小学生のとき、音楽の時間で使った楽器といえば、リコーダーと鍵盤ハーモニカという人も多いのではないでしょうか。鍵盤ハーモニカと聞くと、筆者は鍵盤にホースを接続して息を吹き込みつつ、「コンドルは飛んでいく」や「茶色の小びん」をクラスで合奏した思い出がよみがえります。そんな懐かしい鍵盤ハーモニカが、大人向けになって帰ってきました。
ヤマハが今回発表したのは鍵盤ハーモニカの新製品、"大人のピアニカ"シリーズの「P-37EBK」(ブラック)、「P-37EBR」(ブラウン)です。発売日は6月6日で、価格は1万3,000円(税別)です。
デザインはシックに。吸い付くような押し心地
大人のピアニカの鍵盤数は37鍵盤。学校の授業で使用されている32鍵盤よりも多い3オクターブの広音域が特徴です。子供向けのかわいらしいカラーリングの鍵盤ハーモニカと比べると、大人のピアニカは、マットなブラウンやブラックで、落ち着いたデザインです。本体重量は830g、サイズは幅483×高さ50×奥行き104mmです。本体の裏側にバンドを搭載しており、コンパクトで持ちやすいです。意外なことに、片手で持ってもさほど重さを感じませんでした。
筆者は子供向けの鍵盤ハーモニカしか触ったことがありませんが、軽くてつるつると滑りやすい子供向けの鍵盤と比較すると、大人のピアニカは鍵盤の材質がしっとりと吸い付くような手触りで、クリック感があります。指の押す角度や強さなど、弾き方のニュアンスを変えられそうだなと感じました。
まろやかな音色が響く、プロの演奏デモ
発表会では、鍵盤ハーモニカ奏者の妹尾美穂さんが登場し、大人のピアニカを演奏しました。
ジャズの名曲「二人でお茶を」(Tea For Two)の演奏です ※音が出ます |
実際に演奏を聞くと、息の吹き込み方による音色や強弱のコントロールの幅が広いことに驚きます。また、早いパッセージでも音の抜けがなく、レスポンスが良いです。和音もきれいに鳴り、音域が広いのでいろいろな曲が演奏できそうです。アコーディオンのような、まろやかであたたかみのある音色が落ち着きます。
演奏後、妹尾さんは、実際に弾いた感想を次のように語りました。
「ピアノは弾いた後、音が次第に減衰していきますが、ピアニカの場合は自分の呼吸が続く限り延ばしたいだけ伸ばせます。息のコントロールによってメロディを思い通りにうたい、表現でき、自分で音に命を吹き込むようなピアニカの魅力に魅了されています。
ヤマハのピアニカは気密性が高いので息漏れがしにくいのがいいですね。少ない息で豊かに奏でられるので、表現に幅が出ます。両手で弾く時は和音とメロディを一緒に奏でますが、それぞれ粒立ちがよく音がよく聞き分けられる点も気に入っています」
音の出口の大きさを調整、音域の最適化も
鍵盤ハーモニカは、吹き口から息を吹き込みながら鍵盤を押し、内部のリードを震わせることで音を鳴らす仕組みです。そのため、表現力のポイントになるのが、息のコントロールです。
大人のピアニカは、下ボディの素材にバイオマス由来樹脂「エコディア」を採用し、内部底面には吸音材を追加しています。このほか、余分な高次倍音を抑制しつつ各音域の音のバランスを最適するために、新開発のバルブパッキンを採用。開口部のサイズを低音域、中音域、広音域で変え、各音域のバランスを最適化し、息でのコントロールをしやすくしています。
大人のピアニカは本格的な楽器として魅力的!
今回発表した大人のピアニカは、フル3オクターブの鍵盤ハーモニカとしては30年ぶりの新製品。これまで、子どもが学校で使う楽器というイメージが強かった鍵盤ハーモニカですが、大人のピアニカは表現力豊かで、改めて鍵盤ハーモニカが本格的な楽器だということに気づかされます。子供のころに使ったことがあるので、別の楽器を新たに始めるよりも、ハードルが低いのも魅力です。大人のピアニカで、久しぶりに鍵盤ハーモニカでの演奏を楽しんでみてはいかがでしょうか。