国民年金に加入する際、交付される年金手帳。どのような役割があるのでしょうか。また、万が一無くしてしまった場合、どのような手続きが必要なのでしょうか。

  • 年金手帳の役割を解説(画像はイメージ)

年金手帳とは

年金手帳は、過去の年金加入状態を調べたいとき、就職や退職の手続きをするとき、年金受給の手続きを行うときなどに必要となるものです。

茶色・オレンジ色・青色の3種類があり、昭和35年10月~昭和49年10月に国民年金の被保険者資格の取得手続きを行った方は茶色、昭和49年11月~平成8年12月までに取得手続きを行った方はオレンジ色、平成9年1月以降に取得手続きを行った方は青色の手帳を受け取られていると思います。

平成8年12月までは、国民年金・厚生年金・共済組合といった公的年金制度それぞれに手帳が発行されており、その手帳それぞれに年金番号(記号番号)がふられていました。そのため、異なる年金番号がふられた、複数の年金手帳を持っている方もいらっしゃると思います。

一方で平成9年1月以降は、全ての公的年金で共有して使用される「基礎年金番号」が導入されたことから、年金手帳は「一人に一つの番号」である基礎年金番号がふられた青色手帳のみが交付されるようになっています。

※ただし共済組合では、手帳の交付はせず、手帳の交付に代えて組合員番号により管理していた。共済組合の加入期間しかない場合には、手帳ではなく「基礎年金番号通知書」が交付される

大切なのは、年金手帳に記載された「基礎年金番号」

それぞれの公的年金制度ごとに、複数の年金手帳・年金番号が管理されていた時代には、年金を請求する際、制度ごと・番号ごとに照会が必要となり、調査にも時間がかかっていました。

そこで、正確・確実な年金の支払いと、より良いサービスを提供するために導入されたのが基礎年金番号です。10桁の数字で表され、4桁と6桁の組み合わせとなっており、さまざまな手続きで必要となります。

茶色・オレンジ色などの年金手帳を持たれている方で、青色の年金手帳も持っている方は、青色の年金手帳に記載されている番号が基礎年金番号となります。また、基礎年金番号通知書を持っている方は、通知書が年金手帳の代わりとなります。

ちなみに、基礎年金番号を複数お持ちの方は、年金加入記録が複数に分散している可能性があるので注意してください。その場合、厚生年金に加入しているなら会社の社会保険担当者へ、それ以外の方はお近くの年金事務所へ相談しましょう。

年金手帳を無くしたらできなくなること

基礎年金番号が記載された年金手帳(もしくは基礎年金番号通知書)を無くしてしまった場合、各種の届出(退職時、転入・転出時、氏名変更時等)、年金の裁定請求ができなくなります。

さらに、ねんきんネット※も、年金手帳などに記載されている基礎年金番号が必要となるので、他の方法で基礎年金番号が確認できない場合、利用できないケースがあるでしょう。

※自身の年金記録や年金受給見込み額のほか、電子版「ねんきん定期便」をオンライン上で確認できるサービス。ハガキ版の「ねんきん定期便」は、郵送停止登録を行うこともできるので、日本年金機構では費用削減とベーパーレス化の推進のため、電子版「ねんきん定期便」の利用を推奨している

年金手帳を再発行するためには?

年金手帳を紛失またはき損した場合には、再発行が可能です。被保険者が、個人番号または基礎年金番号を記載した「年金手帳再交付申請書」を提出し、申請します。

手続き先は、被保険者の種類により若干異なります。国民年金第1号被保険者(自営業、学生、フリーター、無職等)または任意加入被保険者の場合は住所地の市区町村役場、その他、厚生年金保険被保険者、国民年金第3号被保険者(第2号被保険者の配偶者で20歳以上60歳未満の人)等の場合は年金事務所となるので注意してください。

手続き方法には、電子申請、郵送、窓口持参があり、き損の場合は年金手帳を添付する必要があります。

また、年金手帳の再交付は原則郵送となっています。年金事務所の窓口での即時交付を希望する場合は、緊急性が高く、本人(身分証明書持参に限る)もしくは社会保険労務士、法定代理人、事業主等一部の者に限り行うことができます。

基礎年金番号を忘れたら

各種手続きに必要となる基礎年金番号は、青色の年金手帳、基礎年金番号通知書のほかに、下記の書類で確認することもできます。

・国民年金保険料の口座振替額通知書
・国民年金保険料の納付書、領収書
・年金証書
・各種通知書等(年金額改定通知書、年金振込通知書等)
・ねんきん定期便

これらの書類で確認できない場合は、お近くの年金事務所等でご相談ください。個人情報になりますので、メールや電話では教えてもらえません。直接赴く必要があるので注意しましょう。

著者プロフィール

塚本泰久
ツカモト労務管理事務所 代表社会保険労務士。
関西地区を中心に、地域に密着した事務所を目指しています。会計事務所出身であるという視点から、企業の宝である人財と企業会計のバランスに重点を置くことで、より強い企業の体制作りをサポートしています。「ツカモト労務管理事務所