タムロンから、ソニーEマウント用の大口径標準ズームレンズ「28-75mm F/2.8 Di III RXD」(Model A036)が登場しました。注目は、全域F2.8の明るさと小型軽量の両立という、純正レンズにはない魅力を持つこと。5月末から販売を開始していますが、前評判がとても高く、現時点では品薄で入手困難になるほどの人気を集めています。

多くのαユーザーが気になる話題レンズの実写レビューをお伝えしましょう。

  • タムロンの「28-75mm F/2.8 Di III RXD」(Model A036)。マウントは、ソニーEマウント用のみ。実売価格は税込94,500円

  • α7 IIIと組み合わせた際の使用時重量は約1200g。バランスはよく、取り回しも快適です

あの銘玉がミラーレス用に生まれ変わった!

今回登場した28-75mm F/2.8 Di III RXDのことを語る前に、2003年に発売された同じ焦点距離と同じ開放値を備える一眼レフ用レンズについて触れておかなければなりません。製品名は「SP AF28-75mm F/2.8 XR Di LD Aspherical [IF] MACRO」(Model A09)。発売は15年も昔ですが、今でも現行モデルとして売られているロングセラーの逸品です。

製品名が長いので、ここでは新レンズを「Model A036」、既存レンズを「Model A09」と表記して話を進めます。

  • 左が新発売の「28-75mm F/2.8 Di III RXD」(Model A036)、右が2003年発売の「SP AF28-75mm F/2.8 XR Di LD Aspherical [IF] MACRO」(Model A09)。Model A09は筆者の私物で、ズームリングのラバーをカスタマイズしているので、実際の製品とは見た目がやや異なります

Model A09がロングセラーを続けている理由は、全域F2.8の大口径ながら、小型軽量かつ低価格であること。外形寸法は全長92×最大径73mmで、質量は510g。実売価格は税込26,800円で、いずれも大口径標準ズームとしては破格です。

それでいながら、描写性能は優秀。私自身がユーザーとしてModel A09のEFマウント版をふだんから活用していますが、2400万画素クラスの一眼レフで使ってもきっちりと解像するシャープな写りと、絞り開放値でのスムーズなボケ味には十分満足しています。

  • Model A09で撮影。F2.8の開放絞りでは色収差やコマ収差、周辺減光、ゴースト、フレアなどが結構見られますが、個人的にはそれらもレンズの味として楽しんでいます

超音波モーター非搭載なのでAFの駆動音がうるさい、といった部分はさすがに古さを感じますが、それでも機動力の高さと価格の安さは弱点を補って余りある魅力といえます。私の所有レンズのなかでもお気に入りの1本です。

最近では、シグマのマウントアダプター「MC-11」(実売価格は税込30,000円前後)を介し、Model A09をソニーのミラーレスカメラ「α7 III」に装着して使用しています。アダプター経由では、カメラ本来の機能が一部制限されるという弱点はありますが、それ以上に高画質と高機動力のメリットは大きいといえます。

  • ソニー「α7 III」に装着した状態。左がModel A036で、右がModel A09+マウントアダプターMC-11。この状態だとサイズ感はほとんど同じ

そんなModel A09のヘビーユーザーである私にとって、ミラーレス用として生まれ変わったModel A036は、願ったり叶ったりのレンズです。Model A036は、大口径+小型軽量というModel A09の製品コンセプトを受け継ぎながら、ミラーレス専用に新設計されています。アダプター経由でも操作に大きな不満はなかったとはいえ、やはり本来のEマウントにネイティブ対応したレンズのほうが使い勝手に優れることはいうまでもありません。

前置きが長くなりましたが、ここからはModel A036の実際の使用感と作例をお伝えしましょう。