2012年頃から続くワインブームに、新たな動きが見え始めてきた。日本産ワインがその存在感を強めているのだ。
そもそも現在まで続く第7次ワインブームのきっかけはチリ産ワインだった。EPA(経済連携協定)が日本とチリの間に結ばれ、経済面でさまざまな協力が行われた。ワインもそうした経済連携の項目のひとつ。購入しやすい価格でコンビニに並ぶようになり、ワインブームが訪れた。
こうした安価なワインは確かに市場の牽引役として、人気が続いている。だが、ここにきて新たな動きもみられ始めた。日本産ワインの存在感が増しているのだ。
こうした日本産ワインの人気をさらに沸き立てようと、各お酒メーカーが仕掛け始めた。なかでも積極的なのが、キリン傘下のメルシャンだ。
まず、ゴールデンウィークの直後、メディア向けのワインセミナーが開催された。このセミナーで紹介されたのは、フラッグシップブランド、シャトー・メルシャン。しかもすべてが「甲州」というブドウ種から醸造されたワインだ。
甲州は古くから日本にあるブドウ種で、約1,000年前に甲州市勝沼付近で発見された(約1,500年前との説もある)。ワインが日本で作られるようになったのは約140年前なので、長いこと生食用と親しまれたことになる。そして日本でワインが醸造され始めた際、古くからある品種であることから、この甲州が使われた可能性が高いといわれている。
OIV登録で拓けた甲州ワインの輸出
そして2010年、甲州がOIV(国際ブドウ・ワイン機構)に品種登録された。実はこのOIVに品種登録されていないと、甲州という名前でワインを欧州で販売することができない。つまり、OIVへの登録により、ワインの本場への扉が開いたといえる。ちなみに甲州のほか、マスカット・べーリーAという日本の黒ブドウ種が、OIVに品種登録されている。
だが、知名度でいえば、やはり甲州に分があるだろう。山梨の旧名、甲斐の国を表す甲州という名前は、産地をイメージしやすい。しかも、コンビニや飲食店で甲州ブドウを使ったワインが取り扱われることが多く、なじみ深いということもある。さらに世界文化遺産に登録された和食に合うという特色がある。甲州で作られたワインは、著名なワイン評論家、ロバート・パーカーも「日本食に適している」と評価したほどだ。
今回、メルシャンが甲州ワインのみのセミナーを開催したのは、このあたりに理由があるといえる。