円谷プロダクションは、アメリカのハンナ・バーベラ・プロダクションとの共同制作による長編アニメーション作品『ウルトラマンUSA』を、Blu-rayソフトとして2018年9月26日に発売することを発表した。

『ウルトラマンUSA』は、円谷プロが世界のマーケットを意識して、初めてアメリカの制作会社と共同で作り上げた作品。後のオーストラリアとの合作『ウルトラマンG(グレート)』(1990)、アメリカとの合作『ウルトラマンパワード』(1993年)のさきがけとなる、海外を舞台にした「ウルトラマン」シリーズとなっている。アメリカではTVスペシャル番組として1987年に放送されたが、日本では1989年に『ウルトラマン大会(フェスティバル)』と銘打ち、『ウルトラマン』第20話「恐怖のルート87」、『ウルトラマンA』第5話「大蟻超獣対ウルトラ兄弟」および短編「ウルトラマンキッズ」と同時上映で劇場公開されている。

「ウルトラマンをアメリカの空に飛ばせたい」という本作の草案は以前よりあたためられており、『トムとジェリー』をはじめとするファミリー向けアニメ作品で世界的に有名なハンナ・バーベラ・プロと手を組むことにより、アニメーションという形でついに念願が叶ったことになる。『ULTRAMAN:THE ADVENTURE BEGINS』と題された75分のTVスペシャルがアメリカで放送され、1987年度の全米視聴率中、第4期の子ども向けスペシャル番組作品中で第3位という好成績をあげている(パンフレットより)。

  • 当時の映画パンフレット(著者私物)

「アメリカの匂いが漂うウルトラマン」というコンセプトで企画された本作では、従来の実写特撮による「ウルトラマン」シリーズとはかなり毛色が変わっている。男女3人の防衛チーム「ウルトラフォース」のメンバー全員が巨大化変身してウルトラマン(ウルトラマンスコット、ウルトラマンチャック、ウルトラウーマンベス)となり、アメリカ全土にわたって襲来してきた宇宙怪獣(ソーキン・モンスター)と激しい戦いを繰り広げるという筋書きとなった。脚本はアメリカのジョン・エリック・シーワード氏が手がけたが、アニメーション製作は日本のスタジオ・ザインと葦プロダクション(現・プロダクションリード)で行われ、日本の子どもたちにも違和感なく受け入れられる作風となっている。

『ウルトラマン大会(フェスティバル)』が公開された1989年という年は、年表的に見るとテレビでの「ウルトラマン」シリーズのレギュラー放送がなく、「ウルトラマン不在の年」と捉えられるかもしれない。しかし、それは大きな誤解である。1983年から発売が開始されたバンダイの人気商品「ウルトラ怪獣シリーズ」が切れ目なく商品展開を継続していたほか、当時のトレンドの最先端を行っていた「レンタルビデオ」ブームによって町のあちこちに個人経営のレンタルビデオショップがあり、その中でも「ウルトラマン」シリーズのソフトは高回転商品として子どもから大人まで、幅広い年齢層に愛され続けていた。ちなみに『ウルトラマン大会』の同時上映が『ウルトラマン』と『ウルトラマンA』になったのは、本作の配給を東宝が行うにあたって、当時東宝ビデオからリリースされていた2作品のビデオソフトをアピールする意味も含まれていた。

さらには、メイン展開のかっこいいヒーローたちとは別に、ファンシーキャラクターとしてウルトラマンや怪獣を可愛くデフォルメした企画『ウルトラマンキッズ』が1983年より開始されたことも重要で、この成功によって(基本的に)男の子向けと言われていた「ウルトラマン」シリーズが、女の子にも親しみやすいように変化。ファンシーキャラクターとなった「ウルトラマン」は文具やアクセサリーなど、商品展開の幅広さを生み、「ウルトラマン」という存在が各家庭のすみずみに浸透していく効果を与えた。そして従来のかっこいい「ウルトラマン」とウルトラヒーローもまた、「明星チャルメラ」CMなどに見られるようにパーソナリティを臨機応変に変化させ、怪獣と戦う特撮ヒーローだけではない、新たなる「キャラクター性」を与えられることでその存在感を大きく高めていくのであった。

