クールビズのシーズンを迎え、既にスーツの衣替えを済ませたという人は多いだろう。しかし、あなたの秋冬物の保管方法、もしかしたら間違ってるかも!?

大切なスーツを長く愛用していくために必要な衣替えや日々のケアの仕方について、洋服の青山などを展開する青山商事 第一商品部 品質管理グループの今村現マネージャーに伺った。

  • スーツの正しい衣替え方法は?(画像はイメージ)

そもそも、スーツの衣替えは必要?

――季節によって、さまざまなタイプのスーツがあると思うのですが、そもそもスーツの衣替えは必要なのでしょうか?

スーツは大きく「春夏物」「秋冬物」の2つに分けることができます。20~30年前と比べると、オフィスの空調設備は整っていますし、クールビズも進んでいることから、この2タイプの差は小さくなりつつありますが、やはりビジネスマンとしては季節に合わせた衣替えが必要です。

  • スーツがバッチリきまっている、青山商事の今村氏

――「春夏物」と「秋冬物」、具体的に何が違うのですか?

まずは生地や糸の厚み、織りの密度が違います。基本的に春夏物は薄く、秋冬物は分厚くできています。

それから裏地も違います。素材もそうですが、春夏物はジャケットの裏地の面積が少なく、秋冬物は広いという特徴があります。

  • 左が春夏物、右は秋冬物。春夏物は半裏地、背抜き仕様のものが多く、通気性が良く涼しい

ジャケットだけでなく、パンツの裏地の素材にも違いがあるんですよ。例えばウエスト部分・ポケット袋地部分、春夏物には吸汗・速乾性のある素材を使っていたり、秋冬物には肉厚でしっかりとした綿ポリエステルを使っていたりします。

  • 左が春夏物、右は秋冬物。パンツの裏地の素材も季節に応じて工夫されている

  • 膝裏の素材も春夏物(左)は薄く、秋冬物(右)は厚くなっている

カビの原因を作る、スーツのNG保管方法

――わが家では秋冬物をクリーニングに出した後、そのままクローゼットにしまっているのですが、この保管方法ではダメなんでしょうか?

はい、あまりスーツにとっては良くないですね。そのままでは、スーツにカビが生える原因を作ってしまいます。

――え、カビですか!?

クリーニング屋さんではスーツを洗浄した後、蒸気を使ってプレスをしています。その湿気が、スーツを覆っているビニールの中でこもってしまい、カビが発生する恐れがあるんです。

――それは恐ろしいです。

ビニールをかぶせたままにしておくと、クローゼットの中にたまった湿気もどんどんこもってしまいます。スーツに一度でもついてしまったカビはガンと同じ。表面を取り除いてごまかしても、素材の奥にまで入り込んでしまったら、においは取れません。虫も湿気を好むので、虫食いの危険もあります。

  • ビニールをかけたまま保管すると、カビが発生しやすくなるので要注意!(画像はイメージ)

それから、クリーニング屋さんからスーツが返却されるときに付いてくるハンガーを使い続けることも、あまりオススメできません。

お店によると思うのですが、針金でできていたり、肩の部分が細めになっていたり、肩先がまっすぐになっていたりするものが多いですよね。そのままかけておくと、スーツが型崩れしてしまう可能性がありますし、湿気もこもりやすいんです。

長持ちする! 正しいスーツの保管方法は?

――それでは、どのように保管したらいいのでしょうか?

クリーニングから戻ってきたら、まずはスーツを覆っているビニールを外しましょう。そしてすぐにクローゼットにしまうのではなく、風通しの良いところにかけておき、1~2日、自然乾燥させます。

さらにドライヤーの冷風を2~3分、スーツの表面や中に向かってかけてあげるとなお良いです。クローゼットの中に除湿剤を置いておけば、保管中も安心です。

――ハンガーはどういったものに替えたらいいですか?

ジャケットについては、肩先に厚みがあって、肩に沿って曲がった形をしているスーツ用のハンガーがオススメです。スーツの中に空間を作ってくれるので、型崩れだけでなく、湿気がこもるのも防いでくれます。

パンツもできれば、折りたたむのではなく、まっすぐに吊るしておけるタイプのハンガーを使うと良いですね。

  • スーツ専用のハンガーで型崩れを防ごう

効果的な虫食い対策は?

――虫食い対策としては、どのような方法が有効でしょうか?

防虫成分が含まれているカバーでスーツ全体を覆ってしまうのが、最も効果的だと思います。光を遮断するタイプであれば虫食いだけでなく、日焼けも防止してくれます。湿気がこもらないようなつくりになっていたり、ホコリよけになったりと、さまざまに工夫されている商品があるので、探してみてください。

  • 虫食い対策には防虫カバーが有効とのこと

  • スーツ全体を覆うことで虫から守ってくれる

やっぱり大事、日々のケア

――衣替えのタイミングでスーツをクリーニングに出す方は多いと思うのですが、本当はもっと頻繁にクリーニングに出した方がいいんでしょうか?

ドライクリーニングに出すことによって、スーツを清潔に保てるというメリットはありますが、生地がいたむというデメリットもあります。色がぼやけてきたり、ツヤ感がなくなってきたり、表面の肌触りが硬くなってしまったりするので、過剰に出すのはオススメしません。1年に1回で十分だと思いますよ。

――1年に1回だと、汚れやにおいが気になるのですが……

日々のメンテナンスをしっかりすれば、十分キレイに保てます。

――具体的には何をすればいいんですか?

スーツにとっては湿気が大敵なので、雨が降ると分かっている日には、衣類用の防水スプレーをかけてから出掛けましょう。濡れてしまった場合には、帰宅後すぐにクローゼットにしまわず、乾燥させます。濡れ方によっては、タオルでたたいて水気を取ることも大事です。

――やっぱり湿気対策が大事なんですね

それからブラッシングも大切です。衣類用のブラシで表面を大きくブラッシングしてあげると、表面の毛並みがそろい、時間がたっても新品のような状態に保つことができます。特に生地のしなやかさ、肌触りはブラシをかけているのといないのとで、数年後に大きな差が出ます。

またブラッシングすることで、花粉や皮脂汚れ、フケも落としてくれます。生地の通気性が良くなってにおいも抜けやすくなるのでオススメです。

――スチームアイロンの使用はどうですか?

シワが取れるだけでなく、においも取れるので良いと思います。ただし蒸気をあてた後は、すぐにクローゼットにしまわないようにしましょう。

夏のビジネスグッズ、用途に合わせて機能性を見極めよう

――最後に、衣替えに合わせて見直したいビジネスグッズがあれば教えてください!

スーツだけでなく、ワイシャツや肌着も清涼機能のあるものを選べば、より過ごしやすくなると思います。

また特に春夏シーズンはパンツがいたみやすいので、1つのジャケットに対し、2つのパンツが付いているタイプのものを購入すると長く着られます。

春夏物、秋冬物、双方に言えることですが、スーツは1つのシーズンで最低3~4着を着回すようにすると、スーツへのダメージが軽減されて、最終的には長持ちしますよ。

――季節に合わせて、適切なビジネスウェア選びを心がけたいですね

"春夏物"という大きなくくりの中でも、通気性が良いもの、軽いもの、清涼機能のついたもの、ストレッチ性のあるもの、シワになりにくいものなど、スーツによってさまざまな特徴がありますし、その機能性は日々進化しています。

店頭を訪れた際には、「今着ているスーツよりももっと涼しいものはないか」「もっと軽いものはないか」など、具体的な要望をスタッフに伝えて、春夏シーズンを快適に過ごせる一着を探してみてくださいね。