5月24日に運航したJALのJL632便(熊本発/羽田行、ボーイング767-300型機(登録記号: JA8980))が熊本空港離陸後左エンジンの不具合により熊本空港へ引き返した件の調査で、エンジン部分における高圧タービンの2段目動翼およびその下流の低圧タービンが損傷していたことが判明した。
同便は5月24日の15時42分に出発し、15時52分に離陸した。15時55分頃、熊本空港の9km(5nm)西・高度6,000ftにて左エンジンに不具合が発生。機長はエンジンの出力を絞り、熊本空港への引き返しを判断し、管制に対して緊急通信を行った後、引き返しで16時17分に着陸、16時20分に到着した。その後、自走にてスポットに入った。
同便には乗客209人(幼児ひとりを含む)が搭乗し、運航乗務員2人・客室乗務員6人の計8人が乗務に当たっていた。また、同件のため、16時17分~21分、および16時34分~39分の間、熊本空港の滑走路は閉鎖された。その後、25日付けで国土交通省航空局より重大インシデントと認定され、JALは運輸安全委員会による調査に協力するとともに、技術的な調査を進めている。
運輸安全委員会によれば、高圧タービンの2段目動翼およびその下流の低圧タービンが損傷していたことが判明したという。JALは再発防止策として、5月30日朝までに保有のボーイング767型機35機全69台のエンジン(該当エンジンを除く)の高圧タービン・ブレード(動翼)に対する内視鏡を用いた緊急検査を完了し、不具合がないことを確認した。なお、5月28日には、今般不具合を起こした機体ではない他機の右エンジンにおいて、今回の緊急点検の対象ではない部位に不具合が発見されたため、該当エンジンを交換している。
あわせて、エンジン運転データの監視強化や、整備士によるエンジン排気口の点検強化を実施。さらに、767型機に関しては、従来の400飛行サイクルごとの定例検査(燃焼室ならびに高圧タービン部に対する内視鏡検査)に加え、200飛行サイクルごとの追加検査(高圧タービン1段目および2段目の動翼に対する内視鏡検査)を設定し、順次検査を実施する。
落下物に関しては専用の問い合わせ窓口を設置したところ、これまでに53件の問い合わせがあり、個別に対応している(5月30日18時時点)。5月25日より、熊本にスタッフを派遣し、問い合わせ主などを訪問して、車両、家屋、施設の被害状況の確認を行っている。