澤さんは役柄だけでなく、撮影の合間にも騙してるんですね。
そうなんですよ。だから、『めざましテレビ』で、僕のことを「紳士的な方です」とか言ってくださったんですけど、あの人のコメントとかもう信用できないですよ(笑)
東出昌大は「棒演技」ではない
――東出昌大さんはいかがでしたか?
東出くんは本当に真面目ですね。今回の役はすごく難しかったんじゃないかなと思うんです。あの朴訥(ぼくとつ)なしゃべり方にあるピュアで罪のない感じを演技で出すのって、なかなか難しいんですよ。ネット上では東出くんが「棒演技」みたいなことを書かれていたりしてますけど、あれは棒じゃないですからね。できるだけセリフに余計な作為が乗っからないように、かつ無感情ではないという絶妙なバランスの上での隙のある感じ。本当は何か考えがあるように見えて実は考えなしで、ただピュアに生きてる人みたいな。そういうのをすごく具現化した演技をしていて、僕はものすごく高度なことをされているなと思いましたね。あのテンションコントロールは秀逸ですよ。やっぱりカンヌとか行ってる人はすごいなって(笑)
――しかも、ダー子に要所要所でツッコミを入れるという役割もあります。
感情の振幅が激しい上に、ツッコミでお笑いとしても成立させることを考慮しなきゃいけないから、センスも問われるんですよ。あと、時々見せるジトッとした目が本当に好きなんですよね。2~3人殺ってそうな目(笑)。おそらくすごく丁寧な作り込みをされてる上に、愛されキャラっていう着地点に到達してる。あんな役、僕には絶対できないです。どうしてもアクの強さが出ちゃうから(笑)
――小日向文世さんはいかがでしたか?
最年長にもかかわらず、本当にムードメーカーに徹していただいて、みんなが小日向さんにぶら下がる感じの現場だったので、あらためて小日向さんがいてくれて良かったと思います。ある意味一番自由で無邪気ですからね。
――制作発表会見でもふざけまくって、長澤さんに何度もツッコまれていました(笑)
小日向さんがいないと、現場がちょっと静かなんですよ。「あれ? 今日って落ち着いた暗いシーンだったっけ?」と思ったら、「あぁ、小日向さんがいないだけか!」って(笑)。そのくらい本当にムードを作っていただきました。長澤さんと東出くんが30代で、僕が40代、小日向さんが60代で、年代がかぶらないから、お互いが新鮮な関係でいられたのも良かったかもしれません。でも、一番精神年齢が低かったのは小日向さんだったかも(笑)。若い女の子がゲストに来るとはしゃいじゃって、家ではウイスキーを飲みながらYouTubeを見るのが日課らしくて、現場で「あの動画見た?」って聞いてくるんです(笑)