働くママやパパにとって、赤ちゃんができたら押さえておきたいのが育児休暇のことです。育児休暇中は会社から給料が支払われないことも多いため、ママとパパのどちらが、どのくらいの期間、休暇を取得するか悩む家庭も多いでしょう。
そこでこの記事では、育児休業給付金や、社会保険料の免除、税金の軽減方法など、育児休暇中にもらえるお金やお得な制度の利用方法をまとめてご紹介します。
「育児休暇」と「育児休業」の違いって?
育児休暇と育児休業を区別せずに使っている方も多いと思いますが、実はこの2つには、法律で定められているかいないか、という違いがあります。
育児休業
育児休業とは、育児・介護休業法によって定められた休業制度のことです。法律で定められているので、1歳未満の子どもを育てているなど、条件を満たすことで取得でき、働く人が持つ権利の一つともいえます。条件を満たせば、正社員だけでなく、雇用期間が定められている方も取得することができます。
育児休暇
一方、育児休暇とは、育児のために休暇を取得すれば、それだけで育児休暇といえるため、とても広い意味で使われている言葉です。
例えば、有給休暇を使用して、数日~1週間ほどの休暇を取得するのも育児休暇といえます。中には規定によって、子どもが3歳になるまで休暇が取得できる会社もあります。
育児休暇を取得したいと思ったら、まずは会社の規定をよく読んで、利用できる休暇の種類や利用条件、給料の有無などを確認しましょう。
育休中の味方! 「育児休業給付金」の支給金額と手続き方法
長期間になる育児休業や育児休暇中には、給料が支払われないのが一般的です。しかし、育児休暇と違って、育児休業を取得する場合には、雇用保険から「育児休業給付金」が支給されます。
育児休業給付金とは、仕事を続けるママやパパが育児に専念する間の生活をサポートするために支給される給付金です。条件を満たせば、契約社員やパートの方でも受け取ることができます。
育児休業給付金の基本条件
・子どもが1歳(延長事由に該当すれば最長2歳)の誕生日を迎えるまで
・育児休業前2年間で、雇用保険の被保険者期間(11日以上働いた月)が12カ月以上あること
気になる育児休業給付金の金額は「育休前の賃金月額×67%(育休開始から6カ月経過後は50%)」となっています。例えば、育休開始前の平均賃金月額が28万円の場合、育休開始から6カ月間は月額18万7,600円(28万円×67%)、育休開始から6カ月後以降は月額14万円(28万円×50%)を受け取ることができます。
育児休業給付金は、勤務先を経由して2カ月ごとにハローワークへ申請することで、受け取ることができます。手続き自体は、勤務先の担当者が主体となって進めてくれることが多いので、育児休業に入る前に、会社の担当者によく相談しておきましょう。
国もパパの育児休業取得を後押し!
平成21年には、ママが専業主婦の場合でも、パパが育児休業を取得できるようになるなど、パパが育児休業を取りやすいように、育児介護休業法の内容がいくつか改正されました。
中でも注目したいのが「パパ・ママ育休プラス制度」です。育児休業は、原則子どもが1歳になる前までしか取得できませんが、ママとパパの両方が育児休業を順番(時期がかぶっていても大丈夫)に取得する場合には、最長で1歳2カ月になる前日まで育児休業を取得できるようになったのです。
この制度ができることで、育児休業給付金を受け取ることができる期間も延びるので、できるだけ長い期間、夫婦で子育てしたい家庭にとっては、大変うれしい制度です。
育休中に利用するとお得な制度
育児休業・育児休暇中は、お得な制度を利用することで、社会保険料や税金などの負担を減らすことができます。
給料がもらえない育休中は、経済的に苦しくなりがちです。しかし、下記図の通り、お得な制度をしっかりと利用することで、育休前と育休中で、実際に手元に残る金額の差を少なくすることができます。
中には利用に申請が必要なものもありますので、ここでしっかり確認して、もれなく活用できるようにしましょう。
社会保険料の免除
育児休業中は、社会保険料(厚生年金保険料と健康保険料)が免除されます。事業主経由で「育児休業等取得者申出書」を年金機構へ提出する必要があるので、休みに入る前に勤務先の担当者に相談しましょう。
所得税と雇用保険料の免除
育休中に受け取る給料が0円であれば、所得税や雇用保険料も自動的に0円になります。育児休業給付金や出産育児一時金などの給付金は、非課税なので安心してください。
住民税の減免措置
所得税と違って、住民税は昨年1年間の給料に応じて課税されているため、育休期間中でも支払う必要があるので注意しましょう。育休前の最後の給料や賞与から一括で引かれる場合や、6月頃に自宅に届く住民税支払い通知書に従って自分で支払う場合があります。
また、自治体によっては前年に比べて収入が大きく減った方に対して、住民税の減免措置を行っているところがあります。申請すれば住民税が減額または免除される可能性がありますので、お住まいの市区町村の減免制度について、一度確認してみると良いでしょう。
配偶者控除
育休中は、自分の収入が減ったことを正しく申告することで、配偶者の所得税や住民税が安くなることがあります。なぜなら、1月1日から12月31日までの年収が103万円以下の場合は「配偶者控除」が、年収201万円以下の場合には、「配偶者特別控除」が利用できるからです。
この控除を受けるためには、配偶者の勤め先で行われる年末調整時に扶養控除に関する申告書を提出するか、確定申告時に自分で申告をする必要があります。このとき正しく申告するためにも、給与明細などの給料が分かる書類はしっかりと保管しておきましょう。
スムーズな職場復帰への近道は?
育児休暇を取得する前は、職場復帰できるのだろうかと、不安に思う方も多いでしょう。しかし、育児休暇の取得には、不安に対する対応策を準備する時間ができるという大きなメリットがあります。
子どもが病気のときや、雨の日の送迎、仕事が時間内で終わらなかったときにどうするのかなど、夫婦だけでなく祖父母なども巻き込んでよく話し合っておくと良いでしょう。限られた時間内で職場の方に役立てるよう、休暇中に資格取得やスキルアップを行うのも一つの手ですね。
できないかもしれないことに不安を募らせるよりも、休暇中でも何ができるかを考えて行動することで、スムーズな職場復帰が実現できると思います。
※写真と本文は関係ありません
※表は筆者が作成
張替愛(はりかえ・あい)
FP事務所マネセラ代表
大学で心理学を学んだのち、損害保険会社に5年半勤務。その後、夫の海外赴任を機に独立を決意。2児の育児をしながらファイナンシャルプランナーの活動を始める。海外赴任や全国転勤、働き方に悩む女性など、変化の多い家庭の家計相談を得意とする。オンラインでのマネー講座や個別相談を中心に活動し、執筆なども行う。ホームページ「転勤族と女性のための家計相談所」を運営。AFP/2級FP技能士/マイライフエフピー認定ライター