2018年5月16日(米国時間日時)、Microsoftが低コストのSurfaceを2018年後半に発売する計画があるとBloombergが報じた。概要をまとめると、AppleのiPadに対抗するため、10インチの低価格Surfaceを用意し、400ドル(約4万4,000円)程度の価格になると予測している。もちろんMicrosoftは、この報道についてコメントしていない。

"低価格Surface"というと、かつて存在した「Surface RT」を思い出す方も多いだろう。日本でも2013年3月15日に発売したSurface RTはArmベースのプロセッサを搭載。そのため、Win32アプリケーションが動作せず、商業的に成功したとはいえず、実際にMicrosoftは2013年第4四半期決算で、9億ドルの評価減を計上した。筆者もSurface RTを購入したものの、いまでは倉庫で眠っているはずである。

  • いまとなってはシアンブルーのTouch Coverも懐かしいSurface RT

低価格Surfaceが、既存のSurface Proシリーズと同じブランドで登場するのか不明だ。しかし、これまでのウワサをさかのぼると、開発中断したと言われるSurface Phoneや、モバイル向けプラットフォーム「Project Andromeda」ど、低価格Surfaceに影響したと思える案件は少なくない。特にAndromedaに関連してMicrosoftは、2018年5月に折りたたみ型デバイスの特許を申請している。

  • Microsoftが出願した米国出願US20180059735

  • 折りたたんだデバイスを開くとキーボードが現れる。タブレットとしての使用も想定しているようだ

Project Andromedaでは、軽量なAndromeda OSを実装すると見られているが、同OSを低価格Surfaceにも適用するのではないだろうか。現在Intel Core m3を搭載したSurface Proは、米国のMicrosoft Storeで799ドル(日本の同ストアでは税込み11万4,264円)で販売しているが、メモリー4GB、128GB SSDというハードウェア構成を踏まえると、最新の64ビット版Windows 10が快適に動作するとは言いにくい。

もちろん32ビット版という選択肢がありつつも、価格設定を見れば、さらに低いハードウェアスペックを採用し、Windows 10ではなくAndromeda OSを選択する可能性が見えてくる。

ただ、話はそう単純ではない。前述したSurface RTがうまくいかなかった理由の1つにアプリケーションがある。鳴り物入りで登場したWinRT APIはUWP(ユニバーサルWindowsプラットフォーム)を支える技術要素の1つだが、当時はWinRTベースでアプリケーションを開発する技術者は多くなかった。

現在もUWPアプリケーションのラインナップはWin32アプリケーションと比べて充実したとは言えない。Andromeda OSがどのような技術基盤を採用するか不鮮明だが、MicrosoftがSurface RTと同じ轍を踏むことはないだろう。

また、低価格Surfaceを市場投入する狙いはどこにあるのだろうか。それは文教(ぶんきょう)市場だ。グローバル市場を見るとWindowsの存在感が大きいものの、米国の幼稚園から高等学校卒業までの13年間を指すK-12教育市場は、Chrome OSがトップシェアを誇る。

その波は日本市場へのうねりを見せ始め、国内でもChrome OSを搭載した文教向けPCが登場している。MicrosoftはWindows 10 Sをエディションとして用意したことは記憶に新しいが、次の一手が求められている。

  • レノボが2018年5月に発売する文教向けPC「Lenovo 500e」。Chrome OSを搭載している

日本マイクロソフトはSurfaceシリーズを発売するにあたり、「これまでにない利用シーンを創造する」と発言してきた。実際に2-in-1 PCという1つのジャンルを生み出し、クラムシェル型のノートPCと異なる携帯性で、利用環境を選ばない多様な働き方につながっている。

低価格Surfaceも一定の価値を生み出す存在になると思われるが、その存在が事実なのか否か。Surface Phoneのように開発中止になる可能性はあるのかなど、分からないことも多い。低価格Surfaceに興味を持たれた方は、Microsoftの動向に注視するといいだろう。

阿久津良和(Cactus)