映画『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』(6月8日公開)で夫婦役を演じた女優の榮倉奈々と俳優の安田顕が考える、夫婦にとって大切なこととは?「島ぜんぶでおーきな祭 第10回沖縄国際映画祭」(4月19~22日)期間中に開催地の沖縄でインタビューし、作品の魅力や共演秘話、そして作品に登場する“夫婦”について語ってもらった。

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    安田顕(左)と榮倉奈々

2010年に「Yahoo!知恵袋」で話題を呼んだ投稿を映画化した同作は、結婚3年目の夫婦の一風変わったコミュニケーションを描いたハートフル・コメディ。結婚3年目のある日、夫のじゅん(安田)が会社から家に帰ると、妻のちえ(榮倉)が死んでいる!?「妻が突然、死んだふりを始めました」。あるときは、名誉の戦死を遂げ、あるときはワニに喰われ・・・。じゅんは、なぜ妻がそんな行動を続けるのか答えを見つけ出そうとし、物語は感動のラストへとたどり着く。

行間に感じた作品の魅力

――とてもユニークな作品ですが、出演が決まったときはどう感じましたか?

榮倉:まずはタイトルに衝撃を受けました。「本当に映画のタイトル!?」と。

安田:そうだね。長いしね。

――演じる役やストーリーに関してはどう思いましたか?

榮倉:脚本がほんわか素敵だなと思いました。行間から感じることも多くて、とても好きな脚本でした。

安田:本当に、作品に行間があることに安心しました。

榮倉:コミカルだけで通してしまうとちえさんは少し不思議に見えてしまうかもしれませんが、李(闘士男)監督が作品への思いをしっかり持った方だったので、とてもいい作品になったと思います。

安田:全体を通して榮倉さんがチャーミング。痛々しく見えないんだよね。そして、見どころの一つとして“死んだふり”があるけれど、もっともっと大切な見どころがたくさんあって、素敵な作品になっています。

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“死んだふり”は本気度が伝わるように

――榮倉さんは15パターンもの死んだふりを披露されています。死んだふりをするというのはなかなかない経験だと思いますが、いかがでしたか?

榮倉:“死んだふり”は初めてでした(笑)。撮影はハードだった記憶があります。

安田:一気に死んだふりのシーンを撮影したんですけど、4日間くらいだったと思います。地獄だったよね(笑)

榮倉:1日3~4パターンずつ、撮り続けました(笑)

――一番大変だった死んだふりは?

安田:全部大変でしたけど、ドラキュラとかすごい時間がかかりましたね。

榮倉:あとは、宇宙人とか・・・。

安田:榮倉さんが一番印象に残ったのは、ウルトラマンだったみたいです。「なぜ私はウルトラマンの格好をして『ぜあ!』って言ってるんだろう・・・」って(笑)

榮倉:もはや死んでいないので!(笑)

――死んだふりのシーンで意識したことを教えてください。

榮倉:ちえさんは「驚かせたい」「心配させたい」という意図のある仮装なので、その本気度が伝わるように意識しました。

――安田さんは、死んだふりをされる夫としてこだわったことはありますか?

安田:何もない! 監督のおっしゃるようにやるしかないし、もう極端に言うと、やけ! それがうまく重なって、いい具合にやけっぱち感が出ていると思います(笑)

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ちえさん&じゅんさんとの共通点

――演じられた役とご自身の共通点はありますか?

榮倉:自分の要素は入っていると思いますが、共通点はなかなかないと思います。自分の身近にもいない人です。

安田:僕とじゅんさんは、じゅんさんの方がいいんじゃないですかね。じゅんさんの方が理解力があると思います。僕はダメです。どうしようもない(笑)

榮倉:死んだふりに付き合ってはくれますか?

安田:付き合えない! (笑)

――お互いの印象はいかがでしたか?

安田:そういえば、榮倉さんに「撮影中、心を開いてくれなかった」って言われてショックでした(笑)

榮倉:心を開いてくれないといいますか、本当は言いたいことがあるのかな、と思っていました。

安田:榮倉さんはスパッと言うタイプ。心が男で見ていて気持ちいい! 僕はじめじめって。

榮倉:そんなことないですよ!(笑) 本当にそう思ってるかな? と思うことはありましたが・・・(笑)。後は気遣いをとてもされる方です。

安田:無駄な気遣いと低姿勢(笑)。そこはじゅんさんと似ているかもしれないです。

――リアルな世界で、ご自身の結婚相手がちえさん、じゅんさんだったらいかがですか?

