WOWOWで放送中の『「連続ドラマW60 誤判対策室」』。死刑囚の冤罪の可能性を調べる「誤判対策室」を舞台に、定年間近の刑事・有馬英治(舘ひろし)と若き弁護士・世良章一(古川雄輝)、そして検察官・春名美鈴(星野真里)が、ある殺人事件の真相に迫っていく本格ミステリーだ。主演の舘ひろしと、世良役の古川雄輝に話を聞いた。
――この作品で舘さんは定年間近の刑事・有馬を演じていますが、酔いつぶれてみっともない格好をしたり、階段をしんどそうに上り下りしたりするなど、演技とはいえ「老い」を表現することに抵抗はなかったのでしょうか。
舘 まったくないですね。ホントにしんどかったので(笑)。そもそも熊切(和嘉)監督からは最初に「ヨレた刑事を演じてほしい」というリクエストがあったんですよ。でも、それが自分としては心地良いというか楽しかったです。二日酔いのベロンベロンで出勤して、シャツをはだけて、寝癖は立てろ、みたいな。
――古川さんは舘さんの演技を間近で見ていかがでしたか。
古川 熊切監督の現場はリハーサルを丁寧に行う現場だったんですが、舘さんと何度もやりとりを重ねることができたのはとても有意義でした。わりとすぐ本番に行く作品もありますけど、そのシーンに対して考える時間が多くなる分、舘さんのお芝居を受けて自分がどうすればいいのか細かく考えることができました。
――舘さんも同じ考えですか?
舘 僕はもう自分のことで必死でしたよ(笑)。自分はもともとそんなに芝居が上手い方ではないので、現場では熊切監督をはじめ、みなさんにたくさんご迷惑をかけたと思います。でも、古川くんのように新しいお芝居をする役者さんと一緒にいると心が洗われるというか。何度もリハーサルを重ねていくうちに、本当に有馬と世良になっていくのが楽しかったですね。
――古川さんはどうでしょう。
古川 舘さんからは芝居以外の部分でも学ばせていただくことが多かったです。ある日、カメラワークがうまくいかず、何度も撮り直しをすることがあって。だんだん僕も「マズいんじゃないかな…」って思い始めていたら、舘さんがニコッと笑って「よし、じゃあ練習しようか」っておっしゃったんです。そのひと言で現場がいい空気になって再び一体感が生まれたのを見て、舘さんのような役者になりたいなって思いました。
舘 そうじゃないんですよ。僕なんか昔はもう3行以上セリフを覚える気がなくて、ひどいもんだったんですよ(笑)。『あぶない刑事』の時も、村川(透)監督の長回しのシーンの最後のセリフで間違えて、最初からやり直したこともあったし。そういうこともあって、今でも人の失敗に対して言える立場じゃないんですよ。
――時間と経験を積み重ねるにつれ、寛容になったということですか。
舘 僕がたった一つ信じていることが、「現場の空気は必ず画(映像)に出る」ということなんです。現場がギスギスしたり変な空気になったりすると、それは確実に画に出てしまう。その逆に、現場が明るく力強いと、自然とそういう画になってくる。だから、僕はなるべく現場は明るくしたいと思っていつも臨んでいるんです。それが役者としての僕の仕事でもあると思うし。でも、そう思っちゃうから芝居のほうまで頭が回らなくなっちゃうのかもしれないけど(笑)。
――ところで、結末も含め、この作品で描かれているテーマはかなり重く、見る人に深く考えさせる内容だと思うのですが。
舘 難しいよね。有馬の場合、過去に自分が犯した罪について償いたい気持ちがあって、最後は自分なりにそれを果たしたのかもしれないけど、本当にそうなのか…という疑問も残る結末になっているし。ただ、もちろんテーマも大事だけど、僕はこの作品の物語としての面白さに魅力を感じるので、見る人もそこを楽しんで欲しいとは思います。
――古川さんはいかがですか。
古川 確かに、裁判員制度も含め、人が人を裁くことの難しさはあります。そういった問題にも自分なりに関心を持っているつもりですが、なかなか答えは出ませんよね。
舘 すごいね…僕が君くらいの年齢の時は、女のことしか考えてなかったよ(笑)。
――では最後に、お互いにそれぞれ言いたいこと、聞きたいことがあればぜひ。
舘 古川くんに対しては、特に言いたいこととかそういうものはなく、今の形でいいと思う。すごくシャープだし、新しいタイプのお芝居をする役者さんだと思うから、そのまま突き進んでいって欲しいね。
古川 僕は舘さんの世代になった時、どうしたらいいのかお聞きしたいです。
舘 いつも女のことを考える(笑)。俳優って結局、そういうことだと思うんだよね。
古川 その部分は多分クリアできると思います(笑)。
出演はほかに村上淳、赤堀雅秋、ハマカワフミエ、酒井若菜、竹原ピストル、若松武史、小林勝也、康すおん。『連続ドラマW60 誤判対策室』はWOWOWプライムにて(毎週日曜 22:00~放送中)。全5話。