女優の永野芽郁が主演を務めるNHK連続テレビ小説『半分、青い。』(毎週月~土曜8:00~)で、ヒロイン・鈴愛が弟子入りした少女漫画家・秋風羽織(豊川悦司)のアシスタント、ゲイの美青年・藤堂誠役を志尊淳(23)が演じている。「ボクって…」が口癖であるためボクテと呼ばれているゲイの美青年役について、志尊はある強い信念を持って演じているという。撮影真っ只中の志尊に話を聞いた。

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    志尊淳演じる“ボクテ”こと藤堂誠

“ゲイの美青年”の役作り

――ゲイの美青年という設定ですが、どのように演じようと思っていますか?

台本を読ませていただいて、監督とプロデューサさんとお話をする機会を作っていただきました。ボクテはゲイですが、ゲイセクシャルについてはそれほど言及していなくて、あくまでも鈴愛のアシスタント仲間として、戦友として戦っていく。その中で、たまたまボクテ君がゲイセクシャルだった、という感覚です。時代背景が1980~90年代で、今とは違って性的マイノリティーの方たちへの偏見も強かったなか、オフィス・ティンカーベルという場所は実力主義で、皆で切磋琢磨し合って漫画家を目指していく場所。作品の中では、ハンディキャップとして扱われていないんです。ボクテ自身のキャラクターは純粋で口調も優しく、服装や髪形、身に付けるもので細かくディテールを出していこうかなと思っています。

――しゃべり方が立て板に水で早口だそうですが、工夫が要りそうですね。

ボクテ君は「◯◯なのよねえ~」みたいな言い方が多くて、いろいろと調べたり、セクシャルマイノリティーの友だちに聞いたりしていくなかで、声色を変えるにも意図があったり、いわゆるオネエ言葉を使うにあたっても人それぞれが意図あるものということを知りました。その中でボクテ君は、心は男性なので、どうして女性っぽいしゃべり方をするのかというところはすごく話し合って作っています。純粋な男の子で、かわいげがあるというところを意識していくなかでの声を意識しました。

普段の話し方とは違うとは思っていますが、脚本の北川(悦吏子)さんと初めてごあいさつさせていただいた時に、「すでに声がボクテ君だね」と言われて、特に声を作っているわけじゃなかったのでびっくりしました。

ゲイ役を演じる責任

――彼を演じてみて、すごいなと思うことはありますか?

いろいろな人から偏見を受けている時代のなか、ゲイセクシャルということを自分でどんどんと発信していくタイプなんです。自分はこういう人間ということを人に知ってもらうために。自分はこういう人間ということを知ってもらうことって、素敵だなって思いました。漫画家さんは自分を隠さずに表現していく仕事なので、自分の表現をオープンにしているスタンスは、すごく素敵だなと思います。

――最近では性別を超えて、さまざまなキャラクターを演じることが多いと思いますが、今回のボクテ君を演じるにあたっては、最初何を思いましたか?

確かに、ゲイセクシャル、トランスジェンダー、レズビアンなどLGBTについては、いろいろ言われますが、僕自身演じる時はひとりの人間、それぞれ別のキャラクターと思っています。ただ、ドラマ10『女子的生活』に出てからは、責任をより感じるようになりました。特に今回たくさんの人に観ていただくということで、なお責任を感じます。なによりもゲイセクシャルという役柄が表面的にならないように意識していて、クランクインの前から何回も監督とプロデューサーさんに時間をいただいて、そこの描き方について話し合いました。言い方が間違っているかもしれないけれど、イロモノにはしたくなかった。ボクテ君自身はゲイセクシャルについて語らないですが、そうなっている以上、責任をもって演じているつもりです。

佐藤健演じる律にキュンキュン

――彼の恋物語は期待できそうですか?

そうですね。キュンキュンはすると思います。男性として男性に美しいとか、ポッとする感情……それは秋風先生に抱いている感情ではありますが、ゲイセクシャルとして抱いている感情であり、男性のあこがれの人としてキュンとしている意味もあって、さまざまです。中でもボクテが一番キュンキュンしている人は、佐藤健君演じる律です。そこは描かれている部分はほぼないのですが、僕の中でそういう設定を立てています。だから健君によくしつこく近づいていくのですが、「また近づいてきた」とよく言われます。

――どうにかなりたいと思っている?

そうは思っていないですよ(笑)。律君の恋愛事情も知っているし、鈴愛が律君に対してどういう感情を抱いているかもわかっているので。本当に美しいからこそ、ちょっかいを出したいという感覚ですね。

「殻が破れた」俳優としての転機

――『植木等とのぼせもん』や『女子的生活』など、過去の作品の経験が役立ってそうですね。

それはもう間違いなく役立っていると思います。自分で気づいていなくても現場で学ぶことであったりとか、自分の中で開放している部分であるとか、それぞれの作品で感じる部分もあります。ボクテ君を演じるにあたって、所作をきれいにしたいなと思っている時に、『女子的生活』で学習した所作はかなり役に立ちました。そういうひとつひとつの積み重ねが大事だなと思います。

昨年、ストレートプレイで初めての主演舞台『春のめざめ』をやらせていただきましたが、そこで自分自身何かが変わったと思っているんです。演出の白井晃さんから本番の2日前くらいまで「このままでは幕が上げられない」と言われて。その時、自分でもわけがわからなくなりましたが、自分で思い切りやって初めて、白井さんの言葉をお借りすると「殻が破れた」と。少し進歩してヒビを入れることができたんです。それはすごく大切な経験になっています。『植木等とのぼせもん』も、この舞台を観てくださった方がいたから決まった作品なので、ひとつひとつの積み重ねがいまに至っているなと感じています。

――今後、大変なことも起こりそうですが、ボクテの人生をどのように演じたいと思っていますか?

ボクテ君は弱冠18歳で、突発的な行動で一喜一憂したりしますが、何に対しても責任を感じる子でもあるので、そういうことは意識して演じています。彼は天真爛漫で優しそうな部分もありますが、ちゃんと筋も通して生きている。しっかりと芯を持っているところ、そういう二面性も見せていけたらと思っています。

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■プロフィール
志尊淳
1995年3月5日生まれ、東京都出身。2011年俳優デビュー。2014年、『烈車戦隊トッキュウジャー』(テレビ朝日)の主演に抜擢され、ライト/トッキュウ1号役で人気を獲得。以後、『先輩と彼女』(15)、『疾風ロンド』(16)、『サバイバルファミリー』(17)、『帝一の國』(17)、『覆面系ノイズ』(17)など、いくつもの話題作に出演する。また、白井晃演出の舞台『春のめざめ』で主演のメルヒオール役を務めるなど、若手を代表する演技派俳優。主演映画『走れ!T校バスケット部』が今年公開予定。
■著者プロフィール
鴇田崇
映画&ディズニー・パークスを追うフリーライター。年間延べ250人ほどの俳優・監督へのインタビューと、世界のディズニーリゾートをひたすら取材しまくる。ジョン・ラセター、アラン・メンケン、キャスリーン・ケネディ、バイロン・ハワード、ティム・バートンなど、ディズニー映画関連人物のインタビュー経験も豊富。世界のディズニー・パークスでは東京だけでなく、アナハイムも偏愛している。instagram→@takashi.tokita_tokyo

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