NVIDIAは、COMPUTEX TAIPEI 2018の開幕を翌日にひかえた6月4日、台北市内のホテルにおいて記者発表会を行ない、自律型マシン向けAIシステム開発ボードの「Jetson Xavier」(ジェットソン・エグザヴィア)を発表し、1,299ドルで8月より早期アクセス販売を開始することを明らかにした。

  • Jetson Xavierを披露するジェンスン・ファンCEO

本製品は、ロボットやドローンなどにAIによるインテリジェント性をもたらす頭脳と呼べる製品で、その心臓部では自動運転向けソリューションでも採用されているXavier SoCが採用されている。

  • Xavier SoCのダイプロットと基本仕様

Xavier SoCは、TSMCの12nm FinFETプロセスで製造され、350平方mmのダイサイズに90億トランジスタを集積。GPUにはVoltaアーキテクチャを採用し、CUDAコアを512基統合している。Voltaアーキテクチャの特徴でもあるTensorコアを64基統合することで、30WのTDPでFP32で1.3TFLOPS、Tensor演算では20TOPSの性能を実現した。

  • Jetson Xavier開発ボードとその筐体

  • ロボットなどに実装する際は、ヒートシンクやファンを備えた右側のような形態となる

CPUには10ワイドスーパースカラのARM64 CPUコアを8コア搭載するほか、ISPや7-way VLIWプロセッサをベースとしたヴィジュアルプロセシングユニットに加え、FP16で5TFLOPS、INT8で10TOPSの演算性能を持つ深層学習用のアクセラレータDLA(Deep Learning Accelerator)なども統合する。

メモリインターフェースは256bit幅のLPDDR4インターフェースを備え、オンボードで16GBのメモリを搭載するほか、ストレージとして32GBのeMMC 5.1を搭載する。その性能は、現行のJetson TX2に比べて20倍以上、エネルギー効率も10倍以上向上したという。

  • Jetson XavierのI/O部

Jetson TX2には、各種センサーを接続するために豊富なインタフェースを備え、最大16基のカメラ入力をサポートする16レーンのCSI-2と8レーンのSLVS-EC、UFS、I2S、I2C、SPI、CAN、GPIO、UARTに加え、16GT/sのPCI-Express Gen.4コントローラを5基(x8×1、x4×1、x2×1、x1×2)やUSB 3.1×3、USB 2.0×4、ギガビットイーサネットに対応。ディスプレイインタフェースとしては、eDP/DP/HDMをサポートする。なお、Jextson Xavierの主な仕様は以下の通り。

製造プロセス 12nm FinFET
GPUアーキテクチャ Volta
GPUコア 512CUDAコア(8SM)
Tensorコア(GPU内) 64コア(SMあたり8コア)
DLA(深層学習アクセラレータ) NVDLAエンジン×2(FP16/INT8サポート)
CPU 8コア ARMv8.2 64bit CPU, 8MB L2 + 4MB L3
メモリ 16GB 256bit LPDDR4x(メモリ帯域137 GB/s)
ストレージ 32GB eMMC 5.1
ヴィジュアルアクセラレータ 7-way VLIWプロセッサ
ビデオエンコード 2(4Kp60 HEVC対応)
ビデオデコード 2(4Kp60,12bit対応)
ディスプレイ出力 eDP/DP/HDMI(4Kp60対応、HDMI 2.0, DP HBR3、最大3画面出力)
カメラ入力 16レーン CSI-2,(D-PHY V1.2 40 GbpsまたはCPHY v1.1 109GBps)
8レーン SLVS-EC
最大16カメラ同時接続
PCI-Express 16GT/s Gen4 コントローラ×5(x8, x4, x2,およびx1×2)
USB USB 3.1(10GT/s)×3、USB 2.0×4
イーサネット ギガビットイーサネット AVB over RGMII
そのほかI/O UFS, I2S, I2C, SPI, CAN, GPIO, UART, SD
ボード規格 W100×D87×H16mm(699ピン ボード間コネクタ搭載)
価格 1,299ドル(8月より早期アクセス販売)
  • Jetson Xavierに採用されているSoCは、Drive Xavierに搭載されたものと同一

NVIDIAは、このJetson Xavierとロボット開発プラットフォームであるNVIDIA Issac(アイザック)を組み合わせることで、仮想現実を利用してセンサーの反応をエミュレーションするなどして自律型マシンのAI学習を加速。ロボットのAI精度を高めるとともに開発期間を短縮することができるとしている。

  • NVIDIA Issac(アイザック)を組み合わせる

Issacには、ソフトウェア開発環境となるSDKに加え、ロボット制御アルゴリズムのソフトウェア環境としてIssac IMX(Issac Intelligent accelerator:自律型マシンアクセラレータ)も提供され、人間の姿勢から次の動作を予測するポーズ認識や、ジェスチャー認識、顔認識、スピーチ認識、アイトラッキング、手のポーズ認識、深度(奥行き)認識、ビジュアルオドメトリによる事故位置認識などを利用したロボット向けアプリケーション開発も支援し、さまざまな用途の自律型マシン開発を可能にする。

  • 各種センサーのデータをエミュレートし、仮想現実環境で学習を繰り返すことでAI精度を高め、開発期間も短縮する

  • イメージ認識により、より洗練されたAI制御を可能にするIssac IMX(自律型マシンアクセラレータ)と呼ぶアプケーション開発環境もサポート

ロボットなどのインテリジェントマシン市場は数十億規模におよぶ。NVIDIAとしては、Jetson Xavierの投入により、クラウドに依存することなくロボットやドローンなどが自律制御が可能なAIを実現し、AIロボティクスを次のステージへと高め、AIロボット市場においてもイニシアティブを握りたい考えだ。

  • ロボットなどのインテリジェントマシン市場は、数十億規模にのぼる