2018年3月末、タレントや歌手として活躍する今井翼さんに「メニエール病の症状の再燃」がみられたことを、今井さんが所属するジャニーズ事務所が公表した。当面の間は活動を控えて治療に専念するということで、一日も早い復帰を心待ちにしているファンが多いはずだ。

  • メニエール病ではめまいや耳鳴りなどの症状が出現する

    メニエール病ではめまいや耳鳴りなどの症状が出現する

ところで、このメニエール病という病気をあまり聞き慣れない人もいるのではないだろうか。実は今井さん以外にも、歌手の久保田利伸さんやタレントのハイヒール・モモコさんら、メニエール病に苦しんだ経験を持つ芸能人は少なくない。

今井さん自身は「度重なるめまい」を訴えていたようだが、他にどのような症状を呈し、そもそもどういった原因で発病するものなのだろうか。耳鼻咽喉科専門医の三塚沙希医師にお話をうかがった。

――お恥ずかしい話ですが、メニエール病という病名を今回、初めて聞きました。具体的にはどのような症状が出現するのでしょうか。

この病気の名称は、メニエール医師が発見したことに由来します。メニエール病を診断する基準としては、「回転性のめまい発作が反復している」「耳鳴り・難聴などの蝸牛(かぎゅう)症状が反復し、消失する」「これらを認め、他の病気(中枢神経系の病気など)が除外できる」などです。

――連続的にめまい発作が訪れるというのは怖いですね。めまいには予兆みたいなものがあるのでしょうか。

めまいは突発的に現れ、しかも嘔気や嘔吐、顔面蒼白などの自律神経症状を伴います。このような症状は1~2時間で軽減・消失します。これらの症状と同時、もしくはやや早期に耳鳴りや難聴、耳閉感も出現します。耳鳴りの音質はさまざまと言われていて、「低音」「高音」「混合」などを認めます。

発作に伴い聴力低下は進行し、症状の改善とともに聴力もしだいによくなり正常まで戻ります。何度も発作を起こすと、聴力が低下した状態で固定したままになることもあります。

――めまいと嘔吐、耳鳴りなどが一度にやってくるとは……。仮に車の運転中に出現したら事故につながりかねないですし、仕事をしようにも著しく支障が出るのは必至ですね。発病する原因や発症しやすい人の特徴を教えてください。

メニエール病は、「内耳の内リンパ液の過剰産生または吸収障害」によって発症すると言われています。また、めまいなどの発作のトリガーには、過度の精神的・肉体的な負荷があると言われています。発症しやすさという点に関しては、一般的に30~50歳代に多いとされており、男性よりもやや女性に多いです。神経質や几帳面な人がなりやすいとも言われています。

――職場や自宅でメニエール病の症状が出現したときは、どのように対処したらいいのでしょうか。

メニエール病と思しき症状が出たら、静かな場所で頭を動かさずに目を閉じ、心身ともに安静にしましょう。医学的には、内科的に治療されることが多いです。急性期には嘔吐を認めて内服が困難なケースが多いため、注射をしたり吐き気止めやめまいを抑える点滴を投与したりします。さらに、めまい症状がひどいケースでは入院となる可能性もありますし、症状が重症化する場合は外科的手術で治療することもあります。

――メニエール病の検査や治療法を教えてください。

まず検査は「グリセロールテスト」と呼ばれる聴力検査を用います。グリセロールを内服または注射すれば、聴力が一過性に改善することがあります。このグリセロールで改善を認めれば、メニエール病と判断できます。また、「平衡機能検査」と呼ばれる検査もあります。発作期には障害のある「患側(かんそく)」へ眼振(眼球がけいれんしたように動いたり揺れたりすること)が出現し、症状が改善してくると障害のない「健側(けんそく)」へ向かうことが確認できれば、メニエール病を疑います。

治療ですが、メニエール病は基本的に完全治癒が難しいです。反復して症状が出現するため、めまい発作の反復を抑制し、難聴の固定や進行の防止が治療目標となります。

※写真と本文は関係ありません

取材協力: 三塚沙希(ミツカ・サキ)

日本大学医学部卒業。慶応義塾大学耳鼻咽喉科教室入局の後、東京都済生会中央病院・国立成育医療研究センター・山王病院に出向。2017年3月、白金台にエムズクリニック白金を開院。
En女医会所属。

En女医会とは
150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加している会。さまざまな形でボランティア活動を行うことによって、女性の意識の向上と社会貢献の実現を目指している。会員が持つ医療知識や経験を活かして商品開発を行い、利益の一部を社会貢献に使用。また、健康や美容についてより良い情報を発信し、医療分野での啓発活動を積極的に行う。En女医会HPはこちら。