クレジットカードの限度額というと「毎月使える金額のこと」と思っていませんか?「旅行に行く」「医療費がかかる」といったタイミングで、1カ月だけでも限度額を上げたいと思った経験もあるかもしれません。今回は限度額の基礎知識について解説します。

  • 知っておきたい限度額の基礎知識

クレジットカードの限度額とは

お財布に現金がなくても買い物ができるクレジットカード。便利ではありますが、現金が買い物と同時に減らないので、後々請求金額を見て「こんなに使っていたんだ!」と驚いた、というケースもありますよね。

クレジットカードは、クレジットカード会社が利用者の代わりに支払いをし、後に利用者がクレジットカード会社に借りたお金をまとめて「後払い」する仕組みになっています。

そのため「割賦販売法」により、クレジットカード会社が「利用者が無理なく支払える金額=限度額」を設定することになっているのです。この金額は、1回払いではなく、支払い期間が2カ月を超えるリボ払い(分割払い)などを前提に設定されます。

それでは、限度額(利用枠)とは何を指すのでしょうか。

限度額(利用枠)=利用残高(未払い額)+利用可能額(これから使える額)

「限度額」と聞くと"1カ月に使える金額"と思うかもしれませんが、利用した金額が支払われるまでの未払い金と、利用可能額の合計を指します。「集計期間中に使える金額=限度額」ではないと覚えておきましょう。

限度額はどうやって決まる?

クレジットカードの限度額を決めるにあたって、割賦販売法によりクレジットカード会社には下記の2つのことが義務付けられています。

1.個人情報の調査

年収、クレジットカードの支払い状況、生活維持費、貯金や居住用以外の資産、延滞情報や借入状況などが調査対象です。カードの支払い状況に関しては、特定信用情報機関を通して、これまで利用している全てのクレジットカードの残高、支払い履歴の記録も調べることになっています。

2.支払可能見込額の計算

年収から返済以外の生活のために必要な「生活維持費」と、クレジットカード会社に1年間に支払う予定額「クレジット債務」を引いた金額が「支払可能見込額」となります。割賦販売法では、クレジットカードの限度額は、支払可能見込額の90%を超えてはならないとしています。

  • 生活維持費の表(経済産業省「早わかり改正割賦販売法」を元に執筆者が作成)

限度額≦支払可能見込額×90%

限度額は支払可能見込額の90%を超えなければいいので、最終的には「個人情報の調査」の結果を考慮して金額を設定します。こうしたことから、利用者によって限度額に違いが出てくるのです。

ただ例外として、限度額30万円までのカードについては、支払いの遅滞がなく、クレジット債務が自社50万円、他社を含めて100万円までであれば、支払可能見込額の調査は不要となり、簡単な審査のみで発行できるとしています。

限度額を上げるために注意したいこと

上記を踏まえると、クレジットカードの限度額を上げるためには、下記のポイントに注意する必要があります。

信用情報を汚さない

クレジットカード会社は「支払いが遅れていないか」「クレジット債務はどのくらいか」などを調査しているので、支払日に請求額が着実に銀行口座から引き落とされるようにしましょう。

年間支払予定額を増やさない

年間支払予定額が多くなると、限度額を決める要素の一つ「支払可能見込額」が低くなる可能性が高くなります。他社のリボ払いなどの支払状況も審査に入っていますので、年間支払予定額が多くなりすぎないように計画的に利用しましょう。

限度額アップの申請方法は?

また、クレジットカードの限度額を上げたい場合、そのための申し込みは利用者からすることもできます。「増額の申し込み」とも言い、「継続的申し込み」と「一時的申し込み」の2つがあります。

継続的申し込み
転職や昇進など、年収の変化や支払状況が良好になった場合などに、利用者から増額希望を申し込むことで、クレジットカード会社が改めて審査をします。

一時的申し込み
海外旅行、引越し、冠婚葬祭などの特別な理由がある場合、一時的に限度額の増額を申し込むこともできます。いずれの場合もクレジットカード会社は増額申し込みを受けて再度審査し、限度額を引き上げても良いかどうかの判断をします。

一方で、クレジットカード会社は新規の申し込みや利用者からの増額の申し込みの時だけではなく、更新の時にも審査をしています。更新時の審査により支払状況によっては、限度額が上がった通知を受けることもあります。

限度額は下げることもできる

このように利用限度額の「上限」は審査によりクレジットカード会社が決めますが、「キャッシング枠」を0円にしたい、クレジットカードの利用額は使いすぎないようにもっと引き下げたいなどという場合は、クレジットカード会社に問い合わせることで希望の額に設定されることもあります。

限度額が設定されている理由やその仕組み、ご理解いただけたでしょうか? いずれにせよ、ご自身の生活水準に合わせたお金の使い方を心がけたいですね。

※写真と本文は関係ありません

朝日 莉恵(あさひ・りえ)
小学生男子のママ。住宅ローンや教育費などの知識を深めるため、ファイナンシャルプランナーの資格を取得。数回の引っ越しと育児で日々の時間とお金の大切さを知る。ブログ「只今実践中 子育て家庭の家計管理のヒント」では家計のコツと家事のヒントを伝えながら個別相談・マネー講座・執筆などで活動中。家事と家計の両方で主婦の笑顔を作る快適生活を実践中。AFP/ライフオーガナイザー2級/マイライフエフピー認定ライター