KDDIは5月10日、2018年3月期決算会見を開催しました。4月1日付けで代表取締役社長に就任した高橋誠氏による初めての決算会見とあり、その冒頭は今後の事業戦略の説明に充てられました。質疑応答では、ZTEが米国の制裁を受けたことの影響、楽天が通信事業に参入する件について、海賊版サイトのブロッキングに対する見解などについて記者団から質問があがり、高橋新社長が見解を述べています。

  • 2018年3月期決算会見に臨む、KDDI 代表取締役社長の高橋誠氏

19年度は営業利益1兆円へ

通期の営業利益は、前年同期比5.5%増(498億円増)の9,628億円。新料金プラン「auピタットプラン」「auフラットプラン」の契約者数は4月8日時点で700万契約超となり、解約率も0.96%と前年同期に比べて改善しています。3年間の中期目標の最終年にあたる19年度には、営業利益にして1兆円の大台に乗せる計画です。

  • 2018年3月期のハイライト

  • 来期目標

アメリカがZTEに制裁措置、その影響は?

アメリカの制裁措置にともない、ZTEが事実上の営業停止にまで追い込まれています。このことがKDDIにおよぼす影響についてたずねられると「影響のある端末はPHOTO-U(フォトユー) TV、mamorino Watch(マモリーノ ウォッチ)、法人向けのSpeed USB STICK U03など。スマートフォンに大きな影響をおよぼすものではなく、ホッとはしている。基本的には、在庫を確認しながら販売を継続できるのではないか。サポートの部分は、ZTEからの情報も聞きながら対応していきたい」と回答しました。

楽天参入には「正直に言って……」

楽天が通信事業に参入することについて聞かれると「必ず質問が出ると想定していた。どう答えようか、考えていた」と苦笑い。そして、いくつかの観点から所感を述べました。

まずは「これまで3者間だった競争が4者間になる。競争者が増えることは、正直に言うと、あまり良い気はしないですけれど、出てくる以上は仕方がない。ただ、僕はもともと競争論者。この業界においては、いまも昔もこれからも、競争がより良いサービスをつくる、そんな信念でやっている。私自身も、チャレンジャーとして業界に入った。お客さんに良いサービスを届けるという意味では、楽天さんの参入は良いこと」としました。

続けて「ただ、楽天さんに割り当てられたのは1.7GHz帯の20MHz幅(×2)の周波数。参入時点でそれしかない。下りの通信速度について、かなり制限があることは容易に想像できる。また、我々はこれまで設備投資を積み重ねてきた。その経験から、楽天さんの公表している6,000億円という投資金額では足りないのではないかと思っている。競争者として入ってこられる以上、インフラはしっかりと整えるのが責務。そこについては、皆さんにしっかり見ておいてもらいたい」と指摘した。

ただ最後には、柔らかい調子に戻り「KDDIでは今後、通信とライフデザインの融合をはかっていく。この方針には、社内でもいろいろと議論があった。そこに、eコマースで業績を伸ばしている楽天さんがやってくる。私としては、通信を核としてeコマースにも積極的に取り組んでいく必要性を説明しやすくなった」と笑みを見せました。

  • KDDIでは今後、通信とライフデザインの融合をはかっていく方針

  • ライフデザイン事業としてWowma!をはじめとしてさまざまなサービスを手がけています

ブロッキングの是非は?

漫画や雑誌などのコンテンツを違法にアップロードして閲覧できるようにした「海賊版サイト」の問題について聞かれると「我々は、ずっとデジタルコンテンツを取り扱ってきた。価値あるコンテンツが、対価を受け取ることは絶対に必要。違法な配信は止めなければいけない。ただ今回、指摘された3つのサイトはすでに閲覧できなくなっている。この件が明らかになってから、さまざまな議論も起こった。通信事業者としては守ることもある。慎重に対応していきたいと思っている」と答えるにとどまりました。

NTTグループが是とした、接続を遮断するブロッキング行為については「通信の秘密」の観点から、業界内でも見解が割れています。