外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏が2018年5月の為替相場レビューと、今後注目の経済指標やイベントをもとにした今後の相場展望をお届けする。

【ドル/円 5月の推移】

5月のドル/円相場は108.113~111.393円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約0.4%の小幅な下落(ドル安・円高)となった。米国のインフレ高進や将来的な財政悪化を見込んで米国債が売られ、長期金利が上昇(10年債利回りは、17日に約6年10カ月ぶりに3.12%前後まで上昇)する中、21日には111.393円まで上昇して約4カ月ぶりの高値を付けた。

しかし、その後は急速に反落して月初来の上げ幅を全て吐き出した上に、29日には108.113円まで下値を拡大。米朝首脳会談が一旦中止となった(その後、予定通り開催される方針が改めて示された)事や、イタリア・スペインで政局不安が広がった事でリスク回避の動きが強まった。

【ドル/円 6月の見通し】

6月は、1日の米5月雇用統計を皮切りに、前半に注目イベントが集中している。2-4日には、北京で米中通商協議が行われる。米国が関税強化の方針を打ち出しており、貿易戦争激化が懸念されているだけに協議の行方が気になるところだろう。また、現時点では未決定だが、12日には史上初の米朝首脳会談が開催される可能性がある。5月には一旦中止と発表され、リスク回避ムードが強まった経緯もある。会談内容(核放棄など)も重要だが、開催の有無自体が材料になる事も考えられる。

そのほか、12-13日には米連邦公開市場委員会(FOMC)が予定されている。市場は0.25%の利上げをほぼ100%織り込んでおり、年後半の利上げ見通しが1回と示されるか2回になるのかが焦点となりそうだ。ドル/円は、これらの注目材料を吟味しながら、方向感を模索する事になるだろう。ただ、米政治がドルの上値を抑制する一方、米経済がドルの下値を支える構図に変化がなければ、方向感が出にくい展開も続く公算が大きい。

なお、6月14日からは、4年に一度のFIFAワールドカップがロシアで開催される。欧州を中心に市場参加者の中にも熱狂的なサッカーファンが多いと見られるため、取引が手控えられがちになる可能性もある。前回のブラジル大会の期間中であった2014年6月は、ドル/円相場の値幅が1.5円強と非常に小さかった。

【6月の日米注目イベント】

執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)

株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya