ANAは5月11日、退役したボーイング737-500型機を整備士養成のための訓練専用機材として活用する取り組みを実施すると発表した。退役した大型ジェット旅客機を1機丸ごと整備訓練専用の機材として使用することは、日本の航空会社としては初めての試みとなる。訓練に使用する機材としての必要な準備を行った後、7月より整備訓練に投入予定となっている。
ANAではこれまで、技術系の新入社員に対し、航空機のシステム・整備方法を学ぶ講義や、航空機の一部を模したモックアップ(模型)を用いて整備作業の基礎を学ぶ訓練を行った後に、格納庫内での集合訓練にて、実機に対する整備の実技経験を積む訓練を行ってきた。このような訓練体系では、実機での様々な整備業務に触れ、実技経験を習得するまでにかなりの時間を要していた。
今後の航空運送事業の拡大に伴い、保有航空機も増加していく中で、早い時期から技術系の新入社員に対して訓練専用機を使用した実技経験を積む機会を多数確保し、運航機材の生産や稼働に影響を及ぼさない効率的なタイミングで多くの経験を積むことにより、航空機の整備品質のさらなる向上を目指し、航空運送事業の基盤である安全性をさらに高めていく。
退役機を1機丸ごと整備訓練専用の機材とすることで、従来の訓練体系では実施が困難であった実機に対する様々な整備作業の経験が可能になり、実機では経験することのできない「失敗」を早い時期から経験させることができる。また、訓練生の空き時間などに訓練専用機を使用した知識の現物確認が可能であるほか、モックアップに代わり訓練専用機を用いることでより多くの新入社員が同時に実技訓練を実施でき、効率的な訓練が可能となる。