SUBARU(スバル)の吉永泰之社長は2017年度決算の会見に登壇し、同社初のプラグインハイブリッド車(PHV)として今年中に発売するクルマは「クロストレック」(日本名:XV)がベースになると明かした。主力の米国市場で強まる環境規制に対応した形だが、スバルの電動化戦略は今後、どのように進んでいくのだろうか。

  • スバルの吉永社長

    スバルの吉永社長

水平対向エンジンとトヨタのハイブリッドを搭載

スバル車の7割近くは米国で売れているのが現状だが、その米国市場では今年、自動車メーカーに電動車両の販売を促す「ZEV規制」(詳しくはこちら)が厳しくなる。この規制強化に対応するため、スバルはPHVを米国市場に投入する。

PHVは既存のクルマのようなエンジンと、電気自動車(EV)のようなバッテリー+モーターの駆動システムを積むクルマだ。「クロストレック」をベースとするスバルの新型PHVは、提携関係にあるトヨタ自動車の「THS」(トヨタハイブリッドシステム)を採用する。エンジンはスバルの特徴にもなっている水平対向エンジンを搭載。このクルマを日本など米国以外に展開する計画は現時点でないようだ。

  • スバル「XV」

    これが「XV」だ

電動化=無個性化では生き残れない

普通のクルマがPHVになると、一般的には重量が重くなったり価格が高くなったりする。クロストレックがPHVになると、クルマとしてどんな部分が良くなるのかについては、現時点では語られなかったので不明だ。この動きは見方によって、規制が厳しくなるからスバルが仕方なくPHVを発売するようにも捉えられるのだが、そのあたりについて、吉永社長はどう考えるのだろうか。

「『規制に合致していればいい』というスタンスではダメ」。会見後の囲み取材で吉永社長は答えた。「環境規制(に合わせてクルマを作る)という捉え方より、環境に優しい商品を作る会社になっていかなければならない」(以下、発言は吉永社長)というのが本筋というわけだ。

ただ、スバルにはジレンマもあるようだ。2021年にはEVを発売するとしている同社だが、「開発は進めているが、今はバッテリーを筆頭に非常にコストが高いので、事業性が厳しい。特に、スバルのように車種が少ない会社は、『このクルマは赤字でもいいや』とはいかない。中規模以下の自動車会社にとっては、(EVの)開発はマストだが、どのタイミングで、どこで出すかは相当、考えなければならない」というのがスバルの現状だという。

  • スバル「XV」

    スバルのEVはどんなクルマになるのだろうか(画像は「XV」)

それでもEVは作らなければならないスバル。電動化で何を大切にするかといえば、「数の少ないスバルとしては、個性を大事にする。プラットフォームを中心とした安全性能の高さなどは、動力源が変わっても変わらないので、普遍的な価値はきちんと上げていきたい」というのが吉永社長の考えだ。「『水平対向じゃなくなったらスバルの魅力はなくなった』という風にならないようにしないと。そういう(個性を大事にする)方向に向かわないと、中規模以下のメーカーは生き残れない」。生き残りをかけた戦いに向け覚悟のほどを語った吉永社長だが、スバル×EVでどんなクルマが登場するのかが楽しみになるような言葉でもあった。