2018年6月6日、台湾・台北で開催中のアジア最大のIT関連展示会COMPUTEX TAIPEI 2018において、マイクロソフトの基調講演にNick Parker氏(Corporate Vice President, Consumer and Device Sales)らが登壇し、同社のパートナービジネスに関する最新のビジョンを提示した。

  • MicrosoftのNick Parker氏(Corporate Vice President, Consumer and Device Sales)

同氏は、今年のWindowsについて、Windows 10が好調であることを確認し、パートナーのビジネスチャンスは増える一方であることを強く誇示した。Windows 7のサポート終了が近づいていること、また、ゲームPCも成長していることから、今後も、多くの機会を創出できるだろうと、参加者の多くを占めるパートナーらに感謝の意を表明した。

増える一方のコネクテッドデバイスについても、重要なビジネスチャンスをもたらし、新しいマーケットができていることを提示、マイクロソフトはその機会を最大限に活用できることを保証するとNick Parker氏。

現在のマイクロソフトは3つの分野に注力しているという。インテリジェントクラウドとインテリジェントエッジを横断し、ユビキタス、AI、マルチセンス/マルチデバイス経験がその3分野だ。

Azureが支えるユビキタスコンピューティングにおいては、AIはプラットフォームとなるという。こうした注力分野の中で、新しいPC、新しいインテリジェントデバイス、AIデバイスが新しいビジネスを支えていく。

会議用の新デバイス「Windows Collaboration Display」

Nick Parker氏に代わり、ステージに登壇したRoanne Sones氏(プラットフォーム担当VP)は、モダンデバイスの重要性について語り、最新のOEM各社のデバイスを紹介した。

  • 会場で紹介された最新のWindows PC。左から、ASUS Zenbook Pro 15、Acer Swift 7、Lenovo Miix 630、HP Probook X360

クリエイティビティ指向、チームワーク指向、シンプリシティ指向、セキュリティ指向に分類され、クリエイティビティについてはASUS Zenbook Pro 15がパーフェクトな統合環境として紹介。チームワークについては、この日、初めてお披露目され、シャープなどから年内の発売が予定されているWindows Collaboration Displayが新しいハードウェアカテゴリとして紹介された。ソーシャルコラボレーションのためのデバイスということで、リアルタイムコラボやビルトインセンサーによるコラボレーション支援を担う。USB Type-C接続でさまざまな機能を提供する、一種のセカンドディスプレイ的なハードウェアのようだ。

  • Windows Collaboration Display。人の背丈を超える大きさで、Surface Hubを彷彿とさせる

シンプリシティについては、Acer Swift 7とLenovo Miix 630が紹介された。これらは4Gの接続性と4Kモニタ、長いバッテリ駆動時間などが特徴で、クアルコムのSnapdragon搭載のARM版Windows PC機だ。また、セキュリティ指向の強いPCとして、HP Probook X360が挙げられた。

さらに、デバイス同士のコンビネーションについては、すでに発表されているmy phoneが紹介された。スマートフォンの通知をPCの画面で確認し、さまざまなリアクションをPCで行うことができる環境だ。Microsoft LauncherをAndroidデバイスにインストールすることで容易にこの環境が手に入る。

同氏は、マイクロソフトがプラットフォームを問わない戦略をとっていることを強くアピールした。センサーでは業界標準プロトコルを使い、スマートセンサーでは、Azure Sphereのポートフォリオを使う。また、ゲートウェイではAzure IoT Edgeのランタイムをインストールして使い、PCクラスのデバイスでは、新しくリリースされたWindows 10 IoT コアサービスを使う。そして、サーバーではWindows Server refresh、さらにはFPGAがAIサーバーソリューションを加速するという。

  • Roanne Sones氏(プラットフォーム担当VP)

こうしたお膳立ての中で、積極的なビジネスの展開のためにも、インテリジェントエッジパートナーコミュニティにぜひ参加してほしいと呼びかけていた。

広がるIoTと増えるリスク、それを解決するセキュリティ

続いて登壇したのはGalen Hunt氏(Distinguished Engineer)だ。同氏はAzure Sphere MCUを紹介した。セキュリティ機能が組み込まれたマイクロコントロールユニットだ。ビルトインの接続性を保証、データ、プライバシー、インフラ、プロパティ、セキュアといった必要な要素をAzure Sphereによって解決する。MCU、OS、クラウドセキュリティサービスとしてのMicrosoft I/Oファイアウォールなどを統合したARM Cortex A7/ARM Cortex-M4Fプロセッサベースのチップで、最初はMediatekから提供される。

  • Galen Hunt氏(Distinguished Engineer)。手にしているのはAzure Sphere MCUの小型チップ

同氏は、ビジネスモデルをトランスフォームしようと呼びかけ、そのためにもこれまでの5倍から10倍パワフルなAzure Sphere MCUの活用をアピール、セキュアでないデバイスはスマートではないとして、未来をセキュアにしようと誘った。

  • この小型チップは親指の爪ほどもない小ささ。ピンセットでつままなければいけないほどだ

AIもパラダイムシフト。クアルコム協業の翻訳機も登場

登壇者はまだ続く。Mitra Azizirad氏(CVP、Microsoft AI Marketing)はマイクロソフトのAIに対する取り組みを振り返りながら、現状と未来を語った。アルゴリズム、データ、コンピュートパワーが変わっていく中で、AIにもパラダイムシフトが起こっているとし、ディープラーニングなどもどんどん複雑化しているが、マイクロソフトは数々のAIのブレークスルーを経験してきたことを振り返る。同社では、組織の力を高め、新しい体験を支援し、社会を力づけるために尽力しているという。

  • Mitra Azizirad氏(CVP、Microsoft AI Marketing)

ここでも新しいデバイスが紹介された。5月にリリースしたばかりのスピーチデバイスSDKを使ったもので、クアルコムとの協業による翻訳機だ。スマートフォンと連携し、会話の手助けをする。こうしてリアルタイムAIが現実のものとなるなかで、新しい経験を生み出そうと呼びかけた。

  • クアルコムとの協業で生まれた翻訳機。2018年5月にリリースしたスピーチデバイスSDKが使われている。会場では、翻訳している様子を収めた動画も公開された

数々の取り組みで、パーソナルコンピュータを取り巻く環境そのものに果敢にチャレンジするマイクロソフトの姿勢、そして、それによって生み出される新たなビジネスチャンスは、台湾のパートナー企業にとって、これからのビジネスを支える重要な基盤となる。それにともなってマイクロソフトとの付き合い方も変える必要が出てくるのかもしれない。パートナー各社に対して、そのヒントをこれでもかと言わんばかりに提示し、これまでと違うマイクロソフトが強くアピールされていた基調講演だった。