安田:僕は絶対嫌です! 死んだふりでメッセージとか面倒くさい。だから3年目で離婚していると思う。相手にするなんて僕にはできないですよ(笑)

榮倉:自分の周りにもちえさんみたいな人はいないので、こういう人もいるんだなといろいろ想像して演じました。ただ、ちえさんのクリーニング屋さんへの思いなど、みんなが共感できる面もたくさん持っていたので理解することができたのだと思います。

――じゅんさんについては、包容力が素敵だなと思いました。

榮倉:いいですよね! たぶん、じゅんさんはちえさんと向き合える人なので、じわじわゆっくりというのに付き合えるタイプの人なんでしょうね。

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夫婦にとって大切なこと

――夫婦について考えさせられる作品ですが、作品を通してお二人は夫婦にとって大切なことは何だと思いますか?

榮倉:なんでしょう・・・。夫婦っていいものだなと思います。

安田:一人じゃないっていうのがまず良いですよね。でも、榮倉さんは環境も変わって今は自分のことは全然できてないんじゃない?

榮倉:できている方だと思います。沖縄にも来させてもらっていますし(笑)

安田:なるほど。僕はこの映画でいいなと思うのは、家族の在り方ではなく、夫婦の在り方を描いていること。「夫婦って何だろう」って漠然と思っていただけているのは、すごくいいなと思っています。

――この作品と出会って、夫婦についての考え方で変わったことはありますか?

安田:人はそう簡単には変われないですよ(笑)。ただ、なんとなく漠然と考えさせてもらったということだと思います。榮倉さんは、夫婦にとって体力、行動力、忍耐力、どれも必要だけど、一番はどれだと思う?

榮倉:忍耐力は必要だなと思いますが、忍耐と思っているうちはまだダメだなとも思います。でも、感謝する気持ちがあれば大丈夫なのかなと思います。

安田:自分のエゴを上回る思いがあるっていうことが大事だよね。

榮倉:それが大事ですね!

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■プロフィール
榮倉奈々
1988年2月12日生まれ、鹿児島県出身。2004年にドラマ『ジイジ~孫といた夏~』(NHK)で女優デビュー。その後、『ダンドリ。~Dance☆Drill~』(06/フジテレビ)でドラマ初主演、『渋谷区円山町』(07)で映画初主演を務め、連続テレビ小説『瞳』(08/NHK)のヒロイン役で注目を集めた。その他の主な出演作に、映画『僕は妹に恋をする』(07)、『余命1ヶ月の花嫁』(09)、『アントキノイノチ』(11)、『のぼうの城』(12)、『図書館戦争』(13)、『わたしのハワイの歩きかた』(14)、『娚の一生』(15)、『図書館戦争 THE LAST MISSION』(15)、『64(ロクヨン)』(16)や、ドラマ『Nのために』(14/TBS)、『99.9 -刑事専門弁護士-』(16・18/TBS)、『東京タラレバ娘』(17/日本テレビ)などがある。

安田顕
1973年12月8日生まれ、北海道出身。森崎博之、戸次重幸、大泉洋、音尾琢真と共に演劇ユニット「TEAM NACS」を結成。以後、『俳優 亀岡拓次』(16)など、映画、ドラマ、舞台とさまざまなジャンルで活躍する。その他の主な出演作に、『映画 ビリギャル』(15)、『HK/変態仮面』(16)、『聖の青春』(16)、『追憶』(17)、『銀魂』(17)、『不能犯』(18)、『北の桜守』(18)や、ドラマ『下町ロケット』(15/TBS)、『重版出来』(16/TBS)、『嘘の戦争』(17/カンテレ)、『小さな巨人』(17/TBS)、舞台『日の本一の大悪党』(16)、『DISGRACED』(16)、『スマートモテリーマン講座』(17)ほか。現在、ドラマ『正義のセ』(日本テレビ)に出演中。さらに主演映画『愛しのアイリーン』が今秋公開ほか、2019年度前期NHK連続テレビ小説『なつぞら』に出演予定。

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