すっかり定着したマイホームのDIY。ホームセンターでも簡単に使えるDIYグッズがたくさん並んでいます。その流れは賃貸物件にも広がり、自分好みにカスタマイズできる「DIY賃貸」が人気。とはいえ、あくまで賃貸ですから、何もかも自由に変えられるというわけではありません。作業後にトラブルにならないよう、注意点をしっかり押さえておきましょう。

Q DIY賃貸があるって聞いたけど、好みのタイプにできる?

A 「DIY賃貸」とは、前の人が退去したままの住まいをそのまま借りて、借りた側がリフォームしたり、壁紙をプランの中から選べたりすることができる賃貸住宅です。借りる側がリフォーム業者に依頼して好みに改修できる場合もあります。費用は借り主が負担することが多く、名称としては、「借主負担DIY型賃貸」のほか、「カスタマイズ賃貸」と呼ばれることもあります。

メリットは、退去する際には、借りたときの状態に戻す「原状回復義務」を負わなくてもよいというもの。また、借りる側が修繕を行うため、家賃が安く設定されていることも少なくありません。

背景には、築年数の経った賃貸住宅が増え、長期に入居者が見つかりにくくなっている現状があります。貸す側が壁紙を貼りかえたり、設備を取り換えたりしても新たな入居者が現れるとは限らず、その改修費用を賃料に転嫁できるとは限りません。そこで、借り手が好みの部屋に改修できるようにして、入居者を見つけやすくできるようにしました。

借りる場合には注意が必要です。DIYできるといっても、全部を好みの通りにできる例はあまりないからです。また、どのような工事であれば、原状回復義務が免除されるのか、という問題もあります。工事範囲や退去時のことを契約前に決めておく必要があるでしょう。ですからDIY賃貸を借りることを考えているなら、不動産会社を訪れた際にすぐ「DIY賃貸を考えているのですが、可能な住まいはありますか。また、こういった改修を考えているのですが、できますか」などと伝えるようにしましょう。

国土交通省では、トラブルを防ぐために「DIY型賃貸借に関する契約書式例」や、ガイドブック「DIY型賃貸借のすすめ」を作成しています。DIY賃貸住宅を検討している場合は、事前にこれらに目を通し、提示された契約書などがこういった書式に準じているかをチェックしましょう。

例えば、上記の「DIY型賃貸借に関する契約書式例」には、「増改築等の承諾についてのお願い」(申請書兼承諾書)と「合意書」の2つのほか、工事内容や使用材料をはじめ、原状回復や明け渡し時の清算の有無などを決めておくように示されています。工事内容などを大家さんとの間で合意したら、「合意書」を取り交わしましょう。

高田七穂(たかだ なお):不動産・住生活ライター。住まいの選び方や管理、リフォームなどを専門に執筆。モットーは「住む側や消費者の視点」。書籍に『絶対にだまされない マンションの買い方』(共著)『マンションは消費税増税前に絶対買うべし!?』(いずれもエクスナレッジ)など。「夕刊フジ」にて『住まいの処方銭』連載中