Microsoftが2018年5月31日(現地日時)に公開した公式ブログは興味深い内容を含んでいる。
同社はWindows 10のサービス提供モデルに関する名称を、「CB(Current Branch)」「CBB(Current Branch for Business)」「LTSB(Long Term Servicing Branch)」から「SAC-T(Semi-Annual Channel Targeted)」「SAC(Semi-Annual Channel)」「LTSC(Long-Term Servicing Channel)」に変更している。
これについて、Microsoftは「Windows 10およびOffice 365の連携を深めるため」と理由を説明していたが、先の公式ブログでは、「一部の顧客がOffice 365 ProPlusをWindows 10と並行して展開していることを十分に認識していなかった」と非を認めている。
SAC-Tは「半期チャネル(対象指定)」、SACは「半期チャネル」、LTSCは「長期サービスチャネル」という表記を用いているが、日本語としてみると"対象指定"という単語は実に分かりにくい。
この点においてMicrosoftは、「Windows 10 バージョン1803のようにITチームなど特定のターゲットを対象に展開し、テレメトリー(遠隔測定法)データとフィードバックが肯定的になるまでのチャネル」と説明した。つまり、Windows 10 Insider Previewより安定した先行版という色が濃いということだ。
他方でWindows 10のメインターゲットである法人顧客に対しては、WaaS(Windows as a Service)体制を求めた。Microsoftは2018年3月に公開した別の公式ブログで、「歴史的にソフトウェアのアップデートと展開は、大規模な単独のプロジェクトとして扱われていたが、(サービス化したWindows 10やOffice 365といった)ソフトウェアはエンドユーザーに新機能の提供と、品質及びセキュリティ対策需要に対応するため、定期的な更新を提供する」と述べ、利用者の概念を"プロジェクトからプロセスへ"の移行をうながしている。
具体的には上図に示したスライドのように、リングを用いた拡張可能な展開を行う管理モデルを構築し、アップグレードプロジェクトに費やすリソースやTCO(総保有コスト)の削減に加えて、セキュリティを担保する仕組みとしてWindows Analyticsを利用すべきという。だが、大企業ならともかく"1人情シス"でIT管理を担う中堅中小企業の実状をみると難しい部分が残る。
先日とあるPCベンダー関係者と話したところ、B2Bサポート利用者は、システムリカバリーメディアを用いるのが当たり前で、機能更新プログラムの適用でトラブルが発生するケースは少なくないという。それでもWindows 10のクリーンインストールは行っていないところを考えると、古い意識が残っているように見受けられた。
こうした状況でMicrosoftが目指す"プロセスへの移行"の実現は可能だろうか。もちろんITの世界に万世不易(永久に変化がないこと)はなく、新たな技術やデバイスの登場で我々の生活やビジネスが目まぐるしいほど変化している。それに合わせるようにWindows 10も変化しつづけている。
生業として常日頃から関わる筆者も戸惑うことが多いのだから、単なるツールとしてPCやWindows 10をお使いの方はなおさら混乱することもあるだろう。
Windows 10が日本のビジネスに浸透するのが先か、新たなソリューションが登場し、プラットフォームの乗り換えが進むのが先か。これはMicrosoftの挑戦でもある。
阿久津良和(Cactus)