米Appleは6月4日 (現地時間)、同社の開発者カンファレンス「WWDC 18」において、macOSの次期メジャーアップグレード「macOS Mojave」を発表した。AppleのCraig Federighi氏 (ソフトウェアエンジニアリング担当SVP)は「コンシューマからプロフェッショナルまで、幅広いMacユーザーにパワフルな新機能を提供するメジャーアップデート」と述べる。また、噂が飛び交ったmacOSとiOSの統合について回答すると共に、新たな開発フレームワークのスニークピークを行った。
同社は4日からApple Developer Programを通じてmacOS Mojaveの開発者向けプレビューの提供を開始、6月後半にパブリックベータ・プログラムをスタートさせる。正式版のリリースは今秋の予定。アップグレード対応機種は、mid-2012以降のMac、2010年と2012年のMac Pro (Metal対応グラフィックカード)。
Mohaveは、カリフォルニアの砂漠地帯である。砂漠が灼熱の昼間の顔と月夜の2つの顔を持つように、macOS Mojaveに新たにダークモードが追加された。これまでもmacOSではツールバーとDockをダークに変更することはできたが、ダークモードは全てが黒基調になる。Finderはもちろん、メールやSafari、Xcodeといったアプリも対応する。Apple TVと同じように、明るい時間帯はライトモード、暗くなったらダークモードというように動的にデスクトップを変更させることも可能だ。
また、デスクトップにStacksという整理機能が用意された。デスクトップに散らばるファイルを、ファイルの種類で自動的にまとめる。デスクトップがファイルだらけになる問題を解消する。Stackにポインタを合わせて内容を確認でき、クリックでStackが展開、ダブルクリックでファイルが開く。ファイルの種類以外にも、期間やタグで整理されるようにカスタマイズできる。
Finderの表示モードの1つであるCover Flowが「Gallery」という新しい表示に変わる。プレビュー画面がより大きくなり、プレビューで画像の回転やビデオのトリミング、保護されたドキュメントの閲覧といったアクションを実行できる (Quick Actions)。また、詳細なメタデータ情報の確認が可能。
ファイルを選択してスペースバーを押すだけで素早くプレビュー表示できる「Quick Look」でも、画像やPDFへの手書き、画像やPDFのクロップや回転、ビデオのトリミングといったアクションを行える。
スクリーンショット機能も強化され、オンスクリーンの操作メニューで様々な撮影オプションを簡単に利用できるようになった。動画のキャプチャもサポートする。
MacとiPhoneを連動させた作業を可能にするContinuityに「Continuity Camera」という新機能が加わった。MacからiPhoneのカメラを利用する。たとえば、Macでメールを作成していて、レシートの写真を添付したい時に、メールで「Insert a Photo」を選択する。iPhoneのカメラが起動し、iPhoneでレシートをスキャンすると、Macのメールにスキャン画像が自動的に差し込まれる。メールのほか、メモ、Pages、Numbers、Keynoteなどで利用可能。
プライバシー保護も強化点の1つ。iOS 12と同様、Safariのトラッキング防止機能が強化される。共有ボタンやコメント・ウイジェットもデフォルトでブロック。Cookieなしでもユーザーを特定するFingerprintに対して、デバイスが特定しにくくなる対策を施す。ほかにも、アプリが、カメラやマイク、個人データ (メールの履歴やメッセージのデータベースなど)にアクセスする際に、ユーザーの許可をアプリに要求する。
標準アプリでは、iOSの「News」「ボイスメモ」「株価」「ホーム」がMacに登場する。また、ユーザーの新しいアプリの発見をサポートするように、Mac App Storeのデザインを刷新する。キーノートでは、MicrosoftのOffice 365やAdobeのLightroom CC、PanicのTransmit 5がMac App Storeに登場予定であること、そしてBB Editの復帰を明らかにした。
macOSとiOS、数年にわたる取り組みの始まり
Windows PCでは2-in-1デバイスが大きな勢力に成長しているが、AppleはMacとiOSデバイスは異なるデバイスという姿勢を貫いている。それでも同社がmacOSとiOSを統合するのではないか、という噂が絶えない。それに対して、Federighi氏はキーノートではっきり「No」と否定した。しかしながら、Appleのプラットフォームにアプリを提供する開発者の負担を軽減するために、iOSアプリの開発に使われるUI KitをmacOSアプリの開発に移植する。それによってiOSアプリの開発者がMac用のアプリを提供しやすくなる。この開発フレームワークの移行は数年をかけて完了させる計画で、今年は第1フェーズ。MojaveからMacに加わる「News」「ボイスメモ」「株価」「ホーム」は新しい開発フレームワークで実現しているが、今年は外部に対して、そうした取り組みの存在を公表するスニークピークにとどめる。2019年にはサードパーティの開発者に門戸を開く予定で、来年のWWDCの大きなトピックの1つになりそうだ。