このように、「ウルトラマン」シリーズがそれまで以上にファミリー層から親しまれるキャラクターとなっていった時代=1980年代後半、突如現れたアメリカ帰りのウルトラマン『ウルトラマンUSA』は、子どもたちに新鮮な驚きと興奮をもって迎え入れられた。1989年にビデオソフト、1991年にレーザーディスクが発売されたのだが、これまでDVD化はされたことがなく、長らく視聴が難しい「幻」の作品となっていた。この度のBlu-ray 化では、通常の日本語版に加えて、アメリカ版『ULTRAMAN:THE ADVENTURE BEGINS』の本編も初収録。35mm のネガフィルム(原版)をハイビジョン解像度でデジタルデータへ変換し、鮮やかな映像を27年ぶりに蘇らせたという。

「ウルトラマン」シリーズを愛するファンにとって、本Blu-ray商品がたまらない贈り物となることは間違いないだろう。

  • 1987年

  • 2018年

ウルトラマンUSA/あらすじ

M78星雲の中の一惑星・ソーキンが原因不明の爆発を起こした。その惑星種族であるソーキン・モンスターが巨大な隕石となって宇宙に散らばり、その一つが地球に飛来。隕石は大気圏突入とともに四散し、北アメリカ大陸の各地に落下した。
米空軍・アクロバットチーム「フライング・エンジェルス」のメンバー、スコット・マスターソン大尉、チャック・ギャビン大尉、ベス・オブライエン中尉は、飛行ショー中に起きた事故での不思議なできごとをきっかけに、地球を守るためモンスターを追って M78星雲からやってきたウルトラマンたち「ウルトラチーム」とそれぞれが一心同体となったことを知る。重大な使命を受けた3人は、ウルトラマンスコット、ウルトラマンチャック、ウルトラウーマンベスとなり、「ウルトラフォース」として平和への誓いを新たにし、ソーキン・モンスターとの戦いに挑むのだった。

キャスト(声の出演)

スコット・マスターソン(ウルトラマンスコット):古谷徹
チャック・ギャビン(ウルトラマンチャック):小川真司
べス・オブライエン(ウルトラウーマン):鶴 ひろみ 他

スタッフ

製作:円谷 皐
エグゼクティブ・プロデューサー:円谷 皐、ウイリアム・ハンナ、ジョセフ・バーベラ
監督:日下部光雄 / 脚本:ジョン・エリック・シーワード
キャラクターデザイン:飯村一夫 / ヒーローデザイン:吉田等
メカニックデザイン:佐藤智彦
モンスターデザイン:雨宮慶太、村山寛貢、杉浦千里
美術監督:古谷彰 / 色彩:若井喜治、小針裕子
作画監督:飯村一夫、鶴山修、工藤柾輝、羽原信義
画コンテ:奥田誠治、長尾粛、日下部光雄、大庭寿太郎
撮影監督:森田俊昭 / 編集:正木直幸
音響監督:松浦典良 / ゴードン・ハント(英語版)
日本語版演出:松川陸 他

特典映像:ウルトラマン大会『ウルトラマンキッズ』幕間映像について

1989年に劇場公開された『ウルトラマン大会』は、長編アニメ作品『ウルトラマンUSA』をメインに、『ウルトラマン 恐怖のルート87』『ウルトラマンA 大蟻超獣対ウルトラ兄弟』『ウルトラマンキッズ』を含む興行の総称であり、『ウルトラマンキッズ』はプログラムの中核をなす各作品の冒頭に作品紹介として挿入された。本商品には、こちらの『ウルトラマンキッズ』部分だけを集めて特典映像として収録されている。

商品概要

Blu-ray『ウルトラマンUSA』
発売日:2018年9月26日(水)
価格:7,800円(税別)

■著者プロフィール
秋田英夫
主に特撮ヒーロー作品や怪獣映画を扱う雑誌などで執筆。これまで『宇宙刑事大全』『宇宙刑事年代記』『メタルヒーロー最強戦士列伝』『ウルトラマン画報』『大人のウルトラマンシリーズ大図鑑』『ゴジラの常識』『仮面ライダー昭和最強伝説』『日本特撮技術大全』『東映スーパー戦隊大全』『ゴーグルV・ダイナマン・バイオマン大全』『鈴村健一・神谷浩史の仮面ラジレンジャー大百科』をはじめとする書籍・ムック・雑誌などに、関係者インタビューおよび作品研究記事を多数掲載。

(C)円谷プロ