外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏が2018年5月の為替相場レビューと、今後注目の経済指標やイベントをもとにした今後の相場展望をお届けする。

【ユーロ/円 5月の推移】

5月のユーロ/円相場は124.620~132.143円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約3.6%の大幅安(ユーロ安・円高)となった。ユーロ圏景気の減速傾向やインフレの鈍化などを背景に欧州中銀(ECB)の金融政策正常化への期待が萎む中、イタリアとスペインの政局不安が高まったため、ユーロが大幅に下落した。

連立協議が難航していたイタリアでは、再選挙の可能性が高まった上に、再選挙が行われれば、ポピュリズム(大衆迎合主義)政党がさらに勢力を拡大するとの懸念が高まった(31日に五つ星運動と同盟が連立組閣で再合意し、ひとまず再選挙の可能性はなくなった)。スペインでは、ラホイ首相の元側近が与党国民党内の汚職事件で有罪判決を受けたのを踏まえ、同首相に対する不信任動議が提出された。

【ユーロ/円 6月の見通し】

イタリアのポピュリズム政党「五つ星運動」と極右政党「同盟」が連立組閣に再合意しており、1日にも新政権が発足する事になった。再選挙の可能性はひとまず後退する事になり、市場の不安も和らいだ。ただ、ユーロ圏で3番目の経済規模を持つ中核国で右寄りの政権が誕生する事に変わりはない。緊縮を基本理念とするユーロ圏とは、財政面などで相容れない点が多く、今後は両者の間で意見が対立するケースが増えるだろう。6月のユーロ/円相場は、5月の大幅下落の反動で上昇する可能性もあるが、イタリアの右傾化がユーロの重しとなる場面もありそうだ。

そのほか、6月は欧州中銀(ECB)の動向も注目されよう。ユーロ圏の景気が減速気味となる中でも、量的緩和(QE)の縮小(テーパリング)を進め、利上げの時期を探るという金融政策の正常化に向けた姿勢に変わりがないか確認したい。なお、14日のECB理事会では、いつもどおりドラギ総裁の会見が行われるほか、スタッフ経済予測が更新される。

【6月のユーロ圏注目イベント】

執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)

株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya