腰の痛みに悩まされた経験を持つ人は多いはずだ。日常生活の中でたまった疲労が原因の腰痛の場合、放置しておいても問題ないケースが大半だろう。だが、年齢を重ねるとともに痛みの度合いが増してきたり、脚のしびれなどを感じたりするようなら注意が必要。もしかすると、脊柱管狭窄症を患っているかもしれないためだ。
先日も、とあるテレビ番組で俳優の布施博さんが脊柱管狭窄症であると診察されていたが、この疾患の原因の一つに「加齢」がある。超高齢社会の日本においては、今後ますますこの病気になる人の増加が予想される。
今回は、整形外科専門医の長谷川充子医師に脊柱管狭窄症の詳細な症状や原因などについてうかがった。
継続して歩けなくなるという恐怖
――今回お伺いするテーマの脊柱管狭窄症ですが、普段の生活ではあまり「脊柱管」という言葉を使わないです。「狭窄」とあるので、この脊柱管が狭くなるということは想像できるのですが……。
あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、脊柱管とは脊椎骨(背骨)の構造で、後方の環状となっている椎弓(ついきゅう)部の骨の孔状の部分の上下に連なる管状の部分のことです。黄色靭帯や後縦靭帯などに内張りされており、その内側には硬膜に包まれた脊髄神経が走っています。
脊柱管狭窄症とはその脊柱管が狭くなることにより、症状をきたしている疾患を指します。脊椎骨は頸椎7個、胸椎12個、腰椎5個の骨が連なっていますが、腰椎で脊柱管狭窄症を発症するケースが多いです。
――なるほど。イメージはつきました。続いて、脊柱管狭窄症の具体的な症状を教えてもらえますでしょうか。
症状としては、「間歇性跛行(かんけつせいはこう)」や下肢(下半身)のしびれ、そしてズキズキとうずくような痛みを呈する疼痛(とうつう)が挙げられます。特に典型的なのが間歇性跛行です。歩いていると足腰がしびれたり、疼痛を覚えたり、重くなったりして歩行が続けられなくなり、休憩をしないと継続して歩けなくなります。痛みやだるさ、または何とも言えない、「動かしにくくなる」というような症状が継続して歩行すると出現します。
――継続して歩き続けられないというのは、かなり不便ですね。
そのような間歇性跛行のなかでも、休憩する際に座ったり前にかがんだりすると症状が軽減することが、腰部脊柱管狭窄症の症状の特徴です。立ち止まるだけで症状が軽減する場合は、動脈硬化の一種である「閉塞性動脈硬化症」の可能性もあります。よく似た症状ですが、こちらは血管の狭窄による症状です。
下肢のしびれや疼痛は、座位や臥位(寝た状態)ではあまり症状を強く感じなくても、立ち上がることで増悪し、長く立っていられないというのが特徴です。これは、脊柱管が姿勢によって一層狭まるためと考えられます。腰を伸ばすと狭まり、前にかがんで広がることで症状が軽減する事例が多いです。しびれや疼痛が現れる部位は、片側の下肢だけだったり、両下肢だったりします。